十一回目。訓練場。
こんばんわ。
割と見てくれている人が多くて嬉しいです
駄文ですがよろしくお願いします
十一回目
「っらあ!甘いんだよメル!」
「はぁ…今の普通弾いたりするの?」
「さぁな?とりあえず俺は弾けたぞ?」
メルの放った雷魔法による一撃をカドラで弾いたソーマ。
先手を譲って初撃でこんなことをされたら普通は戦意を喪失すると思うのだが…
「じゃあ何でも良いから適当に俺に一撃を入れてくれよ。ちゃんとダメージとしての一撃じゃないとダメだからな?出来たら何でも一つだけお願いを聞いてやる」
「…その言葉に嘘偽りはないかしら?後悔するわよ?」
「やれるものならやってみろ!」
再び戦闘の構えを取る二人。
メルは短剣を、俺は武器を持つと訓練用の物ですら危ないという事で素手だ。
シェリーに装備の製作を頼んでからここ何日かはギルドにある訓練所でスキル上げに勤しんでいた。
今日もメルとの組手の最中なのだがレベルの差があり過ぎて俺は教えるだけになってしまっている。
初めは攻撃のパターンを見ながら自分にも出来そうなことや良さそうな点を覚えさせて貰っていたが、最近はパターンも読めて来てしまったのであまり面白味がない。
メルが片手に短剣を逆手に持ってこちらに突っ込んで来てその勢いで一突きを繰り出す。
それを右に鯔しながら後ろに跳ぶ。
「んで次は…読めてるって」
「たあ!」
右脚を軸にしながら左回りに身体を捻り、その勢いで左脚による踵落とし。
俺はパンツをチラッと見つつ右へとステップを踏んで回避し、そのまま地面を蹴って今度はこちらから攻め込む。
「銃剣式突の型"桜花"!」
「うぎゅ…」
「あっ…やべ…」
音速を超える突きによる一撃をガードを固めていたとは言えモロに当ててしまった。
カエルの潰れたような声を出しながら吹き飛んだメルに急いで駆け寄るが目を回してぶっ倒れている。
「あーいかん…真心加えるの全く忘れてたわ…」
辺りを見回して回復系の魔法を使えそうな人を探すが…人なんていやしない。
仕方ないので諦めて医務室まで運ぼうとしたら入り口の方から歩いてきた人に声を掛けられた。
「おや?どうかされましたか?」
「えぇ…ちょっと組手でやり過ぎちゃって…」
「ああ…でしたら私にお任せください。これでも回復魔法は得意ですから」
そう言ってメルに魔法による治療を施してくれる男性。
見た目はフルアーマーを着けているし重騎士っぽいんだが魔法を使えるなんて凄いな。
この鎧…どっかで見たことあるような気がするんだけどなぁ…何処でだろう?
「…よし、これでいいでしょう。後は気が付くのを待ちましょう」
「ありがとうございます。わざわざすみませんでした」
「いえいえ…お礼と言っては何ですが私と手合わせ願えませんか?一人で訓練と言うのも味気ないので」
「あー良いですよ」
実力は未知数だが雰囲気としてはそんなに強そうには見えない。
フルアーマーのせいでデカく見えるが顔付きを見るとガタイ自体は良いわけではないだろう。
どちらかというと細いイメージなのだが。
まぁちょっとした練習相手になってやればいいか…
そんな事を思っていたのだが…組手を始めた瞬間にその考えを改める事となった。
メルを訓練場の休憩室で寝かせてから再び訓練場に戻り、先程の男性と対峙する。
「武器はどうします?俺は銃剣なんですけど」
「では私は…これでいいでしょうか?」
そう言って取り出したのは一本の長い棒。
150cm程で先端を鉄で強化されただけの簡素なものだ。
ふざけいるのかと思ったが本人が良いと言うなら良いだろう。
「ではこちらを使わせ頂きますね。ではどうぞ、ご自由に攻め込んで下さい」
「あーはいはい、それじゃあ行きますよ?」
俺にご自由に攻め込んで下さいとかどれだけ自分に自信があるのだろうか?
少しイラッと来たので一発で沈めるつもりでこちらから先手をうつ。
地面を蹴り出して一気に間合いを詰めると先程のメルとの闘いで使った技を繰り出す。
「はあぁ…銃剣突の型"桜花!"」
低い体制から土手っ腹に撃ち込むつもりで放ったのだが…
「…甘いですよ」
「んなっ?」
ロッドで横から軽く手首を押されて逸らされてしまった。
そしてそのまま体制の崩れた俺に向かって優しく振り下ろす。
「まだまだですね。そのスピードでは簡単に逸らされてしまいますよ?」
「…馬鹿言うな音速の突きだぞこれ」
このスピードの突きをまさかこの程度と言われるとは思ってもみなかった。
再び距離を置くソーマ。
正直…最初の目測通りの実力だろうと思っていたが考えを改めなければいけないようだ。
この男は確実に今の俺よりも強い…それも桁違いにだ。
一度距離を置いてから再度男との間合いを詰める。
「銃剣式斬の型"衝月!"」
下から腕を振り上げて切り裂くように弧を描く。
だがやはり上手い具合に逸らされてしまいまたもやロッドを振り下ろされた。
流石に今回はこのままで終わらせるつもりはない。
その場で円を書くように身体を捻り腕を弓のように引いて次の一撃を放つ準備をする。
「これで決めてやる!銃剣式突の型"焔錐!"」
至近距離からのパワーを重視した撃ち込みを全力で放つ。
バキンという何かがへし折れる音と物がぶつかりあった衝撃で若干の風が巻き起こる。
確かに当たった手応えはあったのだが…ロッドをへし折るだけで終わってしまった。
当の本人は半歩横にズレて攻撃の射程から綺麗に外れいる。
「一応魔法強化を施したロッドなんですけどね…まさか折られてしまうとは思いませんでしたよ」
「…なぁアンタ、一体何者なんだ?魔法強化を施したロッドを折れるほどの力がかかっていたのにも関わらず少しも動いていない。並の筋力じゃないぞ?少なくとも人間なら相当な実力者じゃなきゃ無理だな」
「いえいえ、私程度なんてまだまだ未熟者ですよ」
そんな事を言っているが少なくともLvは100を超えていて後半のクラスだろう。
ミュリエルさんと同クラスの実力者で間違いないはずだ。
…あの人は片手で焔錐を止める化け物だけど。
「ミュリエルさんと戦った時もこんな感じだったからな。それに近いのは確かなはずだろ?」
「おやおや…ミュリエルとやりあった経験がお有りですか?」
「まぁ…フルボッコだけどな」
「彼女は冒険者のスリートップの一人ですよ?当たり前ではないですか」
分かり切ってる事言うなよ!
それよりよりもアンタが誰なのか俺はそっちが気になって仕方ないよ!
そんな事を思っていたら入り口の方から誰かがこちらに…って噂をすれば。
「やあソーマ君、久しぶりだね」
「何をしにきたんですかミュリエルさん」
「いや僕は特に用はないんだけどそっちの彼がね」
「…そういえば誰ですかこの人?」
ミュリエルさんに訪ねてみると驚いた顔をしてこちらを見ている。
「君というやつは…本当にどれだけ長く王都で暮らしてきたと思っているんだい?彼は…ジャスティン=ナイトハート。この国の王宮親衛隊のトップだよ」
「…あぁ!あの変態紳士集団か!」
「ひ、酷い言われようですね…」
そうかそういえばどっかで見た事ある鎧だとは思ったけれどまさかなぁ…
まさかあの王宮親衛隊の…しかもトップだなんてな…
王宮親衛隊と言えば全員が冒険者でいうRランクで構成された変態集団だ。
Lvは150を超えていて親衛隊のリーダーは普段王女様に付いている程の強さであるらしい。
てかそんな人がこんなところで俺と戯れていて良いのだろうか?
「暇なんですかジャスティンさんは?」
「ち、違いますよ…これも一応は公務の一環として来たのですから」
「はぁ…」
「ソーマ君、君の事をミュリエルからよく聞いていたからね。面白い奴がギルドに入って来て裏通りのヒーローになったと言っていたからどんなものかと思って見に来たんだよ」
「また余計な事を…と言うかいろんな事知り過ぎでしょミュリエルさん」
「ええと…てへぺろ?」
「「…」」
「その反応は酷いんじゃないかな?」
いやだって…ミュリエルさんがテヘペロとかするなんて思わないでしょ。
無反応だったと言うよりはビックリしすぎて身動き取れなかっただけですよ。
「…そうじゃなくてだね。ジャスティン、君を探していたんだよ。話がすごくそれてしまったではないか」
「ああそうでしたね。それでどうしましたか?」
「…王女様が"私も連れて来なさいよ!帰ってきたら殺す!"と言っていたとだけ言っておこう」
「…私はすぐに帰らせて頂きますね」
そういって全力で走っていくジャスティンさん。
顔色真っ青だったしそんな怖い人だっけか女王様って…?
「そういえばメルフィはどうしたんだい?姿が見えないのだが?」
「あーその…」
「うん?」
「…俺が組手をしてる時にぶっ飛ばしました」
「ほう…女の子に手を上げるなんていい度胸じゃないか?そんな風に僕は君を育てた覚えはないよ?これは再教育の必要があるのではないかな?」
「ひぃいいい!?」
「さあ構えると良いソーマ君。出来るだけ死なないように頑張るんだね」
ミュリエルさんはそう言うと何処からともなく愛用のバスターソードを取り出して構えを取った。
嘘でしょ?一応ソレ魔剣だから俺も食らうと結構痛いんだけど!?
「では…いくよ」
「あっ…ちょ…まっtいやあぁあああああああ!」
その後、俺はものすごいミンチにされ再生するのに10分近い時間を有した。
そして再生したらミンチにされを五回ほど繰り返されてやっと許しが出た…ミュリエルさんマジで容赦ねぇ…
そこに復活したメルがやって来て一面血で染まった訓練場とその真ん中でミンチから再生する俺を見て再度目を回してぶっ倒れたのはまた別のお話。
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