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7.誕生日プレゼントへの道のり4

 カルスタールは続けて言う。

「レスト、君は属性に関係なく精霊たちに無条件に好意を向けられているはずだ。覚えが無いかい?特に風属性の好意が強いようではあるがね…」

 レストは確かに…と思う。精霊たちはレストに対してとても好意的だ。昔は行き過ぎるくらいの干渉があった。それは精霊たちの好意の表れであったのは勿論解ってはいた。だが、過保護すぎるきらいがあったので止めさせたのだ。少々、周りに被害が出ていたからだ。

 レストは頷いた。そして、気になったことを訊いてみた。

「属性に関係なく無条件で、ということは何か関係があるということか?」

 カルスタールはまた、面白そうにくすりと笑い答えた。

「君は本当に10歳とは思えないね。そこが疑問になるのかい?

確かに属性と言うのは関係がある。生物は少なからず精霊たちの祝福を受けて生まれてくる。精霊が祝福を与える。その時点で生物は属性が決まる。火の精霊からの祝福を受ければ、火の属性に。水の精霊からの祝福を受ければ、水の属性に。そして、生物は自分の持つ同属性の精霊と相性が良くなるのさ。祝福を授ける精霊は土地によっても変わってくるから、その土地に棲む精霊の祝福を自然、受けやすくなる」

 レストはその話に思い当たることがあった。確かに仲間たちには地属性の精霊たちが多く憑いていたはずだ。シェスカには多くの地精霊たちが棲んでいた。シェスカという地は、良質な鉱石が取れる地である。レストは知らないことではあるが、良質な鉱石が生成される鉱床を保有する鉱山があるということは、上位の地精霊たちが多く存在している証拠である。彼らは寡黙で勤勉な者たちが多かった。王都に連れて来られて、多くの地精霊たちに囲まれていないことにより、違う土地に来たのだと思い知ったのも事実だ。土地土地にその土地特有の属性の精霊たちが棲息しているのだと知った。

 レストがぼんやりと考えている間もカルスタールは説明し続けている。

「属性を持つということは、相性の問題が出てくる。相性が良いとその分精霊は自分の力をその人物に分け与えるのが易くなる。だが、相性が悪いと最悪、力を分け与えることも出来ない。そこで、媒体と言う道具が必要になって来る。それは魔石であったり、術式であったりする。普通なら自分の持つ属性は1つだ。稀に数属性を持つ者もいることはいるのだけどね。『精霊の寵児』というのは全ての属性を持つ者、又は持たない者だと考えて良いよ。そして、その人物は王の位を持つ精霊たちに祝福を与えられた者だ。本当に極々稀に『精霊の寵児』ではなくても全属性の持ち主はいる。だが、彼らはあくまで王の位以外の精霊が祝福を与えている。この違いは大きい。精霊王たちは世界だ。他の位の精霊たちは世界の一部でしかないからね。『精霊の寵児』は世界・・から祝福を与えられているんだ。だからこそ無条件に全ての精霊は力を貸す」

「なるほど…」

 レストは頷きつつ目の前の人物を伺った。目の前の人物の話に嘘は無いだろう。嘘があれば、周りの精霊たちが教えてくれる。また、レストの側に居る風精霊のフェシェイドが何も言ってこないならばレストにとっては危険なことは無いということになる。だが、“プレゼント”とはどういうことなのか?レストはそのことをはっきりと訊いていないことに今気づいた。どうやら、思っていた以上に動揺していたらしい。

 レストは“プレゼント”のことを訊くために口を開いた。

「ところで状況を分析する限り、あんたが嘘を言っていないことと俺の身が危険ではないことは分かったんだけど、“プレゼント”って言うのは何なんだ?」

「あぁ、そのことね。レスト、君に家の子になってもらいたいんだよね」

 何とも軽い調子でカルスタールは答えた。その場に居るカルスタール以外の誰もが心の中で思った。いや、一番肝心なことだろう、と…。そんなことを思われてるとは露とも思わずにカルスタールは続ける。

「うん、うちの息子が今日5歳になるんだよ。だから、息子にプレゼントは何がいいか訊いたんだよ。うちの息子はあんまりものを強請らないからね。で、息子が兄が欲しいと言ったから、これは叶えなくてはと思ったんだよ」

 うんうんと頷きながらカルスタールは事情を話した。この上なく軽い、とレストは思って周りの面々を見てみた。どうも、自分だけがそう思ったのでは無いな、とレストは確認した。カルスタールの加護精霊のフィーリスは重い、それは重い溜息を吐いていたし、レストの加護精霊のフェシェイドは呆気にとられているし、ファガー家の執事であるはずのルシルードでさえ渋面である。

「悪いようにはしないよ。親である私が言うのもなんだが、うちの息子は出来た息子だよ。君も気に入ってくれると思う。君はあの子にとってとても良い兄になってくれると思ったから君を選んだ。君は仲間思いだ。懐に入れた者を大切にするだろう。それに頭も良いし、欲が無い。短い間しか見ていないが君の性根は真っ直ぐだ。それに精霊たちに好かれている、それだけで君の人間性は保障されているからね」

 レストはそう悪いことにはなるまい、と思った。そう、精霊が証明している、というのは目の前の男にも言えることなのだ。彼のことを精霊は誰も悪く言わない。フェシェイドも悪いことにはならないと言っていたし、今もまた沈黙を守っている。これはレストにとって悪いことではないから選ばせているということだ。ただ、とレストは思う。孤児の仲間たちが気懸かりだった。俺が居なくなったら彼らを誰が守ってやれるのだろうか、と…。

 ふと、その時、目の前の男が柔らかく微笑んだ。

「君は本当に優しいね。大丈夫、君の仲間たちはこちらでちゃんと保護するよ。その為に私はあの場に居て、そして君を見つけたのだから」

 目の前の男が居住まいを正してレストに向かう。そして目の前の男は言った。

「この度、タザス領にて不正を働いていたワイアール・タザスに代わり、タザス領を拝領したカルスタール・ファガーと言う。今後は、タザス領は我が領地となり、私が治めることになった。故に領民は我が民、我が財産である。これを私は私の全ての力を使い守り導いていこう。我が名と、我が精霊に誓おう。そして、レスト、君に誓おう。私は君にはその価値があると思っている。どうか我が家に養子に来てもらえないだろうか?」

 カルスタールの今までとは違う真摯な態度にレストは瞠目した。

 喉が乾く。酷く緊張していた。こくりと唾を飲み込む。決心し、唇を舐め、口を開いた――


 こたえる。


 ―――諾、と。


 そう、応えた。



 そして、レストは自らプレゼントへの道のりの第四歩目を踏み出すのだった。

まだ、ほのぼのになってくれないですね…。自分で書いておきながら…

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