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6.誕生日プレゼントへの道のり3

 いきなり移動魔法で連れて来られた王都の屋敷は大きかった。訳も分からぬまま、小脇に抱えられて連れて来られた。しかも、そのおかげで意識が朦朧として曖昧だったのもある…。

 レストにとって、『訳が分からない』の一言に尽きる。

 今はルシルードと名乗った、この屋敷の家令からレストを拉致した男がこの屋敷の主であること、ここが王都であり、ファガー侯爵家の屋敷であることなどの説明を受けている。

 だが、そこの所は別に良いのだ。此処が何処であろうと逃げようと思えば逃げられるのだから。心配なのは、先だって屋敷の主である男と家令の会話にあった単語だ。『プレゼント』とはどういうことだ…。しかもレスト本人のことらしい。嫌な予感しかしない。

 これはシェスカに帰れないということになるのか…。もし逃げてもシェスカには帰れないだろう。今までの会話からレストが逃げたら追ってきそうだ。いや、確実に追ってくるだろう。シェスカに帰っても、すぐに見つかり連れ戻されそうな予感がする。

 レストが思考に浸っている間にルシルードが一通りの説明を終えたようだ。屋敷の主であるカルスタールが声をかけてきた。

 「レスト…でいいんだよね?」

 「…あぁ」

 「歳は?」

 「10」

 「君は『祝福持ち』かい?」

 「『祝福持ち』?」

 「精霊憑きかい?」

 「…なぜ答えなきゃいけない?」

 レストが発した一言にカルスタールは笑い出す。レストはいきなり笑い出したカルスタールを訝しがりながら睨みつけた。

 「っくっく、そんなに睨み付けないでくれ」

 そう面白そうに言って一転、カルスタールは真剣な表情で言った。

 「君は頭が良いな」

 さらに重ねて同じことを言う。

 「レスト、君は本当に頭が良い」

 レストは少々薄気味悪さを感じた。この目の前の人物に見透かされている――。

 レストの考えはすぐに肯定された。まさしくレストが考えた通りのことを目の前の人物によって披露されたからだ。

 「君はこう思った。『精霊憑きであることを利用されるんじゃないのか?』とね。確かに君が居た領地を治める領主はそのような男だったことは確かだよ。『祝福持ち』の子供を洗脳して手駒にしようと考える様な男だったからね。」

 一拍置き、カルスタールは面白そうに語る。

 「でも、男にとっては誤算があった。これは私が君を『祝福持ち』と思ったことと関係があることの一つなのだけどね、『祝福持ち』は一様に頭が良い。例え修学環境が無くても必要最低限の知識を持っているし、そこから導き出すことの出来る頭脳を持っている。それは精霊の加護の一つだ。彼らは加護対象をとても大切にする。彼らは加護対象が自由に生きることをとても望んでいるからね。どうも前領主は『祝福持ち』にほぼ逃げられているみたいだしね」

 カルスタールはレストを見て更に面白そうに微笑んだ。

 「後は、君も分かっていると思うけど、私自身が『祝福持ち』だ。私の精霊、フィーリスが君をそう判断したのは理由としては大きい…。ただ、それだけじゃ説明がつかないことがある。それに関してはフィーリスも教えてくれないのだがね?」

 探るようなカルスタールの目にレストはたじろぐ。何を言われているか分からない。

 そんなレストを見てカルスタールはふぅ、と溜息を吐いた。

 「君自身も分かってないのか…精霊たちは君にそれを知られたくないのかな?」

 レストは何のことかと目で訴えた。

 「ごめん、ごめん。あぁ、それも分かっていなかったんだね…。そのことはね――」

 (カルスタール!)

 慌てたようにカルスタールの加護精霊のフィーリスが現れ、声をかける。そんなフィーリスにカルスタールは顔を向け、強く言った。

 「フィーリス。今回は止めないよ。彼は知っていたほうが良い。だが、そのことに関しては完璧にそうとは言えないからね。フィーリスも言えないのだろう?だから、後日神殿の方に行ってみようと思う」

フィーリスは仕方なさげに一つ頷いてみせた。

 カルスタール気を取り直してレストに話しかける。

 「ごめんね。で、説明のつかないことと言うのは、君の周りにいる子達が『祝福持ち』ばかりなんだよ。強弱はあるみたいなんだけど、概ね位階の高い精霊の加護があるみたいなんだ。不思議そうな顔だね?」

レストにとってそれは普通のことだ。最初は精霊憑きでは無かった子達も暫くすれば精霊憑きになっていた。それはレストにとって当たり前のことなのだが、目の前の男は違うと言う。では、どういうことだというのか?それは悪いことなのか?レストは皆目検討も付かず、最終的に不思議そうな顔になったのだった。

 「普通、『祝福持ち』は生まれ付いたものなんだよ。極稀に先天的にではなく後天的に『祝福持ち』になることもある。だから、絶対無いとは言わないよ。でもそれは本当に精霊にとっても人間にとっても幸運なことなんだ。ほぼ無いと言って良いほどにね。その場合は数多くの精霊と人の中でとても奇跡的な相性の良さが無いと起こらないことなんだよ。でも、君の周りでは確実にそれが起こっている。有り得ない程の確率だ。でも、ある人物の周りではその様なことが起こるのは不思議でもなく、実際、事例もある」



「――その人物は『精霊の寵児』または『精霊の御子』と呼ばれている」


一度区切ります。

2013/04/05 加護持ち→祝福持ち に変更

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