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3.逃走の結末

 現在の状況を確認してみよう…。

 少年は逃走しながら考えてみる。


 追っ手を振り切ったと思っていたが、新手の追っ手が現れた→再び逃走を開始→追っ手を振り切れない→風霊の力を借り速度を上げてみた→追っ手は振り切れない→未だに逃走中である。

(風霊の力を借り速度を上げてみた→追っ手は振り切れないの部分は数度繰り返されている)


 うん、これはおかしいだろう…。この状況はどう考えてもおかしい。普通だったら、風霊の力を借りた時点で逃走は終了しているはずである。――と、なると考えられるのは後ひとつ…。

 少年は有り得ない高さを跳びつつ相棒である風霊に問い掛ける。この時点で追っ手は道が無いため、一瞬目の届く範囲から消えた。塀の上を走り続ける。

「なぁ、フェシェイド。あの追っ手は風霊の加護持ちか?」

(その問いは合ってるし、間違ってるぞ)

 瞬間、追っ手はまたしても後ろについてくる。

「どういう意味だ?」

(風霊の加護持ちか?という問いについてはそうだ、と言えるが…彼の者は風霊の力を借りてはいないぞ)

 どうやら追っ手は三角跳びで上がってきたらしい。だが、あのスピードで走っていたにしては早く来すぎているような。どうも、停止せずにあのスピードのまま三角跳びをしてきたようだ。

「…は?普通の人間は今のオレの速さには付いてこれないはずだぞ!?

 人間なのか?もしかして人間じゃないのか?!」

(まぁ、普通ならそうだな。でも自前だぞ?)

「って、人間なんだな…また速度上がったぞ?!あれで違うのか!?脅威的過ぎるだろ!あの身体能力は!!」

 だんだん追っ手との距離が縮まってきているようだ。追っ手の表情が見える位置まで近付いていた。その表情はまるで――。

「ヤバイ!異様にヤバイ気がする!!怖えー!!!」

そう、まるで獲物を見るような非常にギラギラした眼差しを向けられていたのである。それは「必ず捕る!!」と言う、やたらと物騒な目付きだった。

(諦めたらどうだ?悪いことには成らんだろうし…な)

「何か知ってるのか!?」

(いや…あの者のことを知ってるだけだぞ?)

「知ってるのか!?――っえ゛!?」


 気が付いたときには追っ手の小脇に抱えられていた――。




 カルスタールは非常に上機嫌だった。

 それは、小脇に抱えた少年にある。

 実はカルスタールは一部始終を見ていたのだ。

 何時からだ?!と聞かれたら、裏路地で話し合っていた時から、と答えるだろう。あまり良い趣味では無いが…。

 カルスタールにとって、小脇に抱えた少年は良い獲物だった。色々な意味で。

 孤児たちに指示を出していく頭の良さに計算高さ、少女を助けたときの度胸の良さに身体能力の高さ(膂力とか腕力とか)、仲間思いな所など全てにおいて優良物件。磨けば輝く原石だ、と直感した。これは捕まえなくては、と。



 まさしく、『息子の誕生日プレゼントにピッタリだ!!』と。


 

 という訳で、カルスタールは俄然張り切った。

 それ故に孤児の少年を怒涛の勢いで追い始めたのである。まさしく、それは獲物を狙う捕食者の様に。

 追いかけ始めてからも孤児の少年はカルスタールの期待を裏切らなかった。少年は地の利や体格を巧みに利用して逃げ続けた。そこには少年が持つ能力も駆使しながらの逃走があった。大人顔負けの計算しつくされた逃げっぷりである。

 少年が風霊の力を使いながら逃げるのを見て、ますます気分は高揚した。久しぶりの感覚である。この頃、訓練相手でもそう無かったものが今ここにあるのだから、当たり前なのかもしれない。少年は子供だと侮れないものをカルスタールに見せ付け続けたのだった。

 だが、カルスタールの追いっぷりを見ていたカルスタールの加護風霊フィーリスは呆れていた。

(カルスタールこれはないと思うぞ)

「もう、今更無理だ!止められん!!」

 キッパリと言い放つ。その表情は愉しくて愉しくて仕方ないと言っている。

 フィーリスは確かにこれは止まらないな…と諦め、前を走る少年に哀れみの目を向けた。



 そして、少年が有り得ない高さを塀に向かって跳んだ後、カルスタールが猛スピードを落とさずにそのまま塀の壁に突進し足をつき跳び、スピードをさらに上げて少年を小脇に抱え込んだのを見たのだった――。

 合掌。


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