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<外伝>涙の欠片2

最初は「涙の欠片」ではなく「北の死神」でした。なんかダサい感じがしたから変えた気がしたけど・・・。

森にひっそりとある湖。

動物達の水飲み場であり、

日々の忙しさを忘れさせてくれる落ち着ける俺の場所・・だったはずだが、

そこに何故か人が座っていた。

ちょっと草陰に隠れて様子を見ていた。

後姿からすると、男でさらさら銀髪、白い服でラフな格好をしている。

女性なら声をかける気もするが男だとなあ・・・・・・・・。


「見てないで出てこい。」


ビクッと俺は体をさせた。気づかれてましたか。

草陰から出て、男の傍に近寄る。


「黙って見ていて悪かった。ただこの場所俺以外の人間は知らないと思ってて、ちょっとビックリしたんだ。」


湖を見ている男の隣に座った。男が顔を俺に向けてきた。

美形すぎる、紫の瞳そして白い肌、全てのパーツが完璧だ。

同じ男として平凡すぎる俺は居たたまれない。


「そうなのか?私は今日初めてきたのだが、なかなかいい場所だな。」

「そうだろ。空気が澄んでて、心が落ち着くんだよな。たまに動物とも

 触れ合えるし、和むんだよな。」

「すまないな、お前の場所に私が入り込んで。」


俺の場所だったけど、別に誰の場所でもないし、急に謝られると悪い事

した気分になるあ・・・。きっと真面目な人物なんだろう。


「俺だけの場所じゃないし、謝らないでくれよ。そうそう俺は

 アクルっていうんだ。お前は?」

「私はレイス。よろしくアクル。」

「こちらこそ!」


笑顔がまた爽やかだな。これで何人かの女性を落としてきているに違いない。

俺にも分けて欲しい。


「レイスは何をしてる人なの?」

「兵士だよ、ただの。」

「隊長クラスだろ?結構見た目だと腕立ちそうだし。」

「そんな事はない。アクルはどうなんだ?」

「ははっ、ただの一般人だよ。」

「一般人?そうなんだな。羨ましいよ。」


ちょっと俯き加減になったレイス。

なんだか辛い事でもあるのだろうか?

兵士だから人を殺したりしてるんだろうな。


「一般人だって辛い事もあるし、兵士ならなおさら辛いんだろうな。

 でもこの場所でレイスの愚痴とか聞けるし、俺の愚痴も聞いてもらう。

 それで少しでも軽くなったらいいと思う。ここは二人の秘密の場所って事でどうだ?」

「ありがとう。またここに来たらお願いする。」


そして少しの時間ではあったけど、レイスと取り留めもない話をして別れた。レイスには悪いけど俺の本当の身分は言えなかった。



「アクル王子!!」


ライラが息を切らせて俺を呼ぶ。


「またふらりと森に行かれたのでしょ!!」

「ごめん、ごめん。もう剣術練習疲れちゃって。」

「もう!!森を探していたら道に迷われた方がいたので

 案内してたのですけど、心配でしたよ!いいかげんにして下さい。」

「毎回ご苦労様。俺も子供じゃないから大丈夫だって。」

「駄目です!何かあったらロレウス王に何とお詫びすればいいのか。

 それに最近アレントの黒兵団がこの辺りに来ていると噂がありますし。」

「黒兵団・・ああ、少人数で最近城一つ潰した奴らね。今までは

 そこまでしなかったらしいけどな。こんな小さな城狙わないって。」

「ですが王子!」


まだ何か言いたいライラを後にしてさっさと城の中へ逃げた。

ライラは俺の親父オヤジの側近の娘で、年も近いせいか昔はよく遊んでいたが、今では俺のお目付け役となっている。女の子なんだからおしゃれの一つもすればいいのにと思うのだが、父親に似て文学や武術を好んでいる。

俺からすればうるさい妹みたいな感じだな。


「遅いご帰宅でアクル王子。」

「・・すみません。」


一難去ってまた一難とはこういう事だな、きっと。

笑顔だがちょっと怖い我が城の女占い師ソフィアナだ。

美人だが年を聞くと怒るおっかない存在で、その姿は俺が

子供の頃からあまり変わってない。化粧が濃いのかもしれないが。


「まだ何か言いたい事でも。化粧が濃いとか。」

「いえいえ、口では言ってません。」


しまった。こちらを睨んでいる。


「どうした。また我が息子が余計な事を言っておるのか?」

「そうです王。どうかアクル王子をお叱りになって下さい。」

「いつもの事だがな。全く亡き母親そっくりだな。やんちゃなとこが。」


親父が来て助かった・・・。

俺の母親は小さい時に病気で亡くなっている。どうやら盗賊だったらしい。

どんないきさつで親父と結婚したのか知らないが、すごいなあと思う。


「で、お前に話があるんだが。」

「なんですか?」

「シャーセル王の娘、レティシア王女に会ってもらいたいんだが。」

「何故ですか?」

「お前もいい歳だしそろそろお見合いでもとな。」

「お、お見合い!!」


まだ18歳だし、遊んでないし、政略結婚なのか???


「政略結婚ではないよ。向こうが是非にと申されてな。」

「まあ、とりあえず会うだけなら。」


突然言われても、会った事もないし、王女だって俺の事どう思うか。

色々不安になってくるな。


「早速明日行くぞ。」

「え~~~!!」

「ふふっ、行ってらっしゃい王子。」


いきなりすぎて驚くばかりだ。レイスにこの話したら笑ってくれるかな?





「そうですか、今度はシャーセルですね。」

「ああ、涙の欠片がある。手遅れでなければいいが。」

「願わずにはいられません。」


私はふときらきら輝いた黒い瞳の彼を思い浮かべていた。


「アクルにまた会いたい。」











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