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城(エスト視点)

俺とシエロには別々の部屋を与えられた。

金の模様がある赤い扉にも驚いたが、部屋の広さが森で住んでいた家以上の

大きさにはもっと驚いた。真ん中にあるふかふかのベッドは嬉しい限りだ。


何人かの魔人は森にとりあえず帰った。どうするかは自由だからな。

また何日かしたら国の人間に大々的に俺達を紹介するらしい。

多分城の人間にはきちんと王子が俺達の事を説明したから

変な顔もされなかったと思うのだが、国の人間にはまだ存在を知らなせて

ないのだろう。どんな目で俺達を見るのか怖いといえばそうだが、

なんとなくあの王子ならどうにかしてくれそうで安心感がある。

ただシエロがショックを受けない程度であって欲しい。


トントン。


誰かが俺の部屋をノックしている。

シエロか??


「はい。」


扉を開くとルフテが立っていた。


「何の用だ?」

「ただ寂しいんじゃないかと思って。」

「はぁ?子供じゃないんだぞ、俺は。」

「弟君がいなくて泣いてるんじゃないかと。王子にべったりだからな。」


確かにシエロに一人部屋で大丈夫かと聞いたが、

なぜかあっけからんと「大丈夫」と答えた。

俺は拍子抜けしたが、逆に俺がシエロがいないとダメな

感じじゃないかと思って恥ずかしくなった。


「いいんだよ。シエロは王子に色々教えてもらわなきゃいけないからな。」

「じゃあ俺はお前に色々教えてやるよ。」

「お前に教わる事なんてねぇよ。」

「あるよエストはまだお子様だからな、大人の遊びを知らないだろ。」


ルフテに聞こえないため息をついた。また変な方向に進みそうだな。

ここは話を変えてやるか。


「それよりフロールも城に一人残るって言ってたんだけど、どうなったんだ。」

「ああ残るよ、フロールの教育係にモラドとアスルを任命した。」

「え!あの二人とフロール仲悪そうだったぞ!」

「いいんだよ。親御さんも安心して一人でも残せるって喜んでたぞ。」


ルフテはそれなりに考えて二人を任命したのか、それとも嫌がらせなのか・・。

でもあの二人ならフロールを更生させる事が出来るかもしれない。

なんとなくだけど。


「あくまでも任務の空いてる時間にだけどな。」

「いいのかお前は?今俺としゃべってて。」

「いいんだよ、俺はね。それより服持ってきたからこれ着てみろよ。」


そう言って気づかなかったがルフテの足の横に置いてあった袋を渡された。


「これから公の場に出る事も多くなるから正装服がいる。

 とりあえずサイズが分からなかったから適当に持ってきた。

 合うかどうか分からない、よって今から着替えろ。」

「そうか、分かった。じゃあ着替えるから外で待ってろ。」

「なんでだ?中に入れろよ。」


・・・とりあえず中には入れたくない。


「嫌だ。」

「男同士で何恥ずかしがってんだよ。減るもんじゃないし、

 ベッドで腰かけてるから気にすんな。」


俺の寝る場所でお前が何で座るんだよ!馬鹿なのか??


「嫌なものは嫌なんだよ!大人しく待ってろ!」


俺はルフテの体を突き飛ばして扉を回転式の鍵で閉めた。


「まったく照れ屋さんだねぇ。エストは。」


扉の向こうのルフテを俺は無視して袋から服を取り出した。

さらっとした白の服、俺の着ているざらざらした服とは大違いだ。

なんだこの黒い紐は・・・、腰に巻くものだろうか?

俺たちはそうしてたんだけど。だが、それがもう一本ある。

黒い紐より幅が広くて金属の飾りがあるが重い。こっちが腰に巻くものっぽいけど。分からない。

といってあいつに聞くのもなんだが。


「何やってんだ。遅いな。もしかして着かた分かんないんだろ?」


扉の向こうからルフテが今の状況が見えているかのように問いかけてきた。


「・・・この紐みたいなのと、幅広の長いものはどうするんだ?」


ここはしょうがない折れてみる。


「扉開けろよ。もう服は着てるんだろ?」


そうだな服は着てるんだし、気にする事ないもんな。


「ああ、教えてくれないか。」


鍵を開けて扉を開いた。

すぐそこに立っていたルフテは目を開いて俺を凝視した。


「やっぱり褐色の肌に白は映えるな。サイズもこれでいいな。」


あごに手をかけてうんうんとうなずいている。

なんかおっさんくさいなこいつ。


幅の広いのは腰に巻くもので、ズボンがずり落ちないようにするものだった。

カチッと真ん中で留めるのも新鮮だ。

黒の紐は首にするものだった。

なんかルフテが今首に巻いてくれているが蝶々結びというらしい。

簡単そうなので結び方は覚えられそうだ。


「とりあえずこんな感じだ。まあ一回練習しとけよ。」


そう言うと紐を解いて「グイッ!」と紐を使って俺を引き寄せる。

ルフテの顔がまじかに迫ってきたので、

俺はとっさに顔を下に向けたがおでこにあいつの唇があたった。


「いきなりなにすんだよ!!」

ルフテを突き飛ばす。

「・・・お前反射神経いいな。避けるなんて。まあいいけどこれでお礼って事で。」


やっぱりこいつの行動は読めない。

俺に何を求めているのは全く分からないが、からかわれているのだけは分かる。


「とりあえず結び方だけ覚えろよ。」

「もう何もすんなよ。今度したら殴るからな。」

「何もしないよ。今は。」


なんだ「今」って。気になるがとりあえずこの場を早く凌ぎたかったので、

結び方だけ教わっり、また着替える時ルフテを扉の向こうに押し出し、

服を返して「じゃあな。」と言って扉を閉めた。


「明日また朝起こしに来るからな。」


扉の向こうから声がした。


「もう来なくてもいい!」


とぶっきらぼうに俺は言った。その言葉を後にルフテの足音が

遠ざかっていく。きっとそれでもあいつは明日来るだろう。

ハッと思い頭を振る。あいつの事はあんまり考えないでおこう。

なんだか分からないがおかしくなりそうだ。

とりあえず今はシエロの部屋にでも行ってみよう。

きっと王子がいるとは思うが。




~城通路にて~


男は壁に背を持たれかけさせて待ち人を呼び止めた。


「あの魔人のお世話とは、王子以外の他人に興味のないあなたが珍しい。」


これはおもしろいものを見たと言わんばかりに語りかけてくる。

立ち止まりちらりと横眼では見てくるがルフテは言葉を発しようとしない。


「整った美しい顔をしていますが男ですよ。隊長ともあろう人が魔人の雑用を

 引き受けるとは。ご命令下されば私がやりましたのに。」


皮肉を言い放つ。ルフテは男の正面に立った。

その目から怒りを感じ取れる。この男が望んでいたものだ。


「セレノ。お前は副隊長として優秀だが、性格に問題があるな。

 それよりも魔人の女と寝たらしいな。」

「もうあなたの耳に入ってましたか。そうですよ二人くらい。人間の女より感度が

 良かったですよ。きっとあの魔人の男も感度がいいでしょうね。」


グイッ!!


壁にいるセレノの首元の服を掴み締め上げる。


「いいか。エストに何かしたら許さないからな。これ以上はしゃべるな。」


パッと手をルフテは離してさっさと歩きだした。


「ククククッ。」


セレノは笑いを堪えられなかった。

ルフテが感情をむき出したのだ。昔の様に。

王子に仕えてからは面白味もない男になってしまったが、

楽しみだ、魔人の男でかなり遊べる。


「さて、任務に戻るか。」


何事もなかったかの様に軽やかに歩きだした。


 












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