旅立ち(シエロ視点)
何も遮らない空は大きく、吸い込まれそうな青
太陽の光を体全体に浴びる気持ちよさ
そして何よりも想像以上に美しい国
全てが俺には新鮮だ
魔人の集落にはルースの部下達が集まった。
人間側と魔人側で向かい合わせになっている。
俺はルースの隣にいる。傍にいて欲しいとルースに言われたからだ。
深夜まで色々話をしてちょっと眠い俺と対照的にルースは緊張した面持ちだが、
その青い瞳でまっすぐと魔人達を見つめ、
「どうか私たちの国に来て下さい。無理にとは言いません。
一度見て頂きたいのです。それからここに留まっても、こちらに自由に来て下さっても
かまいません。私たち人間はあなた方と共にこれから歩んで行きたいのです。」
力強く堂々と宣言した。
「本当か?いきなり言われて信用できるのか?」
「まさか俺たちを奴隷みたいに使うんじゃないのか?」
魔人たちは口々に言い、不穏な雰囲気になってきた。
俺は思い出していた。昨晩ルースと話していて青い瞳の奥には秘めたる熱があった。
子供の俺にも伝わるルースの国の素晴らしさ。
俺は行きたい、ルースと。
そして俺ははっきり大きく口にしていた。
「俺は行くルースと。」
一瞬場が静まりかえったが、
長老様の言葉によって打ち消された
「わしも行こうと思う。結界が解けた理由も知りたい。
何よりも昔おった国が今どうなっているか楽しみじゃしな。」
「長老様がおっしゃるなら・・・。」
「そうだな森しか知らないのもな。」
周りがザワザワしてきた。肯定的な言葉も飛び交いだした。
さすが長老様だ。
俺はホッとして隣に立っているルースを仰ぎ見ると、最初張りつめていた顔が
緊張から解き放たれたのかイキイキした顔になっていた。
ルースは俺の視線に気づいたのか目が合いにっこりと微笑んだ。
ードクンー
その笑顔がまぶしすぎて顔が赤くなるのが分かる。
ルースにそんな顔を見られるのが恥ずかしくて俺は顔を下に向けた。
そんな俺の頭をルースは撫でて
「ありがとう。シエロ。」
感謝の言葉を投げかけてくれた。
「違うよ。長老様のおかげだよ。」
かぶりを振る。
「長老様もそうだけど、シエロが隣に居てくれて勇気をくれたんだよ。
国に着いても傍にいて欲しい。人間と魔人とが共存できる国にしたいんだ。
その為にもシエロの力が必要なんだ。」
俺は下に向けていた顔を上げてまっすぐその澄んだ青い瞳を見つめ
「俺もルースに学ぶ事がたくさんある。だから傍で色々教えて。」
俺が満面の笑みを浮かべると、ルースも笑顔で返してくれた。
「さあ、行こう。」
ルースは俺の手をしっかり握って歩き出した。