表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

雑文集

イルカ

作者: illumina

 記憶はひとりでに海上をさまよう。ある日、記憶はイルカと話をした。イルカは言った。「そんなところで何しているんだい。」「静寂の中で寝ているのさ。」「それは難儀なことだね。いつ誰が起しに来るか分からない。」「誰も来ないさ、これまでも、これからも。」「それは面白いや。記憶なのに完全に忘れ去られるとは。主人はどうしているんだい。」「さあ、主人が誰だったかも分からないや。」「まさにさまよう記憶だね。」そう、記憶は無意識の海の上をさまよう。無意識とは忘れられた記憶の集積場であり、行き場を失った記憶たちが、ここではこのようにひっそりと会話を続けている。(イルカは忘れられた記憶なのか、と訝しがるひとがいるかもしれないので念のため説明しておくと)本物のイルカはすでに地球を去って久しいと考えられており、今、我々が目にできるイルカはかつて我々が知っていたイルカとは異なる偽物である。いつ、この交換が行われたかは誰も知らないが、とにかく我々の知っているイルカがイルカではないというのは確かなことであり、このことは義務教育を終えた人間なら知っていてもおかしくはない。イルカが地球を去る際に人々に言ったことも伝えられている。すなわち「面白くなくなったので帰ります。私たちの代わりは作っておきますのでご心配なく。」かくして、十年前か、三年前か、一週間前か、三分前かは分からないが、イルカは地上から消滅したのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ