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鷽から出たマコトの世界  作者: 久安 元
悪因悪果ミミクリー
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レヴィアタンの鱗

 リーンハルトの力ですぐさま村のど真ん中へと移動した俺たちは互いに周囲を警戒しながら探索する。

 村の中には人の姿はなく、相変わらず薄く稀釈された禍渦の気配が漂うだけ。さきほど感じた気配は気のせいだったのだろうか?

「それにしても村人がいきなり出てくるとかねえだろうな……。間違って撃っちまったら洒落になんねえんだけど」

「心配するな、それは無い。彼らが私たちに干渉することはあり得ない」

「? どういうことだ?」

「私が村人たちに囲まれたとき、彼らは何もしなかったのだ。自分たちを脅かしていた汚染者が死んだことを確認しにきただけで、彼らを、かつての同胞を埋めることすらしなかった。そして私に害意がないことを知るとまた各々の住処に帰って行ったよ」

 やや嫌悪感を滲ませながら、リーンハルトは言う。

「分かるかね? 彼らは終わっている。この閉じられた世界に拘束され続けていたせいで他者への興味というものを失くしてしまったのだ。流れない水は濁り、腐れる。換気しなければ空気も悪くなる。そういうことだ。きっと彼らは目の前で家族が殺されても眉一つ動かさんだろうよ」

 結局神様は間違っていたらしい。ここの連中は種族内ではなく個人の殻に閉じこもってしまっている。自分自身に干渉されなければそれで良いのだろう。

 だとすればもう手遅れだ。

 アイツらは既に心が死んでしまっている。

 胸糞悪くなる話だが、この時この場に限ってはこれは好ましい状況であるといえる。

 いくら心が死んでいるといっても動いている以上、俺の中では生物として認識してしまうからな。もし誤射でもしようものなら後味が悪い。

『ねえ、頼人?』

「なんだ、イア?」

『ここの人たちが皆他人への興味を失っているのならアンナは? フィオレンザは? それに嫌いだけどあのグイドってお爺さんも普通だったと思うけど……』

 確かにそうだ。ただ、その三人に共通点がないこともない。

「血……かね」

『え?』

「アイツらは全員同じ家の人間だろ? そこに何か秘密があるのかもしれねえ。ま、想像だけどな。興味はあるけどいまはそれを考えてる場合じゃねえ……、リーンハルト!!」

「む?」

「一旦、グイド……村長の家に行くぞ。丘の上にあるから村全体を見渡せる筈だ」

「……ふむ、他に当てもない。よかろう、跳ぶぞ。丘の上、ということはあの半壊した家で良いのだな?」

「そうだよ、頼人が吹き飛ばしたんだ」

「おいネロ、俺一人のせいみたいに言うなよ。そもそも何かナイフみたいなもんが飛んできたせいだろうが」

「……………………」

「あん? どうしたんだよ?」

「……行くぞ」

 何やらリーンハルトの様子がおかしかったが特に体調が悪いという訳でもなさそうだ。

 再び造り出された簡易門を通り、俺たちは目的の場所へと到着する。

 そしてその瞬間に俺もリーンハルトもすぐさま臨戦態勢に入った。というのも慣れ親しみたくない、しかし慣れ親しんでしまった気配がそこにあったからだ。

 グイドの家から漂うのは強烈な禍渦の気配。何故これまで凶悪な気配に気がつかなかったのかと自分を殴りつけたくなるほどの強烈な禍渦の匂い。

 ここまで接近しなければわからなかったのはロッジのときと同じ理由だろう。伝承の核を見抜かなければ、禍渦の核はおろかその存在にすら気づけない。詰まる所、ついさきほど伝承を知った俺たちはようやく土俵に立てたようなものなのだ。

「リーンハルト、オマエは屋根の大穴から頼む。見たトコ室内戦闘向きじゃねえだろ、アンタ?」

 あれだけ破壊され、見通しの効く場所ならまだやりやすいだろう。

「確かにそうだが……、君はどうするのだ?」

「決まってる。俺とネロはこの玄関から堂々とお宅訪問してやるさ」

 一度目はダイナミックお邪魔しますをキメてしまったからな。今度は失礼のないようにしなければ。

「では、そのように。気をつけたまえよ」

「わかって――っていねえ!!」

 既に大穴へと向かったのか、リーンハルトの姿は何処にもない。

「リーンハルトならさっさと行っちゃったよ」

 ネロの身体はいつものような小型犬サイズでも、勿論山犬モ○の君のような大きなサイズでもなく、アイリッシュ・ウルフハウンド『程度』の大きさ。恐らくはこれが目前の家の中で戦闘を行える最も適切な大きさなのだろう。『適応即身オーバー・アダプテーション』が導き出した答えであるならそこに不満などない。

「んじゃ、こっちも行くとするかね」

 そうして、俺たちは玄関の扉を開け、木造の魔王城と化した家屋に足を踏み入れた。

 キシリ、キシリと。

 一歩足を踏み出すごとに、鴬張りでもないくせに大きな悲鳴を上げる廊下。一人であればその度に背後から禍渦が襲いかかって来るのではないかと警戒するところだが、いまはネロがいるのでそんな心配は不要。グロックを構え、前だけ見て進むことができる。その甲斐あってスムーズに目的地に辿り着くことができた。

『ここだね……』

 今回、全ての部屋を探しまわるような面倒な真似は必要ない。家の中に入ってすぐに目指すべき場所は理解した。ここまで強烈な気配を放っているのだ、迷う方がおかしいというもの。まだ到着していないようだが、追々リーンハルトもやってくることだろう。

『……ッ!? ……ッ!!』

 壁に背を付け、喚き声が聞こえる扉の傍まで忍び寄る。ノブに触れると、幸いにして鍵はかかっていなかった。

 つぅっと指を滑らせノブを回し、中の様子を窺い。

 俺は扉を蹴り開け、『ソレ』に銃弾を浴びせた。

 それは決して、気が急いたとかそういう訳ではなく今すぐに突入しなければ間に合わないと本能が告げていたからだ。

「よ、頼人ッ!!」

 アンナの悲痛な叫びが鼓膜に響く。

 ランプの仄かな光で照らされた部屋の中にはグイドとアンナ、そして『禁世端境』を展開するグイドの鼻先にはうぞうぞと蠢く黒い影。『ソレ』はその身に弾丸を喰らったにも関わらず何事もなかったかのように平然としていた。

「やめろ……ッ!! 違う、違う、わた、私は悪くない!!」

 狂ったように手を振り回し、グイドは喚き散らす。

「貴様が――、君が悪いんだろう!! 掟を、私を置いて行こうとッ!!」

「このッ!!」

 嫌悪している相手でも見捨てたくはなかったのだろう。影がグイドの狂態の原因と判断したネロが一直線に飛びかかろうとする。

「ネロ、退がれッ!!」

「ッ!?」

 俺の声に反応したネロは宙を蹴り反転、影に触れる寸でのところでその身を俺の傍に着地させる。

「頼人、どうして!?」

「得体の知れねえもんに触ろうとするんじゃねえ!! オマエまでああなったらどうする!!」

「……でもッ!!」

 わかっている。だが、オマエを犠牲にするくらいなら俺はグイドを見捨てることもやむを得ない、そう思うのだ。

「許してくれ、許してくれ、許してくれ……ッ!!」

『何……これ…………』

 遂には謝罪の言葉を繰り返すだけになったグイド。兎に角、その身を影から放そうとコードを伸ばそうとした矢先。

 それは起こった。

「許し――――あ、ああ、ああああああああああッ!!」

「おじい様ッ!?」

 グイドは頭を抱え、床に崩れ落ちる。そしてまるで痙攣するかのように、数度身体を震わせると、それきり動かなくなった。

 だが、俺が気になったのは崩れ落ちると同時に聞こえた硝子を割ったような音がしたこと。しかし、それもいまのアンナに尋ねることはできない。

「いやあああああああッ!!」

 未だ蠢く影のことなど頭からすっぽり抜け落ちたのか、横たわるグイドに駆け寄ろうとするアンナ。

「バカ野郎ッ!!」

 それをコードを用いてギリギリのところで押し留める。どうやったのか、手段はわからないが間違いなくあの黒い影は禍渦なのだ。迂闊に近づいて良い筈がない。

 コードを引き寄せると、俺は呆然とするアンナを壁に押し付け、その頬を叩く。

「しっかりしろ、死にてえのか!!」

「で、でも。おじい様が……ッ!!」

 俺に押さえつけられ、それでもアンナはグイドの傍に行こうとする。

 こんの……、良い子ちゃんが!!

「オマエにはどうすることもできねえだろう!! とにかくこっから――」

「『頼人ッ!!』」

「ッ!?」

 イアとネロ。二人の声に我に返った俺は、自身の危機を理解する。グイドの亡骸を飛び超え迫るは先ほどの影、つまりは禍渦。

 何たる不覚。

 全く以て人のことは言えない。未だ禍渦は壊していないというのに、それよりも説教を優先してしまった俺のミス。

 ――だから、この責任は俺のものだ。

「ネロッ!!」

 掴んでいたアンナを、ネロに向かって放り投げる。

 そして、その直後。

 視界全てを影で覆われ、俺の意識はそこで一瞬途切れ――。

「――あ?」

 次の瞬間、何処か見覚えのある街に一人で立っていた。

「ここは――」

 何処だ? そう口にする前に異変に気づく。

 変わったのは場所だけでない。服は同調状態の黒コートではなく、小学生が着るような動きやすい服装に、身体そのものも小学生低学年の頃まで小さくなっていた。

 ……何、これ? 組織に毒薬でも飲まされた? いやでもあれは服まで変わんなかったか……。そんな下らないことを考えていると聞き慣れた声が脳内に響く。

『う~ん、うわ、何処ここ?』

「うおっ!? いたのか!?」

 喋らねえし、服も変わってるしで同調が解かれているのかと思ったらイアは変わらず俺の中にいたようだ。

『いたのかって失礼しちゃうなあ。私と頼人は一心同体でしょ? で、どうなってるの、コレ?』

 イアはプリプリ怒りながらも、異常事態であることは理解したらしく状況を把握しようとする。

「知らねえよ、あの禍渦が何かしてきたんだろうけど……。何がしたいのか見当もつかん。つーかいま同調してるのか、これ?」

『うん、限りなく正常に』

 ふ……ん。ということは本格的に何がしたいんだろうな、この禍渦。取り込まれた感じじゃねえし、殺す訳でもないなら一体……。

「おい、天原」

 と。

 突如として背後から声をかけられる。

「あん?」

 振り向くと俺とイアしかいなかった空間に野球帽を被った一人の少年がこちらを蔑むような目で眺めていた。

『頼人、知り合い?』

 ……誰だっけ、あれ? いや、ちょっと待て。見覚えはあるし、名前もここまで出かかってるんだけ――あ、ゴメンやっぱ出てこねえや。

「よくも先生に俺が窓ガラス割ったって告げ口したな」

「ん、窓ガラス?」

 ああ、そういやそんなヤツいたなあ。小学校の頃、俺は割ってませんなんて真っ赤な嘘を吐いてたから確たる証拠を押さえて晒しもんにしたっけ。ええと、名前は……、ダメだ、忘れた。

 そうやって一人で納得していると少年は近づき俺の胸倉を掴むと。

「気持ち悪いんだよ、化物」

 そう――吐き捨てた。

「化物?」

「ああ、そうさ。人の嘘が分かるなんて人じゃないだろ? 消えっちまえよ」

 罵声を浴びせ、俺の目の前で少年はドロリと蕩ける。

「うわっ、汚ねえ!!」

 思わず飛び退く俺のことなどお構いなしに、グズグズに融けた元少年は崩れた顔に醜悪な笑みを張り付け、同じく原型を留めていない指で俺の後ろを指して言う。

「ホラ、ツギガキタゾ」

「次?」

 振り返ると街だった風景はいつの間にやら一変し、学校の校舎、――恐らくは廊下だろう、へと変わり、足元の少年だったモノも消え去った。

 変わったのは俺の身体が中学生サイズになったことと、服装が詰襟になったこと。そして対面する相手だ。

「よう、天原。久しぶり」

 髪を肩まで伸ばし、制服を着崩した男子生徒は馴れ馴れしく俺に話しかける。

「って、はは。覚えてない? ひっでえなあ、あんな事件起こしといてそりゃねえよ。人の両腕へし折っといて知りません、はねえんじゃねえの?」

「ああ……」

『今度こそ、知り合い?』

「名前は覚えてねえ、ただコイツは中学の時、俺を嘘吐き呼ばわりしたから半殺しにして病院送りにした覚えはある」

『そ、そう……』

 どうしてこんなところにいるのかは知る由もないが。

「ああ、ひでえ、ひでえ。人に怪我させといてよくも平気でいられるもんだ」

「ふん、自業自得だろ? 人を貶めようとしたオマエが悪い」

「あっは。そうだな、確かに俺が悪かった」

 髪を掻きあげ、酷く不愉快な笑みを浮かべて男は続ける。

「でもさ、嘘吐き呼ばわりと両腕って釣り合いおかしいと思わねえ? あまりにも罪と罰が釣り合ってねえと思わねえか?」

「…………」

「はっ、ダンマリか。まあ良いよ。俺の時間は終わりみたいだし、責めるのは次のヤツらに任せるとするさ」

 少年と同じように男子生徒は融け、吐瀉物を床にぶちまけたような何とも耳障りな音を廊下に響かせる。

 そして――。

 舞台は更に移り、夕焼けをバックに「とある建物」がこちらを見下ろしている。これまでと違い、それを見た瞬間に「ああ、今度はここか」と口に出してしまう。

「よく覚えているだろう、だって君のお父さんとお母さんの葬儀をした場所なんだから」

「うおッ!?」

 いきなり耳元で囁かれた不快感から思わず腕を振り背後の人物を攻撃してしまった。当然、というべきか強烈な衝撃と同時に吹き出た生温かい液体は容赦なく俺に降りかかる。

「はは」

 しかし、肘の感触からして明らかに鼻をブチ折った筈のソイツは、フラフラとよろけながらも腹が立つほど朗らかな笑い声をあげる。

「いや変わってないねえ、君は。君がそんなだからご両親は亡くなったというのに」

「……どういうことだ」

 胸倉を掴みあげ、その真意を問いただす。

 眼前に立つのは葬儀の時以来会っていない親戚A。その後ろにはいつの間にか増殖したらしい、ニヤニヤと不愉快な笑みを浮かべた親戚B以下総勢二十五人。

「ん? そのままの意味さ。君が中学で問題を起こさなければご両親は引っ越すこともなく事故に遭うこともなかった」

 鼻から、口から血を流し、俺の腕を朱色に染めてながら男は続ける。

「嘘がわかる? それだけならいくらでも我慢できたろう? 君が嘘に怒りを覚えるのはそれとはまた別の理由さ。君自身の身勝手な理由」

「……………………」

「わかるかい?」

「君は自分の都合で」

「親を死に追いやったんだよ」

 口々に俺を糾弾しながら、ゾンビのような足取りで親戚一同が一歩、また一歩と俺に近づく。

「なあ、天原。お前なんで嘘が嫌いなんだよ?」

 いつの間にか再び現れた男子学生が消えたときと同じく醜悪な笑みを浮かべて尋ねる。

「教えてよ、天原にはその義務がある」

 男子学生同様、何時現れたのかはわからないが初めに出会った少年は足元に纏わりつくようにしてこちらを見上げる。

「ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ね「――は」」

『頼人……?』

「ははっ、あははははは!!」

 ああ、可笑しい。

 このジェヴォルダンの禍渦は、いや、『アイツ』はこんなことで俺を壊せると思っているのか。

「まあ、グイドの爺さんは簡単に壊れたみたいだけどさ」

『ねえ、どうしたの?』

「大したことじゃねえ。フィオレンザの言った通りだ。この禍渦はこうやって人の過去を弄繰り回して、狂わせるんだよ。傷口に指突っ込んでグリグリグリグリ抉ってきやがる。普通の人間ならまあ、そうだな。五分もありゃあ発狂しちまうかもな」

『で、でも大した傷がない人だって……』

「傷の大小は関係ねえ。記憶なんて曖昧なもんだろ? 強く責められるように言われりゃその気になっちまうもんさ。自分はとんでもないことをしてしまったってな」

 だってガラス割ったの告げ口しただけであんな邪悪な顔して責められんだぜ? 究極、飯の喰い方が汚いってだけでも致命傷になるかもしれねえ。

 ――普通の人間なら、だが。

「化物? それがどうした?」

 そう、口を開く度俺の身体に異変が起きる。

「罪と罰が釣り合わない? それがどうした?」

 いや元に戻っていくという方が正しいか。

「俺の嘘嫌いが親父とお袋を殺した?」

 髪は白く、瞳は金に。

 豊泉高校の制服は黒く、長いコートへと変貌し、背丈もやや伸びる。

 背にはコードが生え、その右手には銃。

 そうして足にしがみつく少年の眉間に銃を突きつけ。

「――それがどうした?」

 引き金を引いた。

 頭部が弾け、脳漿を垂れ流しながらも未だ俺の足を放そうとしない餓鬼を左手で掴んで引き剥がす。

「馬鹿が!! そんな下らねえ咎立とがめたて程度で今更俺が悩むかよ、悔やむかよ!! 俺がそんなマトモなヤツならいまこんな所にいねえ!!」

 一人、また一人と。

 頭を撃ち抜き、物言わぬ死体へと変えていく。

「化物結構!! 咎人結構!! んなこたぁ物心ついたときから知ってるぜ!! 俺は何処かおかしい、気が狂ってるんだってなあ!!」

『頼人ッ!!』

 「雑音」が聞こえるが、気にしない。してはならない。片手に掴んだ餓鬼の身体を握力のみで握り潰す。

「『いま』の俺を後悔させてえんだったら正直者を殺させてみろ!! そうすりゃきっともっと狂えるぜ!?」

 弾の切れたグロックを消し、今度はブローニングM2重機関銃を具現化。掃射を開始する。

「は」

 ああ、気分が良い。

「はは」

 こんなにも。

「あははは」

 人目を憚ることなく嘘吐き共を殲滅できるなんて。

「あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

 嘘吐き共の血肉が舞い、世界を紅く、紅く、染めていく。

 何テ綺麗で。

 何て醜イ。

 サイ高、シ高、楽エんダ。

 嗚呼、もシ、世界が。

 ――セカイガウソダケナラ、ズゥットコノカイカンヲタノシメルノニ――

『頼人ォォォォォォォォォオオッ!!』

「ッでぇ!?」

 ガツンと頭を何かで殴られる。突然の衝撃に振り返るとコードの一本がゆらゆらと揺らめいていた。どうやらイアがコードの制御を奪って、俺に一撃かましたらしい。

「何すんだよ、イア!?」

『もう、良いでしょ!? ほら見てよ!!』

 言われた通り前を見ると、いままで立っていたこの空間が蜃気楼の如く揺らぎ始めていた。禍渦の攻撃はこれで終わりということらしい。

「……何だ、終わりか」

 落胆し、そう呟くと俺は手の中のブローニングを消した。するとそれとほぼ同時に禍渦に襲われる前、つまり元の場所に戻される。

「よ、頼人……? もう近寄っても大丈夫なのですか?」

 声のした方を振り向くと部屋の隅でネロとアンナが身体を縮ませ、震わせこちらを見ていた。

「何やってんだ、オマエら?」

「だって、しばらくぼうっとしてたと思ったら何かブツブツ呟いて、高笑いした揚句に銃を乱射し始めたから……」

「………………」

 おお、気がつかなかった。壁が見事に消え去ってるな。流石は重機関銃、そこいらの銃とは一味違うぜ。

「悪い、悪い、ちょっと夢中になっちまってな」

『ちょっと? あれが?』

 棘のある声でイアが責める。だから悪かったって。

「あー、スッキリした。それで影は? 見たトコ消えたっぽいんだけど」

「そうだ!! 頼人、大変なんだ!! リーンハル――」

 ネロの言葉を遮ったのはさっき俺があげた笑い声など及ばないほどの悲鳴。そしてそれは間違いなくリーンハルトのものだった。

「……あー、大体理解した。行くぞネロ、ほれアンナも」

 こういうタイプの攻撃にはめっぽう弱そうだもんな、アイツ。死ななきゃ良いけど。

 不吉な考えを振り払うことができないまま、廊下を駆ける。

 空間の中で問われた理由に明確な答えを出せないまま。


 アニメが終わる前にロボノをクリアしたい……。どうも、久安です。


 さて、今回はよっくん無双。ややシリアス戦闘回ながらもこの子は真面目な顔してアホなことを考えるので、書きやすいったら、もう。楽しんで書けました。

 ただ、次回はリーンハルト回。ほぼ書き上がってますが、ぶっちゃけ現在仕上げが難航しております。ぬおおおおお!!


 次回更新は1月12日 7時を予定しています。明日です。テンポを重視したらデス・スケジュールと化しました☆ 後悔はしていません。

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