第9回戦 男一瞬ダチ一生
◆第9話 スパイごっこ
『こちら浅野舞。ターゲット不審な動きなし。どうぞ』
どうも、舞です!只今私は、悪友と共にある人を尾行してます。あ、その悪友っていうのは──
『こちら、北林 鈴。同じく異常なし。どうぞ!』
……はい。北林鈴サマです!クラスメイトで、よく気が合うんだよ〜。ピアスに赤髪のヤンキーくんだけどね★
え?ところで誰を尾行してるかって?
それは私のダーリン(妄想)で、謎多き男────
【高橋 翔】さ!!
『フフフ、今日こそ翔兄の実態を暴いてやる!どうぞ!』
「人の秘密握るって快感だな☆どうぞ!」
やっぱり私等、相性抜群vV
「藤森、舞と北林は何してるの?オモチャのトランシーバーなんか持って…」
「ミッション“高橋翔を暴け”。スパイしてるらしいよ」
「高橋を?凄いわね、私は恐くて真似出来ないわ」
「チャレンジャーなんだよ二人とも」
「……でも、あんな至近距離でトランシーバー使わなくても」
「バカなんだよ二人とも」
(にこやかに辛口?)
藤森幸希;別名微笑みの貴公子
尾行し始めて、早20分。
なんだよ翔兄、私という存在が居ながら色々な生徒に話かけられてモテモテだなチクショー。
『なんだか翔兄の前に出て行きたくなりました。どうぞ』
「それじゃスパイにならないから!どうぞ」
だって、だって、翔兄腕絡まれても抱きつかれても叩かれても抵抗しないんだもんっ!あ、叩いた子にはやり返した。
『あぁ、もう我慢できません!どうぞ!?』
トランシーバーを握りしめて言うあたし。ミシ、って鳴ったけど、私には聞こえない聞こえない。
「早まるな舞!どうぞ!」
必死に止める鈴。そう、あたし達には使命がある。でも、私は、私は──────!
『翔兄が大好……ゴフゥー!!』
痛ぁぁぁぁぁぁぁぁい!!なんか顎にめっちゃ衝撃がぁー!
私は思いきり、蹴り飛ばされた。壁にぶつかり、10Mくらいで止まる。やだガンッ!っていったんだけど!
ヤベーよ、舞ちゃんの脳の住人が大怪我だよー。しかもなんか周りから煙出てるし!?
「オイ危ねえなぁ。何やってんだよ」
出たよ我が宿敵!
『青海!アンタ今わざとだろ!?』
「自意識過剰も程々にしろ。偶然だ偶然」
『どこの世界に偶然顎を蹴り飛ばす奴がいるんだー!!』
「じゃあ、奇跡だ奇跡」
無表情で言う青海。腹立ちさ10倍なんだけど!?
「舞っ!何があった!?応答しろッ!」
はっ!鈴からだ!でも、私はもう………。
『鈴、私はもうダメだ。無念だけど、後はアンタ一人で……。どうぞ』
「一体何があったんだ!?どうぞ!」
ああ鈴、アンタは本当にいい奴だな……。
「いや、何があったって、お前見てただろ。っていうか、そんな近くでトランシーバー使うな」
『鈴、私には果たせなかったけど、せめてアンタだけでも──。どうぞ』
「無視かよ」
「もう喋るな舞!今行くからな!どうぞ!」
「今行くって、お前等1Mも離れてないじゃん。ほとんど隣じゃん」
なんか青海のツッコミが聞こえるけど、気のせいね。だってアイツはもう……
「もうなんだよ。勝手に話作るな」
嗚呼、思考にもツッこまれた気がするけど、有り得ないよね。だって思考読むって化け物じゃん。あ、そっか。アイツは化け物なのか。
「お前、哀れだぞ」
そんな今は亡き青海(妄想)を尻目に、バタバタと私に駆け寄る鈴。そして鈴は私の手をとった。
「舞……!」
『鈴。ターゲットに見つかるまで、私達の使命はまだ終わらないわ……』
「っ、わかった。俺がお前の分まで頑張っ──」
「オイオイ、なんかでかい音したと思ったらまたお前等かよー」
え?この声って………。
「うわ、壁にヒビ入ってるし。勘弁しろよ、教頭に怒られるじゃーん」
翔兄だ!どうしよう!早速ターゲットに見つかっちゃったじゃん!
チラ、と鈴を見ると『あちゃー』と呟いてる。
っていうか、壁って──
『ま、待ってよ翔兄!これは青海が!』
「は?青海なんか何処に居るんだ?」
え………
((アイツ逃げやがった!))
「面倒事はごめんだからなぁ。マジックでもガムテープででも誤魔化しとけよ〜」
『ええ!翔兄ヘルプミー!』
「カムバック!」
━━━GAMEOVER━━━
『次のミッションは青海暗殺計画で』
「ラジャーーーー!!」
★キャラクターファイル★
・北林鈴
年齢:14歳
身長:168cm
体重:52kg
見た目:とにかく派手
苦手:恋愛沙汰
特技:ケンカ
優しいヤンキー。頭は弱い。家はかなりの金持ち。実は前科あり。