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第60回戦 学級委員とヤンキーくん

新キャラ視点☆



赤い髪、指定外のネクタイ、光るピアス、3つも開けたシャツのボタン。


本当に信じられない!





◆第60話 悪=かっこいいは勘違いだと気付いて






私、矢野梨華子やのりかこはD組の学級委員だ。


D組はただでさえ一般クラスだから他クラスより乱れているのに、それに拍車をかけている人がいる。


私は学級委員として、それを正さねばならない。翔先生は駄目。あれは最早、教師じゃない。


だから、私は


「鈴くん、規則に反した格好はやめて下さい!」


机に座っていた彼は、私の声に振り向いた。隣の舞ちゃんも、好奇心いっぱいの表情で私を見る。


この二人は仲が良いから、よく一緒にいる。男女でここまで仲良しなのはめずらしい。幼馴染みというわけでもないのに。


『どうしたのさ。鈴なんかやったの?』


「はぁ?俺、今日はまだ何もしていないぞ」


……この二人は、私の話を聞いていなかったのだろうか。


さっき私は、規則に反した格好はやめてと言ったはずだ。別に鈴くんがなにか事件を起こしたとは言っていない。


怒鳴りたい衝動に襲われたが、私は下唇を噛んでなんとか抑えた。


こういう場合、怒るのは逆効果だ。相手も気分を害して、こちらに耳を傾けなくなる。


私はひとつ咳払いをして、彼等の前に立ち口を開いた。


「鈴くん、指定のネクタイはどうしましたか?それと、染髪は禁止されています」


「固いこと言うなよ」


私の忠告は一蹴りにされる。舞ちゃんはニヤニヤしてるだけで、どちらをかばうわけでもない。


舞ちゃんは、なんだかんだで規則をそんなにやぶっていないと思う。


やや茶色の髪は地毛であることが分かるし、制服も派手に着崩していない。


真面目かと聞かれれば、答えは否なんだろうけど。


「いくら何でも、赤はないでしょう赤は!」


「あー…。そうだな、飽きてきたし、今度はオレンジにでもしようかな」


『紫にしてよ鈴。紫の髪の鈴……ププッ』


「そういう問題じゃない!」


この二人は私の話を聞く気があるの!?


……駄目だ、落ち着くのよ私。ここで熱くなったら負け。


私は冷静さを取り戻すため、息を吐き出した。


「……じゃあ鈴くん。まずはシャツのボタンを閉めて。ネクタイも明日からは指定のをしてくること」


そう言うと、彼は『えー』と不満げな声を漏らす。


『えー』じゃない、『えー』じゃ!


「とにかく、ボタンして、ズボンももっと上げて」


「うわ、やめろって!」


『ちょっと委員長〜、教室内でイチャつくのは大胆だよ〜』


「舞ちゃんは黙ってて!」


それと私、学級委員だけど委員長ではないから!


いつも言ってるのに、彼女はいつまで経っても、私を委員長と呼ぶ。


最近では間違いを訂正するのが面倒になってきた。わざとではないか、とも疑ってしまう。


「別にいいだろ、このくらい」


ボタンを閉めさせようとする私を、鬱陶しそうに手で払う鈴くん。


「良くないの!」


「真面目だなぁ、お前」


「……真面目なのがいけないこと?」


「別に。ただ、もう少し肩の力抜いた方がいいと思うぜ?」


そう言って彼は、私のふたつに結んだ三つ編みに触れ、縛っているゴムをとった。ハラリと舞う、全体の半分の髪。


編んでいたからか、軽くウェーブがかかっているのが視界の端に見えた。


『あ、委員長かわいー。下ろしている方がいいじゃん』


「ちょ、ちょっと舞ちゃん!」


『こっちもほどいちゃえ♪』


舞ちゃんはその言葉通り、もう片方の三つ編みもほどいた。ああもう、いいって言ってないのに!


「悪いけど、俺はこのスタンス変える気ねぇから。お前も、真面目なのは勝手だけど少しくらい洒落ついたって文句は言われねぇよ?」


それは、私の主義に反することになる。だけど、


「……お前じゃなくて、梨華子。矢野梨華子」


「ん?ああ、そんな名前だったな」


笑った鈴くんの顔が、とても眩しくみえた。




――不本意だけどね!






★キャラクターファイル★


矢野梨華子やのりかこ

年齢:14歳

身長:158cm

体重:43kg

見た目:とにかく地味

嫌い:ルール違反

趣味:読書

D組の学級委員。とても真面目で規則をどこまでも守る、生徒の鏡。

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