第57回戦 努力と才能
瑠璃視点
◆第57話 持つべきものは優秀な弟?
『どうしようどうしようどうするんだあたし!』
ソファに寝そべり、頭を抱えている姉さん。はっきり言ってうるさい。何がどうしようなんだ。
『ねぇ瑠璃!あたしどうするべき!?』
あ、ヤバイ。話ふってきた。
「……何がどうしようなの?」
『テスト明日なんだよォォォ!』
「勉強すればいいじゃない」
『分かんないのー!瑠璃教えてー!』
そう叫んで僕の体にまとわりついてくる。姉さんは軽く涙目だった。
僕はとりあえず姉を引き剥がし、座らせる。なんで弟の僕が、こんな諭すような真似しなきゃいけないんだ。
「あのね、僕はまだ初等部。中等部の問題が分かるわけないでしょ?」
『そんなことない。瑠璃はやればできる子だって、わたし知ってるよ。だから諦めないで』
「ちょっと待って。なんで僕はげまされてるの?」
なぜ立場逆転?おかしいよね、おかしいよねコレ。
っていうか、教えて教えて言ってないで、少しでも自分で勉強してた方がマシだと思う。
『流華は風邪ひいてるし、クラスの人たちは忙しそうだし…』
「大変だね」
『他人事かコノヤロー!』
再び僕の胸ぐらに掴みかかってくる姉さん。実際、他人事だよ。
『ねぇ瑠璃、アンタのその頭脳はこういう時のためだと思うんだよね』
「違うと思う」
『っていうかさ、なんで同じ遺伝子から生まれたのにこんなに違うかな』
たぶん、頭のできについて言っているんだろう。
確かに姉さんはバカだ。気が遠くなるくらいバカである。
「でも姉さん。僕がこんなに勉強できるのは、姉さんのおかげでもあるんだよ?」
『…あ、もしかしてあたしの愛の力のおかげ?照れるわ〜。だけど、イケナイ感情抱かないでね。わたし達は姉弟なんだから!』
「黙れ舞」
『すみませんッ!』
土下座してそう謝る。腰低ッ。どこに弟に土下座する姉がいるんだ。……ここにいるか。
僕はため息をひとつ吐き出し、姉さんと目を合わせる。
「姉さんって昔から馬鹿だったでしょ?」
『うん……ってコノヤロー!』
「だから血が繋がっている僕は自分が心配になってさ。もしあんなんになったらどうしよう、ってね」
『ちょっと瑠璃くん?あんなんって酷くない?』
「そしてとうとう不安に堪えられなくなり、僕は出来る限りの努力をした。つまり姉さんは僕にとっての反面教師なんだ」
『反面教師?ああ、翔兄みたいな人のことか』
翔兄って…中等部の先生か。確か姉さんの担任の。
っていうか『翔兄』?よくそんな気軽に呼べるな。
「でも良かった。あまり血縁は関係ないんだね。安心したよ僕」
『努力すれば頭よくなるって言うのか?』
「天才は99%の努力と1%の才能で出来ているんだよ?」
『じゃあわたしにもまだ希望が……!』
「ないよ」
即答すれば、え?と笑顔をひきつらせる姉さん。
「だって姉さんには1%の才能もないもんね♪」
『チクショー!なんだよこの完璧人間め。あたしは成績で5なんて体育と国語ぐらいしかとれないぞ!』
「姉さん譲りの運動神経があるし、頭はまぁ努力してるし。ある程度真面目にしてたら、5なんて簡単にとれるよ」
『ずるいずるいずるいィィィ!』
ぎゃーぎゃーわめきながら、僕を叩いてくる。っていうか痛い痛い!一発一発がなんて威力!
『なんで姉弟でこんなに違うのさ!』
「……どうでもいいけど、勉強したら?」
姉のことは大好きですよ?優越感が味わえますから♪
腹黒瑠璃くんでした〜。欠落人間と完璧人間の凸凹姉弟です。