第46回戦 体育祭〜リレー3〜
◆第46話 終わり良ければ全て良しなんて事ない
どうも、主人公なのに前回まったく登場しなかった浅野舞です。
時々あたしのいない話あるよね。ムカつくんだけど。
だいたい幸希がでしゃばりすぎなんだよ。あたしの流華に手を出しやがって。
あー、ムカつくわ。
……え?リレー?
ああ、うん。今青海にバトンがわたったところだよ。今はまだ2位。
アイツ転んでくれないかな〜。かなり派手にさ。
んで、いっきにビリ。そしてそれをあたしが華麗にごぼうぬき!とか、カッコよくね?
でも、そんなあたしの計画を青海はことごとく壊してやがる。
え、なんかB組を抜かしそうじゃん。やめろって。あんたが1位になっちゃったら、あたし大して目立たなくなるじゃん。
「キャー!」
「青海くん素敵ィ!!」
……ケッ。見た目に騙されてさ。可哀想な娘たち。なんであの腹黒に気付かないかな。
あたしは無性にイライラして、地面を蹴った。グラウンドの細かい砂が、空を舞う。風に流され、それは消えた。
「ケホっケホッ!ばか、何するんだよっ」
隣の走者に被害を加えて。
『あはは、ごめん。…………イイ気味』
「テメェ、今なんつったぁ!?」
いやん、地獄耳♪世の中には知らないほうが幸せな事がたくさんあるのよッ。
──なんて、思っていたら、もうすぐあたしの出番じゃん。
そろそろ体勢に入るか。
「おうちゃん、頑張って!」
………え?
黄色い声援に混じった、一際大きな応援。その声に周りはざわついた。
そりゃそうだろうね。だって、今【おうちゃん】って言ったもん。
あの魔王を、ちゃん付け………。過激なファンクラブ会長でも、そんな風に呼ばないぞ。
こんなにたくさんいる観客のなか、誰が言ったかなんて分からない。
なんとなく気になって、走る青海に目を向けた瞬間、…わたしは見た。
笑ってる顔。
わたしに見せるようなふてぶてしい笑みじゃなくて。
みんなに見せるような爽やかな笑顔でもない。
心の底から笑ってるような、優しい微笑。
(なんだよ、それ)
らしくない。
あいつらしくない。
何これ、ムカつく。もっのすごいムカつく。
そんな、誰にも見せない笑顔。いったい誰にむけて?
「おい、バカ女」
わたしがムッとしてたら、背後から声をかけられた。
そいつはバトン、と小声で繰り返す。ああ、受けとれって意味ね。
っていうか、何?あんた結局B組追い越したんだ?
なんかもう、全てに大して腹がたつ。だからあたしは
『うおりゃ!!』
「痛ッ!」
バトンを受けながら、思いきり砂を蹴って目にかけてやった。
「っ…テメェ」
『はん!自業自得だね』
わたしはそう叫び、疾風の如く走る。
キャーとかイヤーとか、女の子たちの甲高い悲鳴が聞こえたけど、そんなの気にしない。
吹き出る汗。太陽はギラギラ。もう、周りなんか見えない。突き抜ける風と一体化して、ああもう
消えてしまいたい。
「ゴォォォォル!!1位はD組です!体育科のB組を抑えましたぁー!」
自ら切ったホワイトテープ。本当は止まりたくなかった。ずっと、走り続けたかった。
透き通る青空。わたしの気持ちとはまるで真逆で。1位になれたというのに、わたしの心はまったく晴れてくれない。
それはきっと─────
『お前のせいだ!』
「意味分かんねぇよ」
あんたなんか、大嫌い。
声の正体は、また後ほど登場させます!




