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第45回戦 体育祭〜リレー2〜




◆第45話 鳴かぬなら、振り向かせるさホトトギス






どうも、藤森幸希です。

今回は僕が視点兼実況を務めさせていただきます。


さて、今のリレーの状況だけど、第一走者が───


「なんでなの」


隣から聞こえたピリピリした声。僕はこぼれそうになるため息をなんとか堪え、横の彼女に目を向けた。


「……流華ちゃん。遮るのやめてくれない?」


「だっておかしいじゃない」


即座に答えられる。

なにが?と問えば、流華ちゃんはムッと口を尖らせ言った。


「だってだって、なんでリレーなの!?なんで私の障害物競走とばされてるのよ!?」


ヒステリック気味に叫んで、僕の肩を勢いよく揺らす流華ちゃん。思いっきり八つ当たりだと思うんだけど。


「まぁ、物語上の事情ということで」


「何よその事情!言っておくけど、私けっこう活躍したわよ!?1位にもなったのよ!?」


「うん、すごい勇ましかったね」


「でしょ!?なのにアンタひとり良いとこ取りしやがってェェェェ!」


「ちょっ、ストップ、ストップ!首絞まって…うわぁぁぁ!」




**しばらくお待ち下さい**




なんとか怒る流華ちゃんをなだめ、解放された。僕いつかこの娘に殺されるんじゃないかな。

……保険入っておこう。


さて、話変わってリレーのほうだけど、流華ちゃんに殺されかけていた間に第一走者の美紀ちゃんはもう走り終わっちゃったんだよね……。


ごめんね美紀ちゃん。正直、全然見てなかった。……うん、ごめん。チラッと見えた時2位だったのは覚えてるんだけどね。


そういう事で、今は第2走者の隆之。さすがリレーの選手だけあって、速い。それでもやっぱりB組には叶わなくて。今のところ美紀ちゃんに引き続き2位。


A組もC組も一般的には速いんだろうけど、僕等D組との距離はだいぶ広がった。何かが起らない限り、最下位は有り得なそう。


さて、と……。B組は体育科だけあってレベル違うなぁ。っていうかさ、クラス対抗な時点でB組が圧倒的に有利じゃない?体育科なんだから、体育祭だってねぇ。


けっこうずぼらだな、この学校。さっきから滅茶苦茶なルールばっかだし。本当に本当に名門校?


私立ならもっと、伝統がどーのこーの言いそうなのに。規則も緩いんだよね。


「藤森、話ずれてる」


「あ、確かに。って、流華ちゃん、人のモノローグ読まないの」


「モノローグって、口に出してたわよ」


「えっ!ホント!?」


「嘘に決まってんだろ。騙されてんじゃねぇよ、馬鹿」


ハッと見下すように鼻で笑う。今の声、温度で表すなら間違いなく氷点下だ。


「……流華ちゃん、最近僕にも毒舌になってきたね」


「舞しかいらない」


「いや、ちょっと流華ちゃん?」


「舞以外みんな死ねばいいのに」


「流華ちゃんンンンン!?」


「そうすれば、私と舞だけのエデンの園……vV」


「意味わからないからっ!これ以外おかしな道進んじゃ駄目だって!しっかり流華ちゃん!!」


うっとり、と夢の世界に入りこんでいる彼女を必死に呼びかけ、戻した。なんかさぁ、僕いろいろと損な役回りだよね。


こんなに美人なのにもったいない。そんなんじゃ、彼氏もできないよ。


───いや、できないんじゃなくて、つくらないのか。そうだよね、舞ちゃん至上主義だもんね。女の子LOVEだもんね。


「本当、損だなぁ……」


「は?なにがよ」


「秘密」


パチン、とウィンクしたら、不審な目で見られた。ひどくない?少しは頬染めたりしてくれると嬉しいんだけど。


(まぁ、持久戦でがんばりますか)





眩しすぎる太陽。雲ひとつない空の下。たくさんの歓声と、走る少年少女。輝く汗は綺麗で、心がくすぐられる。


友達以上恋人未満?取り払いたいボーダーライン。


こんなに甘酸っぱいのは、きっとない。この青い春を楽しもう。延長戦でもいいよ?いつか振り向かせてみせるから。


天気は快晴、風は良好。夏はまだまだ、続きそう。


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