第44回戦 体育祭〜リレー〜
◆第44話 バトン落とすとみんな視線で責めてくるよね
フフフフフフ……。
笑いがとまらない。だって…フフッ、ねぇ。──プッ。クク、ふぅ〜。ぶふっ
え?キモイって?大丈夫、百も承知よ。
だって、これは笑わずにはいられない。やっと、やっと私の出番がきたんだから!
『きた。これからが私の時代よ。天下とりよ!下剋上よォォォォォ!!』
「うるさい」
『ひぶっ』
私が高笑いしていたら頭をはたかれた。ナンセンス!(ぇ
叩いた犯人をキッと睨めば、呆れた瞳と目が合う。予想通りの人物だ。
『テメ、なにすんだチクショー』
「黙れ。空気が汚れる」
『どういう意味だコノヤロー!』
「そういう意味だコノヤロー」
ムカつく!激しくムカつく!その涼しい顔、原型留めれないくらいに殴りてぇぇぇ!
「ちょ、ちょっと舞、高梨くん喧嘩しないでよ!」
そう言って、私を押さえるクラスメイトの美紀。あ、美紀はリレーの第1走者ね。リレーは4人出るんだ。
って、んな事はどうでもいいィィィィ!!
『止めるな美紀ィ!一発殴らないと気がすまないッ』
「すぐ暴力にいくあたり低レベルだよな」
「高梨くんも煽らない!隆之、傍観者になってないで助けてよ!」
美紀は私を押さえつつ、リレー第2走者の隆之に懇願の目をむける。隆之はため息をつきながら、私達に近づいて
「青海、他のクラスの奴に本性バレるぞ。浅野、翔先生って、おとなしい娘が好みなんだって」
その言葉が耳に届いた瞬間、私はピタリと止まった。今、ものすごく重大なことを聞いた気がする。全機能停止。
『隆之……それ確かな情報?』
「本人に直接聞いたから間違いないと思うな」
マジかよ。あの翔兄が、おとなしい娘が好み…?んなバカな。いや、でも恋人の愛姉もそんな感じだし。
『浅野舞、今日をもって大和撫子になります!』
「切り替え早ッ」
自分の性格を変えるなんてゴメンだけど、愛しき人のためならなんだってするわ!汚い言葉使いやめます、平和主義者なります。だいたい翔兄しっとり系が好きだなんて、もうす・て・きvVああ、もうなんていうか!愛されるより愛したい☆
『激ラブ〜♪』
「頭トリップしてるぞ。戻ってこい」
青海の声にハッとする。ヤバイヤバイ。意識がどっかいってた。
ダメだね、恋する乙女は悩んで揺らいで、どんどん妄想の世界に入っちゃうわ。
そうして現実と妄想の区別がつかなくなるんだね。ストーカーも元は恋する乙女だったってことよ。つまりストーカーに罪は無い。いや、それとも恋におちたら犯罪スレスレなのか?だけど恋泥棒とか言うよね。あ、分かった。ストーカーは泥棒まではできない、恋の犯罪者なんだ。ちょっと臆病なんだね。
あれ?なんでストーカー談義?
「とにかく、リレーは協力しないと勝てないんだからね?喧嘩は一先ずお預け。分かった?」
『はーい』
美紀の言葉に手をあげて返事する。美紀は『よし』と頷いた。
「ただでさえ青海と浅野は仲悪いのに、バトン渡し大丈夫か?」
隆之が私達をチラリと見て呟く。そう、第3走者が青海で、アンカーが舞様なのだ。
え?だってアンカーって目立つじゃん?なんかかっこいいし。私はアンカー以外嫌なのさ。
「大丈夫だよ。俺がこんな民衆の前でそんな事するわけねぇだろ?」
「本当か?」
「ああ。バレない程度にバトンでコイツの頭を叩くだけにしとくから」
「それ大丈夫言わないィィィィィ!!」
『てめぇぇぇぇ!!』
美紀のツッコミと私の叫びがハモる。
マジでムカつくんですけど。かなぶんかと思って触ったら、ゴキブリだった時と同じくらいの嫌悪感だよ。
私はその時、絶叫したね。あまりの怒りに、踏み潰したよ。
素足で(今ひいた奴、君とは友達になれない)
なんだかんだで、リレーが始まった。それぞれ配置につく。
リレーは一人50m走るんだけど、アンカーだけは100mなんだ。言っておくが、私は50走すげぇぞ。ギネス保持者だからな。5秒きってるからな。
──まぁ、嘘だけど。
それは嘘だとしても、マジ速いぞ。陸上部から必死に勧誘されたし。ついでに当時の私は料理部だったから断ったけどね。
「よーい………」
銃声が鳴り響いた。ついにリレーの始まりです。




