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第42回戦 体育祭〜借り物競走2〜



◆第42話 つまずいたっていいじゃないか






「さて、あれから5分。皆さん探しに行ったきりですが…そろそろ戻ってきてもいい頃。1番になるのはどこのクラスでしょう?」


(なんかマジでかったるくなってきたな)


熱血な実況内山とは真逆に、冷めている青海。営業スマイルも面倒くさいのか、時々クールな表情が垣間見える。


「おぉ!戻ってきた模様です!あれは……B組!B組です!ね、青海くん?」


「そのようですね(爽笑)」


青海得意技、スイッチ切り替え



そんな会話が繰り広げられているなか、全てのクラスが借り物を持って戻ってきた。


「1番は俺だぁー!妹ロリ萌えーーー!」


B組、どこから連れてきたのか、美少女をお姫さまだっこして全力疾走。


「がんばって、お兄ちゃん♪」

「うおおおおぉぉ!!!」


B組、更に加速。


「わーすごいですねB組。猫みみまでついてます!萌えパワー炸裂☆」


「ははは。(馬鹿だろこいつ等)」


青海は渇いた笑いで誤魔化す。腹の中は真っ黒だ。


「おほほほ!おどきなさいそこの愚民」


「なぬ!?」


突如現れた高い声に、バッとB組少年(以下少年B)が振り返れば、そこにはC組少女(以下少女B)が。あろうことか、御輿で担がれながら。


「てめっ!卑怯だそ金持ち!」


「卑怯じゃなくて策略と仰って欲しいわ!ただでさえ千円札を持つという屈辱をうけているのに、これ以上惨めな思いは御免葬りますっ」


ふさふさの扇を口許にあてて、高飛車に笑う少女C。明らかに庶民の敵だ。きっとたくさんの者が殺意を抱いただろう。


「チクショー!おい、幹部!こんなの有りかよ!?」


少年Bが悔しそうに顔をしかめ、本部のテントに向かい叫んだ。


「有りです」


「チクショォォォォォ!!」


が、玉砕(笑)


猫みみ美少女を抱く少年と、手下に担がせる少女。普通の体育祭ではありえない光景だ。


「いや〜、実に接戦ですvvね、青海くん」


「…そうですね」


爽やかな笑みに、少し黒が入った。だが他の者どころか隣にいる内山でさえそれに気付かない。


「さて、他のクラスは……?」


実況がキョロキョロと見渡す。すると視界にひとりのメガネ少年が入った。


「あれは──A組ですね。しかしどういうことでしょう?たった1人です」


内山の言う通り、A組少年(以下少年A)は1人でゴールに向かっていた。


「A組は確か」


「自分より頭の良いクラスメイト、ですよね」


「それそれ!さすが星宵学院の王子ッ!」


「そんな大袈裟な」


小さく笑い、謙虚な振る舞いをする青海だが、心の中は、当たり前だろ分かりきった事言ってんじゃねぇよ。と、かなり腹黒い。


その内にも、少年Aは走る。こう叫びながら。


「ハハハハハハ!この僕より頭の良い人なんかいないね!つまりは僕が僕を連れていけばいい!何故なら僕がいちばん頭良いから、そして僕のお題が僕より頭の良い人であって、だから……あり?」


だんだんと声が小さくなる少年A。


「混乱してますね〜。まぁ確かにややこしいですけど」


「……というか、借り物無しって有りなんですか?」


「いいんじゃないですかぁ?借り物が自分より頭の良いクラスメイトで、自分より頭の良いクラスメイトがいないから、つまり借り物は自分自身なわけで……あり?」


内山さえも混乱する始末。青海は『うわぁ…』という目で見た。


しかし少年A。借り物が自分自身なのはいいが、運動神経はよろしくないらしい。体育会系のB組、楽してるC組との差は大きい。


「これで全員揃いましたかね。──おや、なんか物凄い速さで走ってくる者がいるんですが」


実況のなんなんでしょうか、という声は掻き消された。


『うぉぉぉぉ!!!』


校庭に響く、太い声色。みんなが振り向いた。


「あれは……D組!?D組です!鬼のような形相で走ってますっ」


(アイツ、やっと来たか)


知らず知らず、笑みを浮かべる青海。鈴の代役で出たヒロインの登場だ。


その手には、ある1人の男の手が。その男は、面倒くさそうな表情をしつつも、舞について走る。


『1位は私だぁー!そして翔兄に褒めてもらってついでに禁断の恋しちゃうんだ!!ね、翔兄♪』


「勝手に決めるな。っていうか、なんで好きな人の恋人の…あぁもうだりぃ。えーと、その浮気相手が俺なんだよ」


いつもとは違い、ジャージ姿の彼は、そう、高橋翔。舞の超人的な速度に、多少汗を流しながらもついていっている。


『いいじゃない!つまりは私と翔兄が相思相愛ってことなんだからvV』


「なにその妄想」


キャッ、と頬を染める舞を冷たくあしらう翔。



「これは面白いことになってきました!ひとりのA組、オタクB組、高飛車C組、超人D組……。いったい誰が1位を勝ちとるのでしょう?」


「見物ですね」


王子スマイル、未だ健在。やっぱり女生徒たちの黄色い声が響く。


競技のほうは、B組と舞が接戦中。C組が少し遅れ、A組が最後。


そしてゴール直前、舞と翔が、今テープを────







ベチャッ!


「『ぶっ!!!』」


「!!」


………数秒間の沈黙…………


「──び、B組です!1位B組!!なんてハプニングでしょう!D組、高橋先生をまきこみ派手に転倒しました!これはきまらないッ。あまりに恥ずかしいです!」


『ぐはぁっ…。翔兄、すんませんマジでらっくす』

「今のでお前の好感度一気に下降した」

「NOーーーーーー!!」


――結局、D組は3位となる。


「……なんで何も無いところで転ぶんだ」


青海の呟きに、答えはなかった。










  ◇


トントン、と爪先を軽く叩く。数回屈伸して、深呼吸。さっきの借り物競走は3位になっちゃったから、僕等が取り返さなきゃ。


『ガンバレよ幸希ちん!』


肩を叩かれ振り向けば、膝を赤くした舞ちゃんが立っていた。鼻の頭には、絆創膏が貼ってある。


「舞ちゃん」


『いや〜、やっぱり幸希がいるといいねぇ。貴重なツッコミだもん♪』


キャハハ、と笑う。先ほどのミスなど悲しいくらい気にしていないようだ。羨ましくなるよ、その図太さ。


「藤森ー、そろそろ行かなきゃって……舞!!」


ああ、流華ちゃん登場。


「舞ィィィ!怪我はない?大丈夫?ああ!膝がッ鼻がッなんてこと……!」


嘆くようにして、がくりとうなだれる。相変わらず舞ちゃん至上主義だ。ため息が自然とこぼれる。


「流華ちゃん、行こう」


次は障害物競走、僕等の出番。流華ちゃんに手を差し出したら、


「こっちがいい」


流華ちゃんはそう言って、舞ちゃんを抱きしめた。


………別にいいけどさ(涙)




次回は障害物競走★

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