第40回戦 体育祭開催
広い広いコバルトブルーに、大地を照り付ける太陽。
今日は、体育祭当日───
◆第40話 運も実力のうち
「とうとう始まりました、体育祭!この日のために、過酷な練習をやってきた人もいるはず!実況は私、3−D内山がお送りします!」
『本部』と書かれたテントの下で、マイクに叫ぶ。みんなはそれに歓声を揚げた。
(ノリがいいなぁ)
額を伝う汗を鬱陶しそうに拭いながら、そんなことを思う。ああ、なんて暑い日。今日のために誰かてるてる坊主でも作ったのだろうか。
「優勝したクラスには純金製のトロフィー。更にMVPになると、豪華賞品が送られます!」
まわりの、特にD組のテンションがあがる。まぁ、一般クラスだからね。みんなキャラ濃いけど。
隣を一瞥すると、青海が退屈そうに、テンションの高いクラスメイトを見てる。こんなに暑いのに、なんで汗かいてないんだろう。
「それでは、10分後に第1種目『2人3脚』が始まりますので、それまで皆さんは配置についてて下さい!」
内山くんこと実況がそう言う。僕は立ち上がり、眩しい太陽を手をかざして見つめた。
◇
「みんな、優勝したいかー!?」
ビシッとハチマキを横で結び、シャツの袖を肩まで捲った舞ちゃんが、みんなの前に出て、大声でそう言う。
まわりはオオォォォォォ!!と叫んだ。
「賞品がほしいかー!?」
「オオォォーーー!」
「ニューヨークへ行きたいかー!?」
「オオォォォォーーー!」
「ステーキが食いたいかー!?」
「オオォォォォーーー!」
「ピンチになった主人公を助け、無言で去っていく、戦隊もののブラック的な役になりたいかー!?」
「オオォォォォォーーー!」
……どうやら叫ぶ内容はなんでもいいらしい。まったくもって意味不明だ。いや、分かるけれども。
「姐御!」
『む、なんだ慶太』
舞ちゃんに向かい、ビシッと敬礼する宮内慶太くん。
「どうやら2人3脚三年生始まったようです!」
『なに!?三年生ってことはもしかしたら……。私はしばらく席をはずす!私の代わりは、ヤス!お前に任せる』
泰明くんを指差しそう言う。泰明くんは喜んで、と二つ返事で承諾した。
それを見た舞ちゃんは、瞬く間に三年生の種目を見に飛んで行った。
(大方、花形先輩目当てかな)
彼女の後ろ姿を見てそう思う。ランランと輝く瞳をする舞ちゃんは、普段から想像もつかないくらい、女の子だった。
……まぁ、普段がアレ過ぎるだけなのかもしれないけど。
「暑くなりそうだな」
呟いた声は、舞ちゃんの行き先に気付いたのであろう、流華ちゃんの嘆きと青海のため息にかき消された。
僕はそんな2人に苦笑しつつ、プラグラムを広げ、自分の出番をさがす。2人3脚、借り物競走、と並んで
(あった)
3番目、障害物競走。
舞ちゃんと青海がでるリレーは、午前の部で最後だ。
午後は団体競技で埋めつくされている。
『きゃああああ!花形先輩かっこいいーvV』
突如聞こえた、叫び声。思いあたる人物は1人しかいない。明らかに上級生から不審な目線を向けられているのだが、おかまいなしみたいだ。
(先輩、2人3脚だったんだ)
ペアは誰かな、とか思いながら、僕はあの天然さわやか先輩の勇姿を見に行った。