第39回戦 D組の隠密組織《後編》
◆第39話 足して2で割ったらもとどおりじゃん
「お前等、いくらなんでも堂々すぎないか?」
仁王立ちする私達に、怒りを通りこしたのか呆れた口調で言う荒井。B組の奴らはみんな怪訝な視線送ってくる。
『どんな時も偽るなと言われて育ったので』
「じゃあなんでスパイ?」
それはもちろん……その、なんていうかカッケーじゃん。コソコソするのは大嫌いだけど、人の秘密にぎるのは大好きだし。
『で、足して2で割ったらもうスパイになるしかないなと』
「いやいやいや、どんな理論だそれは」
「荒井ー、頭弱いくせに理論とか言うなよー。なんか痛いし」
「なんで呼び捨て!?っていうか、北林に頭のこと言われたくないんだけど!」
荒井のバカだと同様な意味を含む言葉に、ひっでぇーて唸る鈴。まぁ傷付いた感じは皆無だけど。
「スパイってあんた……そんな卑怯な真似して恥ずかしくないのか?」
今まで黙って見ていた女生徒Aが、凄んで私にむかいそう言った。
短い黒髪に、きつめの目付き。絶対気が強いよこの娘。
『ふっ、生憎、恥ずかしさというものは、とっくの昔にペーパーで優しく包んで水洗トイレに流したさ』
「全然上手いこと言ってないから!なに私かっこよくね?みたいな顔してるんだ!!……って違う。ついツッコんでしまった」
見事なツッコミ(幸希並だね)をいれたかと思ったら、眉間に皺を寄せ、頭をふるふると揺らす。と思ったら私をキッと睨みつけ
「私、あんたにだけは負けないから」
………。
『えーと、会ったことあるっけ?』
そう聞くと、彼女は精一杯顔を歪めた。
「忘れたの!?私よ、小学校一緒だったじゃない!」
『マジで?鈴、誰だか覚えてる?』
「いや、俺と舞小学校違うし」
『チッ、使えねぇ』
「なんつった?今なんつった?」
責めよる鈴を軽くシカトして、私はくるりと振り返りB組の奴らに
『優勝は私がもらった!』
宣言した♪
当然抗議の声が聞こえるが、そんなもんしるか。
『よし、ひきあげるよ鈴』
「アレ?喧嘩しねぇの?」
「こんな大人数相手にやーよ。それに、なんとなく弱点わかったし」
ふふん、と自慢気に笑う。
すげー!と言う鈴と共に、私達は堂々とドアから出ていった。
「ちょ、ちょっと言い逃げ!?待ちなさいよ」
後ろからなんか聞こえるけど、きっと幻聴だ。
「いいのか無視して?」
『いいの。ああいう使い捨てキャラはいつのまにか消えてるものさ。次回にはもう出ないよ』
「誰が使い捨てキャラよ!!」
シ・カ・ト☆
さぁ、次は金持ちC組だッ
私は文句の言葉を背中に浴びつつ、高笑いしながらスキップスキップ♪
◇C組の場合◇
「なんか乗り気じゃねぇなー。C組はやめね?」
C組のドアに触れようとした私に、視線ななめ下で言う鈴。両腕は頭の後ろにまわされている。
『なんでさ、C組だけ調査しないなんておかしいじゃん』
そう私が首をかしげると、ぼりぼりと頬を掻き、不機嫌な表情をした。
「俺C組嫌いなんだよ。すかしてるっていうか、見下してるっていうか……」
『まぁ金持ちのエリートだからね』
それに鈴だってC組の予定だったくらい金持ちじゃん。財布にいつも札何枚も入れてる奴がなに言ってるんだか。
「舞だって金持ち嫌いだろ?ほらアレ、自分に無いもの持ってる奴はムカつくじゃん」
『それは私が貧乏と言いたいのか?そう言いたいんだな?』
「なのにC組の奴ら、貧しくても、貧しいくせに、ハイテンションに頑張ってる舞みたいな貧乏人を鼻で笑うんだぜ。酷くね?」
『ああそうだね。ホント酷いよね。金持ちが大嫌いになったよ。とくに目の前のヤンキー』
なんで?と首を傾ける鈴。無神経な上に鈍感か。つくづく友達でいることを考えるっつーの。
『まぁいいや。じゃあ開けるよ?』
そう言って、私がC組のドアに手をかけたとき
「あ、舞ストッp…」
ハッとしたように鈴が制止した。焦った声色に『え?』と私が声をもらした瞬間───
ジリリリリリーー!!!
けたたましい音が…。
『……鈴、なにこの音』
「非常ベル」
ケロリと答えられてしまった。
え、なに?もしかしてこれ私のせい?いやいや、私ただドアに触れただけよ?
「C組には関係者以外がドアを開けようとすると、非常ベルが鳴るんだよ」
えぇ!?なにそのハイテク技術!
「ついでに今は少し触っただけだから非常ベルで済んだけど、完全に開けると電流が流れます」
『あぶなッ!このクラスあぶなッ!!っていうか、その敬語がムカつく!』
「時々ミスで先公たちも感電してるけどな」
ちょっと待ってよ。私がどこにツッコむって、同じ学園でこの設備の違い。そしてもう教師という被害者が出てるのに、止めようとしないその図太さにツッコむよ。
「さて、非常ベルのせいでかなり騒がしくなってきたけど、どうする?」
怪しく笑う鈴。なんでアンタはそんなに冷静なのさ。
私はそれにしばらく黙っていたけど、直ぐに笑みをはりつける。
『決まってるじゃん。私達はピンチに追い込まれたら、いつだってこうしてきたじゃない』
「そうだな」
パチン☆とアイコンタクト。
ふぅ〜、と息をおもいきり吐いて、背筋を伸ばす。
「『逃げろ───!!』」
★その後★
翔のもとに一枚の紙。それは舞と鈴からの、言わば報告書だ。
その報告書の内容は
《スパイした結果》
・A組…黒魔術
・B組…使い捨て
・C組…ツッコんでいい?
「………」
数秒後、翔の手によってその紙はビリビリに破かれた。
久しぶりの更新ですいませんm(_ _)m今までケータイ故障中だったもので……。もう直ったので、大丈夫です!




