第38回戦 D組の隠密組織≪前編≫
『では、行って参ります』
「ああ、気をつけろよ、油断は禁物だ」
目の前の閣下は、レンズの細い眼鏡を、くいっと持ち上げ、神妙な表情で私にそう言った。私はこくんと頷き、隣にいる相棒と目で合図する。
『必ずや、弱点を見付けてみせます』
「俺たちに不可能なんてこと、有り得ませんから」
強気な口調で、しっかり言い放つと、閣下は滅多に見せない笑みをこぼし、
「頼りにしてる」
そう言った。
◆第38話 FBIに憧れて
こんにちは、舞です。え?なんか話間違ってないかって?いいえ、そんなことはありません。きっとあまりのシリアスに戸惑っているのですね。そんな読者様に、簡潔に理由を説明しましょう。
私たちの状況、それはスパイです!!あ、でも今回は相手は他クラス。閣下の正体は翔兄。めずらしく私たちのノリにのってくれた。あ、それと相棒はもちろん───
「ヤベ、俺等かっこよくね?マジでスパイっぽくね?」
はい、鈴です!やっぱりこのこしかいないでしょvV
『では鈴、確認だ!今回のミッションは?』
「体育祭の他クラスの作戦を入手せよ!」
『その通り!じゃあ、まずは順番にA組から行くぞッッ』
「イエッサー」
ピシッ、と敬礼して、私達はA組に走った。
あ、言い忘れてたけど、今の時間は学活。きっと何処のクラスも明日の体育祭にむけて、話し合いしてるはず。そこを狙って私達は出動するのさ☆
翔兄の許可とってるから、サボりじゃないよ!?
≪A組の場合≫
「Hereafter, the conference will be started. It is the final confirmation of tomorrow's
physical education festival. Learn that A class is not only a brain.」
……………。
『なに言ってんのアイツ等、なに言ってんのアイツ等』
「儀式か?黒魔術の儀式か?」
こっそりと、ベランダから窓を通して覗く私達は、?を大量に頭にうかべる。
だって物凄い意味不明な言葉発してるんだけど。こえーよ、黙々とした空気に変な羅列こえーよ(混乱中)。
「うわぁ、何語しゃべってたんだアイツ等?」
『さすがA組……奥が深いわ』
こそこそと聞耳をたてる私と鈴。ヤベェ、全然何しゃべってるか理解できない。スパイにならねぇよ。通訳プリーズ!あぁ、流華にも来てもらえば良かった!!
「……どうする舞?」
聞くに耐えられなかったのか、鈴が眉をよせて私に尋ねる。
『あの、アレよ。どうせA組の奴等は頭ばっかで、運動神経なんてカスなはずよ。閣下(翔兄)には、頭脳派プレイでくるって言っとくわ』
「…じゃあ、A組終わり?」
だって、あんな呪文みたいなの、聞いてたって頭痛くなるだけじゃん。私の頭破裂させる気か?言っとくけど、すごいもの飛び出てくるぞ。
≪B組の場合≫
頭脳派A組を立ち去り、現在体育系B組を偵察中。ベランダから現れ、キャッツ・アイよ。
「やっぱりいちばんの敵はB組かぁ。そういえば、舞って入学当時はB組に誘われてたよな?なんで断ったんだ?」
赤く染まった髪をかきあげ、視線を向けてくる。
『うーん?だって、いろんなすごい奴と同じクラスよ?なんか無理。私、1番じゃないと嫌なの』
ひょこっ、と窓から覗きこみ、鈴の質問に答えた。鈴はそれを聞いて『ふーん』、とたいして興味無さげに呟いて、私同様、B組の教室を覗く。
『…あぁー、なんか白熱してるなぁ。荒井なんか握り拳つくちゃって、語ってるよ』
やけに意気揚々とした雰囲気の教室を見つめて、ぼそっと呟いた。
………あ
あまりに熱烈視線(違)を送ってたせいか、B組の奴と目が合った。うわ、めっちゃ変な顔してるし。
『鈴、1回引き返さない?』
「あ?なんで?」
なんでってそりゃアンタ、察してくれよ。
そうこうしてるうちに、私に気付いた男子が、目を見開いて口を開けた。
はぁい、めちゃくちゃ焦る5秒前☆←古
5、4、3─────
「ああああああ!!!」
あり?2秒ずれたか?
ソイツが私を指さしながら、大声出して立ちあがった。膝裏で椅子倒してるし。驚くな、っていうほうが無理なのかもしれないけど、ナイスリアクションすぎるわ。
ソイツの声につられ、他の奴等も次々と私達を見る。鈴が隣であーあ、とため息まじりに、でも楽しげにこぼした。
『どうする?いきなりバレちゃったけど』
「はっ!決まってんじゃん!先手必勝、一石二鳥ッ!!」
鈴はいろいろとずれた四字熟語を叫んで、ガラッと勢いよくベランダのドアを開けた。
「お、お前等なにやってるんだ!授業はどうした!?」
いきなりの侵入者に、あたふたと慌てる荒井先生。ヤベ、おもしれぇ。人を驚かすの私大好きだわ。
『よくぞ聞いてくれたわね!?さぁさぁ、聞いて驚け見て笑え!』
「俺たち2人、D組の最高秘密組織★いわゆるスパイだぜッ」
「『Aランク並の企業機密だから、内緒にしろよ?』」
パチン、とウィンクしてやる。一斉に『派手な隠密だなオイィィィィィ!!!』とツッコミが入るのは、3秒後。
次回に続く☆




