第31回戦 2学期スタート
#2学期編#
◆第31話 きたきたきたよ新学期!!
「おーいお前等席つけ」
ざわついた教室に入り、いかにもやる気無さげに呼びかけるこのクラスの担任、高橋翔。
みんな次第に席に着く。
「あー、なんだ。みんな夏休み楽しいことあったか?…と聞きたいところだが、だりいからパスね」
テキトーだなオイ。
『翔兄!私は翔兄との一夏の体験が印象に残ってます!!』
パスって言ったのに平気で無視したよ舞ちゃん。
「はいはい良かったな。俺は彼女とデートしまくりだった」
『!!!うわーん!翔兄の浮気者ォー』
あぁ!!あの娘泣き叫んで教室出てった!朝から授業放棄!?
っていうか先生彼女いたんだ!
先生の爆弾発言で、教室内がいっきに騒がしくなる。女の子はみんな、ショック!とかヤダー!など言っている。モテるな先生。
「舞、舞が…。ここは追い掛けるべき?それともそっとしておく事が優しさなの?分かんない…私には分かんないわよ。もう愛なんて分かんない!」
なんかぶつぶつ呟いてる流華ちゃん。99%の確率で舞ちゃんがらみだろうけど。
「じゃあ出席とるぞー」
じゃあってなんだ、じゃあって。
「全員呼ぶの面倒だからいない奴、挙手しろー。………よし、欠席ゼロな」
アバウト!!
「先生、北林君が来てません」
「あ?どーせ鈴はサボリだろ。アイツは始業式来るような奴じゃないしな」
ボリボリと頭をかきながら、心配してる様子はまったく無い。この人に教師免許を与えたのはいったい誰なんだ。責任問題だぞこれは。
「はよー」
ガラッ、とドアを開け入ってきたのは、さっきまで噂されてた赤髪ヤンキー鈴。
「鈴来たのかよ、珍しい」
来たのかよ、って言い方はどうかと思うのは僕だけ?
「なんか舞に呼ばれてな。アレ?舞は?」
悲劇のヒロインっぽく教師出てったよ
『やっほー鈴!』
アレェェェ!?
おかしいよね?いつのまに戻ってきたのさ。ってか、切り替え早ッ!!
『あ、そうだ翔兄!私宿題全部やったよ!ほら』
笑顔で言い、夏休みの宿題を先生に手渡す。
違うよね、それほぼ僕と流華ちゃんがやったよね。
「おーよくやった」
『じゃあ約束のデートしてくれる!?』
そういえばそんな条件だったんだっけ。彼女いるのにいいのかなぁ。
「って、お前コレなんか字違くね?教科によってバラバラじゃね?」
『ヤベッ!!』
「ヤベッ、じゃねぇだろ。なめてんのか」
……だからバレるって言ったのに。
『だってこんないっぱい1人で終わるわけ無いじゃん!!しかも最終日!』
あ、開き直った。
「溜め込むのが悪いんだろ。罰で今日お前居残り掃除な」
宿題のノートで舞ちゃんの頭を軽く叩き先生は言った。
『そんなのヤダー!!』
案の定、文句を言う舞ちゃん。いやいやと何度も首を振る。
「安心しろ、鈴もつけるから」
「ハァ!?冗談じゃねぇよ!なんでオレまで!!」
鈴は不満を素直に口に出し、先生の胸ぐらをつかむ。
普通なら修羅場なんだろうけど、そんなの日常茶飯事な僕等は誰も慌てない。それどころか、やれやれ、と騒いだり、またか…と呆れる始末。おわったなこのクラス。
「はなせ鈴。どうせ1Pもやってないだろ」
「なめんな!!宿題は、その……アレだ。夜な夜なやってきた鳩たちが『居残り決定な」
「最後まで言わせろォォ!!」
哀れに叫びながら、ブンブンと乱暴に先生を揺らす。
っていうか、どんな言い訳だったんだろ?ちょっと最後まで聞きたかった…。
『はぅ!!ダメだよ翔兄!そんな思春期の男女が2人で居残りなんておいしいシチュエーション!!』
「お前等は余程でかい事故がない限り、なにも起きねぇよ。」
両手を頭につけ、困った様な嬉しそうなリアクションをとる舞ちゃんに、先生は冷たくあしらう。
『だいたい私達以外にもやってない子いるんじゃない!?』
「アレ?青海来てないなぁー」
『シカトォォォ!?』
普通に話をそらしたよこの人。舞ちゃんが可哀想にみえてくる。
あ、ついでに青海はここにいない。堂々サボリ。学校には来たんだけど、教室にまでは来ず、なんか屋上に行ったみたい。
「ったくアイツは…。俺以外の授業じゃ真面目なくせに、なんでこんなに態度違うかねぇ?」
はぁ、とため息を吐き、心底面倒くさそうに先生は呟く。
(屋上にいるって言ったほうがいいのかな)
そんな僕の心境を悟ったかの様に、先生は視線を僕に向け
「青海どこに居んの?」
と尋ねてきた。僕は少し悩んだが、ここは正直に言う事にした。
「屋上か〜ダリィな」
先生は青海の居場所を聞いて、危機感まるでなしの声をこぼす。
「仕方ない。舞、お前ちょっと呼んでこい」
『はぁ!?寝言は寝て言って!翔兄の寝顔なんて萌えてあげるからVv』
「お前に萌えを語る資格はない」
『そんな事ないもん!アキバとメル友だもん!』
話ずれてる!!
アキバとメル友ってなに!?
「ほらさっさと行け。お前等仲良いだろ」
『激しく否定するけど、翔兄に貸し作るのも悪くない。ってことで行ってきます!』
舞ちゃんはそう叫んで、教室を出ていった。…いや、そんな生徒がバラバラはまずいじゃないか?だからD組は色々言われるんだよ。
「よし、厄介払い成功」
そういう意図か。マジで最悪だなこの教師。
「舞ィ〜!!ダメよそんな、屋上でアイツと2人きりだなんて!もしもの事があったら私…!舞を止めなきゃッッ!」
「幸希、あの女を捕獲しろ」
早退していいですか?
――――――――――――――
『全く、なんでこの舞様が…』
私はぶつぶつ文句言いながら、屋上へと来た。
アレ?そういえば屋上って立ち入り禁止じゃね?鍵かかってんじゃね?
ドアを見ると、鍵は綺麗に外されていた。
……ピッキングしたなアイツ。
『犯罪だろ、ったく』
ため息と共に呟いて、私はドアを開けた。
「うわ、眩しい〜!」
9月になったとはいえ、まだまだ暑いなぁ。これで風なかったら灼熱地獄だっつーの。
「え〜と、青海は…」
閣下(翔兄)の指令を守るべく、標的(青海)を捜す。広い屋上を見渡すと、丁度真ん中辺りに寝そべる者を見つけた。
「やりました閣下!ターゲット発見です!直ちに逮捕致します!!そして私はご褒美いっぱい貰うのさ★」
フフフ、これで今度こそ翔兄とデート&青海撃退をできる…!
「何言ってんだテメェは」
「うわぁ!!」
びっくりしたぁ!いきなり出てくんなや!!
「高梨青海!上からの命によりアンタを……って人の話を聞けェ!!」
ちょっとこいつムカつく!堂々と眠り始めたんだけどォ!!
「うるさい。人の安眠邪魔するな。襲うぞ」
……このマセガキめ。突き落とすぞコノヤロー。
「おい、勝手に寝るな」
『別にいいじゃん。アンタを連れて帰らなきゃ、私も帰れないし』
そう言って私は、青海の隣に寝転んだ。お、床温かくて気持ちいい♪
『ねぇ青海〜、帰ろうよ』
「帰ればいいだろ」
『だからっ…』
やーめた。何度言っても無駄だコイツは。
あ〜、風が心地好い。最高の昼寝スポットだね。こりゃ眠くなるわ。
『寝そうだぁ。でもそしたら翔兄との約束が…』
「翔兄翔兄うるせぇな」
『だって私の脳内はほとんど翔兄だもん☆』
「…………」
あり?青海黙ったぞ。私に原因あるコレ?
「……気に入らない」
ボソッ、と小さな声で呟いた。
『は?なんか言った?』
「別に」
なんだよ、気になるじゃん。それとも君アレか?秘密主義者ですか?シークレットですか!?
「──おい」
『んー?うわ!!』
ちょ、ちょちょちょちょっと!顔近い!!
『な、ななに?』
いつのまにか腕握られてるんですけど!!
何コレ?甘酸っぱい青春?授業サボって大人の階段のぼる?屋上でチューとか?ムリムリムリ!!!生憎私はシンデレラじゃないのさ!
「舞……」
『!!』
固まって声も出ないわたしに、どんどん近付いてくる。両腕をきっちり掴まれて、抵抗もできない。コイツこんな力あったんだ。この際仕方ない、おとなしくこの雰囲気に流されるか。この度舞は、ひとつ熱い体験を……!
『やっぱいやー!!』
ドゴォ!!!
『青海のエロ王子ィィィィ!』
私は青海を殴った後、そう叫んで屋上を出た。
ヤバイヤバイ!あの無駄に美形顔でアップはキツイってばァァ!!私だって乙女なんだから恥ずかしいよー!!
「痛ェ…」
頭を擦りながら、ゆっくりと起き上がる。なんてバカぢからだよ、本当にアイツ女か?
「おもしれぇ」
もっと寝てたかったけど、あの赤面に免じて戻ってやるか。
俺は立ち上がり、教室に向かうべくドアノブに手をかけた。力を入れて扉を開ける。
「…あれ?」
───開かない。言っておくけど、実は引くと開く扉だった、なんてオチはない。
「…鍵かけられた」
その後、30分かけ自力で脱出して、あの女を血祭りにあげたのは言うまでもない。
2学期編もよろしくお願いしますm(_ _)m
今回は少し恋愛要素入れてみましたが…どうでしょうか?夏休みも全然進展しなかった2人だから、2学期は頑張ってほしいですね!!




