第28回戦 双子従姉妹の来訪≪前編≫
◆第28話 ザ☆シンメトリー
『フフフ…人間はこうして滅亡してったのね。』
いや、滅亡してないから
『確かにこの暑さは…そう、まるで煮えぎった熱湯の湯気をギリギリで浴びてるよう……。』
変に生々しいし。
『いけない、このままでは皆共倒れだわ。早く、早く救援を……!』
そう言って、姉さんはフラフラと立ち上がり、受話器を取った。黙って見てると、姉さんの指がボタンをゆっくり押していく。1,1,0と……
110!!?
「ちょっとなに110番してるの!?」
『…はい…そうです……え?…ヘモグロビン?……はは、違いますよ!』
うわぁ!話の内容かなり気になる!!
「ああもう、いい加減にしてよ姉さん!!」
『あっ!!!』
僕はそう叫び、バカ姉から受話器をひったくる。だって警察だよ警察!!大事になったらどうするのさ!
「…いや、ホントすいません…え?暑さのせい?違います。もとからおかしいんです…はい……。」
目の前にいるわけでもないのに、ペコペコ謝る。なんで僕がこんな事を…。この人の弟に生まれてきてしまった宿命だな、きっと。
ガチャン、と少し乱暴に受話器を置く。なぜか僕がさんざん怒られたし。
『ペッパァーー警部!私達これから♪いいトコロ〜』
肝心の本人は、なんだか昔の某アイドルの歌をノリノリで歌ってる。とうとう壊れたか?いつか崩壊すると思ってたよ。―って違う違う。そうじゃなくて
「姉さん頼むから変な事しないでよ。」
『いいじゃん電話くらい』
「かける相手が問題なの!!」
僕が怒鳴ると、姉さんは頬を膨らませ、プイっとそっぽをむく。別に可愛くないし。
『チェッ。いいなぁ美奈ちゃん家は、長電話し放題〜!』
「ヨソはヨソ!ウチはウチ!」
『お母さんのケチ!!』
「我儘言うんじゃありません!って誰がお母さん!?」
ああもう!うっかりのせられた!!僕弟だよ?2つも年離れてるんだよ?
ハァーー、と盛大なため息を吐いた。恨みや呆れをこめて。
『ため息つくと幸せ逃げるよ?まぁそんな時は、ハッピーキューピット舞ちゃんが不幸な貴方に幸せを届……』
「殴るよ?」
なおふざけた事を言う姉さんを一刀両断して、…なんかまだぶつぶつ呟いてるけど、だいたい誰がキューピット?姉さんは、なれてせいぜいパチモンだよ。もういいや、害虫とバカな姉は無視にかぎる。
――――――――――――――
ピーンポーン
ソファに寝そべっていた私の耳に玄関のチャイムの音がとどく。
―むぅ、行くの面倒くさいな。
私は無視を決めこみ、クッションに顔をうずめた。体温より低い温度のクッションが心地好い。本気で動きたくないやコレ。
トントントン、ガチャ…
ほら、瑠璃が行ってくれた。あの子よくできた子ね〜、きっといいお嫁さんになれるわ☆
…ん?何も話し声が聞こえてこないけど、いったい誰が来て
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
『!!?』
い、今のって瑠璃の声だよね?あんな大声出すなんてめずらしい!
『…と、とと、うわっ!』
ドシンッ!!
『痛〜;』
瑠璃の声に驚いて、派手にソファから落ちてしまった。私は強く打った腰をさすりながら、声のした方を向く。
『瑠璃ーどした〜?ドアを開けたら目だし帽被った男とナイストゥミートゥーしちゃった?』
「で、ででででで出た!!」
『巨神兵が?』
「いいから窓の鍵全部閉めて!!」
私のボケに何ひとつ突っ込まず、バタバタと走り回る我が弟。家中の窓閉めてどうするつもりだ?
『ちょっと瑠璃。いったいなに……』
さすがにただ事じゃない気がして、口を開いた瞬間――
「「甘いね瑠璃!!煮すぎた砂糖並に甘いよ、カラメルになっちゃうぞ!?」」
聞き覚えのある息ぴったりボイス。
『まさか……!?』
驚いて後ろを振り向くと、そこに立っていたのは私の従姉妹(双子)。
「「久しぶりだね、舞ちゃん、瑠璃♪」」
見事なクローンが、笑顔で声を合わせそう言った。
新キャラ登場しました!双子の詳しい設定はまた次回★




