第13回戦 夏の夜のお約束≪後編≫
次回の続き。初、青海視点!!
『……ねぇ青海』
「なんだよ」
『どうやったらこうなるの?』
「どっかのバカ女がころぶ時さわやか王子を巻き添えにして、他の異端者等がそれに気付かない程マヌケだとこうなるんだ」
『不思議な道理だね〜。ひとつ勉強になった!』
「ああ、きっとテストに出るから覚えておけ」
『……で、どうする?』
◆第13話 怖さは後からくる
今の状況?さっき説明した通り。ようは俺たち二人は他の奴等とはぐれた。場所は海の前の砂浜。夜の海とか、かなり気味悪ィし。
『つまり迷子だね☆』
「どう考えたってお前のせいだろ」
『……青海、これは悲しい運命さ。運命とは人の力じゃどうにもならないの。だからね、誰のせいでもな──ぬにゃあ!!』
長々と責任転嫁を語る前に、鳩尾に一発いれた。っていうか、『ぬにゃあ』?どんな叫び声だよ。
『ぐ……青海。表情変えずに殴るとは非道なり!舞ちゃんその内泣くからな!?』
「うずくまって泣いてろ。爆笑してやるから」
『サド大魔王ー!!』
なんか魔王から昇進してるし俺。
『ああ、もうヤダ!私より幸せな奴みんな死ね!!』
何言ってんのコイツ?とうとう狂ったか?
『そして迷子になってる子達!今だけ同志になろう!!』
どんなキャンペーンだよ。
「……とにかく帰るぞ。はぐれたって言っても、旅館戻れば居るだろ。」
『バカね青海。迷子になった時は動かないのが1番なんだぞ?』
なんで帰るルート知ってるのに動かないんだよ。
それとその『だぞ?』ってなんだよ。●ッチの南ちゃん気取りかコノヤロー。
『って事で座った座った!今なら舞様の隣に居させてやろう』
「じゃあ俺帰るから」
バカ女を置いて旅館に向かう。こんな奴の隣にいたら、なんかウイルス感染しそ──
「のわっ!」
『ヤーダー!こんな暗い所に乙女を置いてくなぁ!!』
とりあえず乙女は人の足にしがみつかねぇ。
『星がきれいだねェ』
「そーですね」
『夜の海もなかなかだねェ』
「そーですね」
『あ、見て!満月だぁ!』
「そーですね」
『ウザイんだけどォ!!』
結局舞と居る俺。テキトーに相槌してたらキレた舞。
もうコイツ海に捨てて、俺だけ帰ろうかな?もちろん這上がれない様に重りつけて。
『……ねぇ私達今2人きりなんだよね?鳥肌たつよ』
「気が合うな、俺もだ」
夜のせいか、波の音以外まったくもって静寂。それに俺と舞の声が響く。
『そーゆー雰囲気になっても手ぇ出してこないでよ、アンタの事嫌いだから』
「そーゆー雰囲気って、どーゆー雰囲気だよ」
『なんていうか、このままキスしちゃう?海で甘酸っぱい青春しちゃう?みたいな』
「そんな間違い起こすの、あの変態女ぐらいだ」
『間違いってなんだ!!
っていうか、変態女って?岩本田野宮・クレーシュリィさんの事?』
誰だよ。そして何人だソイツ。
「あの…なんだっけ名前。あ、思い出した。葉月 流華だ」
『流華の事か!そういえば何気にフルネーム出たの、本編じゃ初めてだね!』
本編とか言うな。
「……お前さ、アイツ―翔の事好きなわけ?」
『当たり前じゃん』
俺の唐突な質問に、ムカつくぐらいの早さで即答する舞。闇に目が慣れ、強い月光もあり、お互い表情は見えてるだろう。
『そーいえばアンタ、翔兄の事毛嫌いしてるよね。なんで?』
キョトン、とした顔で聞いてくる。
「俺は―……」
ジャリ、
「『?』」
突然、背後から砂を踏む音がなる。
そういえばここ、昼間聞いた噂の場所……。ジャリ、ジャリ、ジャリ──
『お、おうみ……!』
「ひっつくな」
『だ、だって未知との遭遇しちゃうよ!やっぱり挨拶は全国共通のHELLO?でも慣れ慣れしいって思われる!?』
知るか。だいたいなんで英語なんだよ。
「幽霊なんて非科学的なモノ…」
そう言って振り向いたら
「見ぃつけたぁ〜」
『ギャァァァァァァァァ!!って、アレ!?』
「なに迷子になってんだよお前等。ほら、帰るぞ」
「……翔」
そこにいたのは、俺のワースト5には入るだろう、高橋 翔だった。
『翔兄ィ〜!怖かったよォ!魔王といても、全然頼りにならないんだから!』
足にしがみついてきたのは、何処のどいつだ。
『よし、旅館へゴー!!』
なんだかんだで、俺達の迷子タイムは終わった。
『旅館、到着!!』
「舞ー!!心配したよ〜!!」
「何処にいたんだよ舞!」
着いた途端、舞に抱きつく葉月 流華と鈴。目に痛いから、詳しい解説はできない。ってか、したくない。
「良かった、無事戻ってきて」
「幸希。いや、なんか翔が
「あ、やっぱり自力で戻ってきたじゃんコイツ等」
……は?
『アレ?翔兄!?』
教師にあるまじき台詞を吐いて、奥から出てきたのはさっきまで側にいた張本人。
「まったく、中学生にもなって迷子になるなよなぁ。流華なんか探し行くってうるさかったんだぞ?」
…そういえば、いつのまにかあの翔がいない。
「……翔。お前ずっとここにいたのか?」
「ん?ああ。青海なら道分かるだろうと思って。めんどくさいとかそういう理由じゃないからね?信用してたんだからね?」
『え、じゃあさっきのって──?』
「………………」
夏夜の不思議な体験