~自由なる錬金術師~
自前のコーヒーカップにこだわりの紅茶を注ぎ、おやつにとワッフルを用意した僕は自らの師であり育て親でもある方の部屋へと歩みを進めた。
ちょうど僕が扉を開けようとした瞬間、爆発音が響き渡り部屋から一人の男が転がり落ちてきた
「・・・なにをなさっているのですか」
俺はぐちゃぐちゃになった部屋を片目で見ながら『ああ・・どうせ僕がこれを片付けることになるんだろうな』と思いながら世間一般では【変人】と呼ばれる男をじろりと睨みつけた。しかし、この百人中99.9人が【この世界に必要ない奴】と思わせる男は気にも留めない。
「あん? ああ・・お前か、見ればわかるだろう」
俺はこの【世界で一番権力を握らせてはならない男】を横目で見ながらどのように片付けるか考えながら言った
「見てわからないから言っているのです」
それを聞くとこの年齢不詳の男はふふんとどこからか椅子を持ってきて偉そうにふんぞり返った
「まったくお前は何も知らない赤子の様だな。まあ、この慈悲深き吾輩がお前の平凡かつ単純な質問に答えてやろう。この部屋を見て何か思いつかんかあ?」
俺にはただ部屋がぐちゃぐちゃになっているようにしか思えんが
「バカ者、匂いだ。匂い」
匂い?この部屋は薬草だかなんだかでいつもすごいにおいだから全くわからん
「ふう~、やはりお前は馬鹿だな。馬鹿」
貴様以上の馬鹿はいない
「マンゴドラの匂いだろうが。【マンゴドラン】を作っておったのだ」
「マンゴドラン・・・確かそれは胃腸薬では?」
俺が少し前に覚えた知識を言うと奴は少し顔をゆがめた
「ああ、このごろ腹の調子が悪くてな」
それはおそらく俺が趣味の一環として奴の紅茶に入れていたそこらへんに落ちていた意味のわからん粉のせいだろう。奴はそんな事とは露とも知らず話しを続けた
「それで作っていたのだか配合のやり方を間違えたのかうまくいかなくてな」
それもおそらく俺が奴の量りを少しずらしているからだろう。ばれるとまずいから後で直しておこう
「まぁ、あなたは薬剤師ではないですからね」
そう言いながら部屋を片付けようと部屋の中に入ろうとした
「いや、まて」
片手で俺を止めると奴はおもむろに大量の幅十センチほどのかみを取り出した。それにはそれぞれ円が書かれており中には小さく呪文のようなものが書かれている
「全てをつかさどる六つの大原子よ、その力の片鱗をここに表せ」
そう言いながら奴は紙を部屋の中にばらまいてゆく。そして全ての紙が部屋の中に入るとあやしげな紫の光がたちこめる。
俺はまぶしくて一瞬目を閉じるてしまった。目を開けるとさっきまで散らかっていた部屋が完璧に片付いていた
「・・・・いつもながら見事なもので」
こんなにあからさまにしなければもっといいのだが・・・・
「そう言うな。吾輩は人が驚く顔を見るのがすきなのだ」
何たる悪趣味・・・まあ、俺も人のこと言えないが
「さて、吾輩は気分転換に日向ぼっこしながら本でも読むかな」
そう言って奴はルンルン言いながら玄関へと向かおうとしている
「お待ちください、ニコラスさん」
そうこの人が俺の師匠、錬金術師ニコラス・フルメルなのである