不老不死になるということ
セレティナはアルカナ王国の聖女だ。
なぜそのような呼び名で呼ばれていたのかと言うと、死者を甦らせる力があるからだ。
方法は簡単。
死者にセレティナの血を一滴与えるだけだ。
それだけで死者は生前の姿のまま生き帰る。
まさに神の所業だ。
セレティナの噂を聞きつけて、アルカナ王国には人が殺到した。
それからセレティナは、たくさんの人間を甦らせた。
国民は『死』という概念がなくなり、喜びと平穏を手に入れることができた。
しばらくアルカナ王国は平和なときを過ごした。
だが、困ったことが起こった。
セレティナが最初に生き返らせた人間が、そろそろ生きるのにも飽きてきたから死にたいと言いだしたのだ。
それで、毒薬を飲んだり首を吊ったりしたのだが、どんなに頑張っても死ねないのだ。
人間とは極端で、今までは死なないことに幸福を感じていたのだが、死ねないと分かった途端に不幸だと感じてくる。
この『生』はいつまで続くのだ?
終わりはないのだろうか?
永遠に生き続けなければならないのか?
そんなことを考えると、恐怖で夜も眠れなくなってしまう。
国民はそのうち、セレティナを責め始めた。
「なぜ私たちを生き返らせた!」
「この命はいつまで続く!」
「死という安らぎを得られるときは来るのか!?」
あれだけ死ぬことを怖がっていたくせに、こんなことを言い出す国民に、セレティナは呆れてしまったようだ。
だが、アルカナ王国の王も国民と同意見だった。
王は今まで聖女と讃えていたセレティナを捕え、歴史に残る悪女だと罵り、拷問した。
「言え! 私たちはどうやったら死ねる!?」
「死ぬことは不可能です。わたくしの血を飲んだ者は、永久に生き続けます」
王は目の前が真っ暗になった。
(聖女だと思った女が稀代の悪女だった……! 国民のほとんどはこの女の血を飲んでいる……。かくゆう私も……! と言うことは、私たちは永久に死ねないのか!?)
怒りに燃えた王は、思うままにセレティナを痛めつけた。それでも怒りが収まらなかった王は、セレティナの首を絞めた。
「やめて……ください。わたくしが死んだら制御が効かなくなる……!」
「どういうことだ!?」
「わたくしが……あなた方の飢えと渇きを抑えているのです……」
セレティナの言っている意味が分からない。
それよりも、この女に対する憎しみの方が強かった王は、セレティナの首を絞め続けた。
その結果、セレティナは死んでしまった。
セレティナの亡骸を茫然と見つめていた王は、妙な渇きに気が付いた。
「なんだ……? 腹が減った……。腹が……」
肉が食いたくて仕方がない。新鮮な肉が……。
激しい飢えに喉をかきむしっていたら、新鮮な肉が目の前にあることに気付いた。
セレティナの亡骸だ。
人道的にいけないと思いつつ、激しい飢えに耐えられなかった王は、結局セレティナを喰べてしまった。
それから城を出ると、国民たちがお互いを喰べようと気の狂った争いを繰り広げていた。
王は思った。
(そうか……。セレティナは屍人のリーダーだったのだ。彼女が私たちを操って、本能を抑えていたのだ。リーダーを失った今、私たちの運命は……)
それが王の最後の思考だった。
理性が崩壊した王は、本能のままに周りの屍人に喰らい付き、その肉を貪ったのだった。
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