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不老不死になるということ

作者: 青空爽
掲載日:2026/05/08

 セレティナはアルカナ王国の聖女だ。

 なぜそのような呼び名で呼ばれていたのかと言うと、死者を甦らせる力があるからだ。

 方法は簡単。

 死者にセレティナの血を一滴与えるだけだ。

 それだけで死者は生前の姿のまま生き帰る。

 まさに神の所業だ。

 セレティナの噂を聞きつけて、アルカナ王国には人が殺到した。

 それからセレティナは、たくさんの人間を甦らせた。

 国民は『死』という概念がなくなり、喜びと平穏を手に入れることができた。

 しばらくアルカナ王国は平和なときを過ごした。

 だが、困ったことが起こった。

 セレティナが最初に生き返らせた人間が、そろそろ生きるのにも飽きてきたから死にたいと言いだしたのだ。

 それで、毒薬を飲んだり首を吊ったりしたのだが、どんなに頑張っても死ねないのだ。

 人間とは極端で、今までは死なないことに幸福を感じていたのだが、死ねないと分かった途端に不幸だと感じてくる。

 この『生』はいつまで続くのだ?

 終わりはないのだろうか?

 永遠に生き続けなければならないのか?

 そんなことを考えると、恐怖で夜も眠れなくなってしまう。

 国民はそのうち、セレティナを責め始めた。


「なぜ私たちを生き返らせた!」

「この命はいつまで続く!」

「死という安らぎを得られるときは来るのか!?」


 あれだけ死ぬことを怖がっていたくせに、こんなことを言い出す国民に、セレティナは呆れてしまったようだ。

 だが、アルカナ王国の王も国民と同意見だった。

 王は今まで聖女と讃えていたセレティナを捕え、歴史に残る悪女だと罵り、拷問した。


「言え! 私たちはどうやったら死ねる!?」

「死ぬことは不可能です。わたくしの血を飲んだ者は、永久に生き続けます」


 王は目の前が真っ暗になった。


(聖女だと思った女が稀代の悪女だった……! 国民のほとんどはこの女の血を飲んでいる……。かくゆう私も……! と言うことは、私たちは永久に死ねないのか!?)


 怒りに燃えた王は、思うままにセレティナを痛めつけた。それでも怒りが収まらなかった王は、セレティナの首を絞めた。


「やめて……ください。わたくしが死んだら制御が効かなくなる……!」

「どういうことだ!?」

「わたくしが……あなた方の飢えと渇きを抑えているのです……」


 セレティナの言っている意味が分からない。

 それよりも、この女に対する憎しみの方が強かった王は、セレティナの首を絞め続けた。

 その結果、セレティナは死んでしまった。

 セレティナの亡骸を茫然と見つめていた王は、妙な渇きに気が付いた。 


「なんだ……? 腹が減った……。腹が……」


 肉が食いたくて仕方がない。新鮮な肉が……。

 激しい飢えに喉をかきむしっていたら、新鮮な肉が目の前にあることに気付いた。

 セレティナの亡骸だ。

 人道的にいけないと思いつつ、激しい飢えに耐えられなかった王は、結局セレティナを喰べてしまった。

 それから城を出ると、国民たちがお互いを喰べようと気の狂った争いを繰り広げていた。

 王は思った。


(そうか……。セレティナは屍人のリーダーだったのだ。彼女が私たちを操って、本能を抑えていたのだ。リーダーを失った今、私たちの運命は……)


 それが王の最後の思考だった。

 理性が崩壊した王は、本能のままに周りの屍人に喰らい付き、その肉を貪ったのだった。

 

ここまで読んでくださりありがとうございました。

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