日常のヒトコマ
ネトゲという言葉が分かる人は楽しめる?かと思います。
分からない人には少し楽しみにくいかもしれません。
ガールズラブというカテは入れてますが過激な表現はありません。
私(梶本ツバサ)と同居人(シャルロット)やネトゲ仲間との日常をお楽しみください。
「ごめ、ちょ離席」カタタっとチャットを打ち込む。
「あいあい」「いてらー」等、ネット世界からリアクションが返っているようだが全て見る間もなくディスプレイの電源だけを切る。
ちょうどダンジョンを回り終えたところで助かった。
でなければ戦闘パーティに穴を空けることになるからだ。
リアル世界では仕事用の携帯がサイドテーブルでやかましい音を立てている。
時刻は23時。夜の街はまだ活気にあふれていることだろう。
それゆえに、ちとイヤな予感がする。
「何?トラブル?」
「あ、梶本さん。すみません今電話大丈夫ですか?」
「大丈夫だから出てんだけど?」
「すみません。実は常連の石上さんなんですが、どうしても梶本さんに店に出て欲しいみたいで・・・」
「ヤだよ、もう遅いし」
「そこ、何とかなりませんかねぇ。出てくれたらボトル入れるのもやぶさかでないと仰るもので・・・」
あのオヤジもう少し羽振り良ければ愛想してあげてもいいんだけどね
「そのボトル、鏡月だったら怒るからね」
「出てもらえるんですか?!」
「どうせもう私のレクサスこっちに寄越してるんでしょ?」
「バレてましたか」
ってことはあと10分もないか。メイクだけ適当に見れるようにして髪と服はあっちで何とかしよう
「バレバレ。どうせショウ君でしょ?彼、運転ヘタっぴだからあんまり私の触らせないでよね」
「すみません、彼くらいしか手が空かなくて」
「今日、入ってるんだ?」
「ええ、それはもう。金曜日ですから」
「髪やれる子いるよね?着いたらすぐ出来るようにしておいて。あと服は私のストックから1着出しといて」
「はい、大丈夫です」
「色、カブらないの出しなさいよ?」
「承知してます!」
「店、入ってるんだったらあなたもボーイの真似事くらいしておきなさい」
「はい、ではお待ちしてます」
クラブオーナーにしていまだ半現役。
先代からのご指名で何だかんだとこの歳まで(断じて30は越えていない)この業界の人。
たまに我侭な古参の客の要請でもない限り店には出ず、普段は事務処理や経営指南。
お気楽な暮らしではある。
そのお陰で割と暇な時間を得た私はネットゲームに興じていた。最初は割りと軽いモノからだったが。
今やっているのはいわゆるMMORPGというヤツだ。いい歳こいてファンタジーもないと思うかもしれないがコレがなかなか面白い。服飾スキルを磨いて着飾ったり、ネット上で募ったプレイヤーで協力してデカいドラゴンを倒したり。生活に冒険に戦闘にと、まさにファンタジー世界の箱庭。
あ、今日店出た分を日払いにして帰りにWEBマネー買って新しく実装されたガチャ少しやろう・・・
適当に(どうせ薄暗い店内なので細部までは見えはしない)メイクを整え、勤怠表に目を通す。
金曜だというのに中々ナメた出勤率である。もう少し『女の子』を増やすべきか少し悩むところではある。
そうこうしているうちに迎えの車が到着する。
「どれ、ひと稼ぎするか」
誰に言うでもなくひとりごちて上着を引っ掛けて玄関を出た。




