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あの時、私は  作者: あき
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第8話 原子爆弾

あみと萌夏が休んで20分ほど経った。あみの表情が少しだけだが、落ち着いてきた。

萌夏が顔を覗かせる。

「あみちゃん、落ち着いた?」

あみが少し微笑んで答える。

「うん、ありがとう。もう大丈夫。」

そういった後、あみは周囲を見回して萌夏に質問した。

「そういえばここは何が展示されているの?」

萌夏が優しく答える。

「ここはね、広島の街をあんな酷い姿に変えた元凶、原子爆弾について展示されているの。」

そう言って萌夏は立ち上がりあみの手を引いた。

「案内するね。原子爆弾の模型がこの先にあるの。」

あみは再び覚悟を決めて立ち上がる。

「うん。私の大好きな街と人をあんな酷い目に合わせた原爆がどんな物かしっかり見る。案内して萌夏ちゃん。」

2人は再び歩き始め、ついに原子爆弾の模型と対面した。

あみは目を見開いて模型を眺める。

「これが原爆。私達を傷つけて大切なものを奪った全ての元凶。」

あみの顔は少し怒っていた。その隣で萌夏が説明する。

「この爆弾ね。広島の他にも長崎にも落とされているの。しかも形が少し違うの。」

「え、広島だけじゃないの!?」

「そうだよ。広島に落とされた僅か3日後の8月9日。同じような地獄が長崎にも広がっていたの。」

あみは怒りの口調で答える。

「酷い、アメリカはなんて国なの!!」

そんなあみをみて萌夏は言葉を続ける。

「でもね、日本も同じものを作ろうとしたんだよ。失敗しちゃったけどね。」

その言葉を聞いてあみは驚いた。

「え、日本も作って使おうとしたの?」

「そうだよ。もし先に作っていたら私達が取り返しのつかないことをした加害者になっていたのかもしれないね。」

萌夏の言葉を聞いてあみは少し動揺する。さっきまで怒っていたが、日本も同じことアメリカにしようとしていた。その事実に驚きが隠せない。

萌夏が続ける。

「戦争って何なんだろうね。いろんな事実を知ると完全な被害者も加害者も存在しないの。何が正しいのか分からなくなっちゃう。そしてそれに多くの人が巻き込まれて殺されちゃう。何でそんな酷いことを何回も繰り返しちゃうんだろ。」

あみは萌夏を呆然と眺めていた。そんなあみを見て萌夏は慌てた。

「あははは、ご、ごめんね!少し喋りすぎちゃった。」

萌夏は手を合わせてあみに謝った。

「う、うん。」

あみは少し戸惑っていた。

萌夏が強引に空気を変えようとする。

「あみちゃん、次は原爆から生き残った人の証言を聞いてみる?展示とはまた違った学びがあるんだよ。」

「え?う、うん。聞きたい。」

「よし、それじゃもう少しで始まるから。早く行こうか。」

萌夏はあみの手を握ると、被爆者の体験談を聞きに会場に向かった。


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