第6話 資料館
あみは萌夏に連れられて資料館に入る。入り口はとても広く開放的な空間が広がっていた。
萌夏が受付に向かって足早に歩き出す。素早く受付を済ませるとあみに向かって振り向いて、顔を動かしてこっちだと伝えた。
あみは萌夏について行った。
「ねえ、私は受付しなくていいの?」
あみが萌夏に尋ねると、
「一緒に済ませたから大丈夫だよ。ほらこっちだよ。」
あみが展示コーナーの入り口に入ると、そこは昔の広島の街並みを紹介するコーナーにだった。自分の住んでいた街が展示されている。あみにとってはどこか不思議な感覚だった。あみは街のことを萌夏に話す。
「私が住んでいた街だ。あそこにはお店が集まっていて、この道は学生さんが多くて。」
あみは嬉しそうに街のことを萌夏に教えていた。そんなあみを見て萌夏は、
「あみちゃんは本当に広島が好きだったんだね。」
「うん!だってずっと住んでいたもん。思い出も沢山あるし、人も優しかったんだ。」
あみのそんな様子を見て萌夏は、
「あみちゃん、引き返さない?ここからはあみちゃんにとっては見るのが辛いものが続くんだけど。」
あみは、萌夏の不安そうな顔を見て答えた。
「ううん、大丈夫。気を使わせてごめんね。どんな現実でも私は頑張って受け止める。私はあの時、広島で何が起きたのか知りたいの。自分のためにも。」
あみの目は覚悟に満ちていた。萌夏はそんなあみを見て覚悟を決める。
「分かった。でも無理だけはしないで。」
2人は次のコーナーの入り口を見る。そこは薄暗く、どこか不穏な雰囲気が漂っていた。
ここからは原爆で地獄に変わり果てた広島の記録が待ち構えている。
あみは深呼吸をすると再び歩み始める。
萌夏は心配そうな顔をしつつも、あみの背中を追いかけた。
前に進むほど、あみの周りを黒い闇が覆ってきているように萌夏は見えた。