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あの時、私は  作者: あき
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第13話 玲奈と明

玲奈と何とか生き延びた美波はその後、孤児施設に入り戦後を生きていた。

美波が廊下を歩いていると玲奈が声をかける。

「お姉ちゃん、どこ行くの?」

玲奈は10歳、美波は15歳になっていた。

「ああ玲奈か。今からね、近くの工場に面接に行くの。」

「そうなんだ。頑張って。私は学校に行ってくるから。」

玲奈は無邪気にそういうと走って学校に向かった。

玲奈が去ると美波の表情は暗くなった。実は美波は面接に何度も落とされていた。

被爆者であることが原因で、原爆症がうつると言われたり、長く生きられる保証がないなら雇う意味がないなど心無いことを言われていた。

「お姉ちゃん、私悔しいよ。原爆になんて合わなかったら普通に生きられたのかな?」

美波は空を見上げて、あみに向かって言った。

その後の美波は被爆者であることを隠して役所に就職をした。幸い美波には原爆症の影響は無かったため、ばれることは無かった。

美波はあの日のことを封印しながら戦後の日本を生き抜いていった。

そして時が流れて美波が20歳になった時だった。役所で今日も仕事をこなす美波に話しかける人がいた。

「美波さん、今日も綺麗ですね。仕事終わったら一緒にご飯に行きましょうよ。美味しい所見つけたんですよ。」

そう声をかけるのは美波の後輩の明という男だった。最近美波が働く役所に転職してきた、どこかお調子者の男だ。年は美波と同じだった。

「はいはい。時間があったらね。ほらこの仕事やっといてよ。」

美波は呆れながら明に言った。

「分かりました。ちゃんと出来たら一緒ご飯に行ってくださいよ。」

「分かったからもう。」

そんな美波を陰で見ている人がいた。玲奈だ。

玲奈も美波と同じ役所に就職したのだ。玲奈はまだ新入社員だ。

昼休みになると玲奈がニヤニヤしながら美波の方にくる。

「み、な、み、せ、ん、ぱ、い。」

「どうしたのよ玲奈、気持ち悪いわね。」

「えー、ひどいよお姉ちゃん。それよりさ、明さんとはどうなのよ。」

それを聞いた瞬間美波が驚いて玲奈に言った。

「ちょっと!!何で見ていたのよ!!」

「いやー、お二人ともいい感じだなって思って。それでさ、お姉ちゃんどうなの?」

「ただの後輩。ほらあっちいきな。しっしっ!!」

美波は玲奈を手で払い除けようとすると、

「嫌だ!!今日は絶対に明さんとご飯に行くこと!!お姉ちゃんも気になっているんでしょ?」

そう言い合いしていると明が来た。

「美波さん!!仕事片付けました。あら、玲奈ちゃんも一緒じゃん。」

明を見た玲奈ははしゃいで言った。

「あら美波先輩、明さん約束通りお仕事を片付けましたよ?これは先輩も約束を守ってご飯に行かないといけませんね。」

「え!?玲奈ちゃん何で知っているの?」

「私に知らないことはありません!!それじゃまたねー。」

そう言うと玲奈は足早に去っていった。

「もう、どうして私の周りには変な後輩しかいないの?」

美波は頭を抱えていた。

そんな美波をよそに明が言った。

「それより美波さん、ちゃんと約束守ってくださいよ。」

「はいはい、分かりました。」

その後美波は明とご飯に行った。

明の猛烈なアプローチもあり、次第に仲良くなっていった2人は付き合うことになった。

その後も時は流れて2年後、明は美波との結婚を意識していたが、美波はどこか踏み出せないでいた。

「美波さん、そろそろ俺たち結婚しない?ご両親に挨拶も済ませたいんだ。」

明がそう言うと美波は俯いて言った。

「あのね明さん、隠していたことがあるの。」

「え?どうしたの美波さん。」

美波は膝の上で両手を握りしめて、重たい口を何とか開いた。

「ずっと隠していてごめんなさい。実は私ね、被爆者なの。」

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