表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/168

第14話 幕間2

──どこか、薄暗い部屋。


石造りの天井から吊るされた観測装置が、低く波紋のような音を響かせていた。 壁には計器が並び、脈打つように微弱な光をたたえている。


「う─ん……なんか、ざわざわしてる感じ……」

水晶球をのぞき込んでいた少女が、首をかしげた。


つややかな金色の髪に、長く尖った耳。 年若く見えるが、瞳の奥には、よわいの定かならぬ深い光が宿っている。 ──エルフだ。


深い森のような緑の瞳が、ふと揺れた。


「またか? 二度目だぞ」

書類の束を抱えた男が、入り口から現れた。 眼鏡をクイと上げ、鋭い視線を少女に向ける。


「うん……でもね、今回はちょっと違うかも」


少女は目を閉じ、小さな声を聞き逃すまいと耳を澄ませる。 室内の装置が発する振動が、まるで心音のように重なっていた。


「それで? 何か悪い兆候でもあるのか」

男の問いに、しばし沈黙が流れ──やがて、ぽつりと答えが落ちた。


「……う~ん……どうなのかなぁ。精霊たちが、“すごい子がいる”って言ってるの」


「すごい子、だと?」


男が眉を寄せる。その言葉が意味するものを、軽々には受け取れない。


「えへへ~、ごめんね。あたしにもよくわかんないの」


肩をすくめて、間延びした声で笑った。


「よくわからん、では困る。精霊の動きは、契約と供給に直結する問題だ」


男は一歩近づき、さらに問いを重ねる。


「来月の供給量は安定しているのか?」


「うん、大丈夫。精霊さん、“これからもよろしく”だって~」


両手で丸をつくり、ふわふわと微笑んだ。


男はため息をつきながらも、少女をじっと見つめる。 彼女の言葉はいつも曖昧だが、奇妙なほどに外さない。


(……何かが起きている? 精霊がここまでざわめくなど、まるであのときの……)


少女の視線が、水晶球へ戻る。


「なんかこう……まぶしくて、ぽかぽかしてて…… 守りたくなる感じ? “心があったかい”って……たぶん、そんな感じ」


水晶球の奥で、姿なき声が揺らめくように響いた。


少女の耳がわずかに動く。姿は見えない。けれど、そこには確かに何かの存在があった。


──“見つけた”

──“あったかい光”

──“今度こそ、伝わるといいね”


聞こえてくる声は、どこか遠い記憶を呼び覚ますようだった。 少女は胸に手をあて、そっと微笑む。


「……なんか、ちょっと……わくわくしてきたかも」


その呟きに応えるように──

水晶球の奥に、一筋の光が静かに走った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ