ナーシャお嬢様の不安
今日のナーシャお嬢様は、心ここに在らずで落ち着かない様子です。
この間家族になった白猫のマシロと、猫じゃらしもどき? で遊びながらボーッとしているお嬢様。
猫じゃらしもどきをマシロにとられても、気づく素振りがない。
余談だけど、白猫に名前をつけるとき、お嬢様は「白猫だから、しろ! はひねりが足りないかな? マシロ! にしよう」て言っていた。
白猫だからマシロね、繋がりが分からない!
異国言語で白という意味なのかな……。
猫じゃらしもどき、もお嬢様が公爵家の庭でみつけた雑草なんだけど、そんな風に名前をつけてマシロと遊ぶ用に使い始めたんだよね。
「いつもの奇行はどうしたんですか?」
お嬢様が静かだと落ち着かない。
「うーん、サリュ君……聞いてもいい?」
いつものお嬢様であれば、「奇行って酷くない!?」とかいいそうなものなんだけど……。
思った以上に重症なのかな。
「はい。なんですか?」
ナーシャお嬢様は、ソファに座ってテーブルに置いてある甘菓子を食べながら、バルコニーをみる。
「私って、家からほとんど出ないでしょ? 外の世界には、私たちを襲う化け物っているのかな……?」
僕たち人のことを襲う生き物のことかな?
「化け物ではないですけど、北の雪原や、東の帝国よりも向こう側の砂漠、南の海、西の王国との間にある大森林とかに、巨獣と言われている、大きな動物がいると聞いたことはあります。
ですが、王国騎士団や、巨獣狩り組合の人達が狩りをするので、襲われることはないと思いますよ?」
父上が、王国騎士団には巨獣狩り専門の『巨獣討伐隊』という部隊があるんだと前に話ていたなぁ。
西の王国にはいま、公爵夫妻が公爵家の副騎士団長率いる騎士団の人達と一緒に行っているくらいだし。
騎士団の人間がいれば、通れるくらいには安全なんだと思うけど。
「げっ……。マシロのしっぽが二本あることに気づいてから、ずっとあやしいと思ってたんだけど、ホントにいるんだ化け物……」
お嬢様が身震いする。
「巨獣は人が住んでいる場所には出ませんよ。出るのは森とか、大自然の場所です。だから安心してください」
あと巨獣は化け物ではなくて、普通の動物だと思います。
「でも、そんな動物がいるって知ったら、余計に不安だよーっ!」
ナーシャお嬢様はマシロを抱えて縮こまった。
マシロは突然のことに「ミギャッ!?」と鳴き、お嬢様の腕の中でもがいている。
少しだけマシロに嫉妬するよ……。
「大丈夫ですお嬢様。もし仮に、万が一のことがあれば、僕がお嬢様を抱えて逃げますから」
王都の貴族街に巨獣が出るなんてことは、多分ないと思うけど。
「……巨獣を倒すって言うんじゃないの!?」
そう言いたいのは山々ですが、僕はまだ騎士にもなれていない、半人前の人間です。
巨獣を倒そうとした場合、逆にお嬢様を危険な目に遭わせる可能性の方が高い。
「将来に期待してください」
今の実力だと、巨獣には勝てません。
「大人になったら、サリュ君が『君を守る』って言ってくれる可能性が微レ存!!?」
お嬢様がマシロを手放し、ソファの上で悶絶しはじめた。
手で顔を隠し何かを想像しているみたい。
不安がなくなったのなら良かったです。
お読みいただきありがとうございました( . .)"