表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/9

外出したいナーシャお嬢様【続き】

悲報。ナーシャお嬢様とはぐれましたっ!


手を握っていたのになんで!


騎士だって沢山、まわりで護衛してくれていたのにっ!?


騒ぎになるとよくないからと、騎士たちは目立たないようにお嬢様の捜索を始めた。


責められないのが、僕はまだ子どもだと言われているみたいで辛い。




お嬢様が居なくなったのは、平民街と貧民街の境目を歩いているときだった。


「猫だ!」


そう、お嬢様は猫を見つけて、僕から離れて人混みに紛れ込んでしまったんだ!


お嬢様は小さくて、すぐに居なくなってしまった。


平民の服装をしているから誘拐されることはないと思うけど、貧民街に入ってしまっていたらどうなるか分からない!


早く探しださないと!!


周囲を見渡す。平民街には詳しくない……。だけど見覚えがある。というか、ここは僕と母さんが仕事をしていた酒場の近くでは?


酒場に行けば何か分かるかも!




夜になりかけているのもあって、酒場は常連のお客さんたちで賑わっていた。


「……っ女将さん! 猫を追いかけた小さな女の子、みませんでしたか!?」


忙しそうに料理を運んでいる女将さんに、酒場の入口から叫ぶ。


「サリュシス君? 久しぶりじゃないの! 元気か心配してたのよ。何かあったの?」


女将さんは動きをとめて、僕のところにくる。


「白金色の長い髪をした女の子を探しているんです……、不注意で見失ってしまって」


何の情報も得られなかったらと思うと焦燥感が募る。


「女の子ねぇ……」


女将さんが目をつむって、しばらく沈黙した。


お願いだから、情報をください!


固唾(かたず)を呑んで女将さんをみる。


「ああ! あの子かしら。走って入って来たと思ったら、裏口からでていってしまって何事かと吃驚(びっくり)したのよ?」


酒場の裏口! その外には僕と母さんが暮らしていた家があるけど、まわりは貧民街だ!


「ありがとう! 今度また会いにくるね!」


「いいえー。そのときはまた舞台に立ってくれると嬉しいわ!」


「分かった! 女将さんまたね!」


酒場の中を通って裏口から外にでる。




裏口からでたら、そこには未知の空間が広がっていた。


ここ、本当に僕が住んでいた家の外?


崩れそうな塀の上に猫。家の入口にも猫。左を向いても、右を向いても猫、ネコ、ねこ!


いつから僕の家は猫の家に……?


お嬢様は猫を追いかけていたから、家の中に入っているのかも。


猫を踏まないように、おそるおそる古びた家の扉を開けて中に入る。


まって、本当にここは僕の家だった?


家の中にも猫が沢山。幻じゃないよね……?


疑心暗鬼に陥りながら、寝室だった部屋の前まできて、中から灯りが漏れていることに気づく。


寝室の扉を開けるとそこには


「ナーシャっ!!」


良かった! 無事だ! どこにも怪我はなさそう?


他の猫より一回り大きい白猫と、小さい猫たちに()もれているお嬢様がいた。


勢いでお嬢様を抱きしめる。


「心配した! 手を離してごめん!」


気が抜けて、お嬢様を抱きしめたまましゃがみ込む。


手を離した後悔が押し寄せた。


例えお嬢様が(みずか)ら離れたんだとしても、僕はお嬢様を捕まえておかないといけなかったんだ。


大事(だいじ)なくて本当に良かったっ!


「サリュ君、サリュ君大丈夫?」


能天気なお嬢様の声が耳元で聞こえる。


何も分かって無さそうな声に、無性(むしょう)に安心した。


「……泣いてるの?」


「泣いてません……」


お嬢様に頭を撫でられる。


「なんか、ごめんね?」


「無事だったので、もういいです」


だけど、街歩きはしばらくお預けにさせてください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ