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ナーシャお嬢様との出会い

誤字修正しました( ..)"

お嬢様との出会いは、僕が十歳の頃まで遡る。


あの時の僕は、母さんが父上と結婚して貴族街に移り住んだばかりで、右も左も分からず萎縮しながら生活していた。


表面上は無邪気な子どもを装っていたけど、貧民街での暮らしに慣れていた僕には、使用人がいる生活は監視されているようで落ち着かなかった。


別に陰口を言われるとか、虐められるとかはなかった。逆にかいがいしくお世話されて戸惑ったんだよね。


そんな生活が続いていたとき、父上が僕を公爵家の家令に紹介したんだ。


僕を公爵家の騎士にするために。

つまり父上は僕を元々、自身の跡継ぎにするつもりで母さんと結婚したってことなんだけど。


家令に紹介された僕は、魔石所持者(セレイストーナー)だということと、得意のナイフ投げや軽業をかわれて、無事公爵家に雇われた。


ゆくゆくは父上の跡を継ぎ、公爵家の騎士団長になることを求められている!


登る山が高すぎて挫折しそう!!


それはまあ、置いておいて、先の先のそのまた先のことだから!


ナーシャお嬢様と出会ったのは、人生の目標が高くて絶望しそうな、そんな日だったんだ。




公爵家の侍女に公爵邸の庭を案内されているとき。


「きゃぁぁ! ナーシャお嬢様!!?」


案内人の侍女が悲鳴をあげる。


侍女が見ている方を見ると、二階のバルコニーに女の子がぶら下がっていた!


白金色の長い髪が風に煽られて大きく広がり、柵に掴まっている白くて細い手が今にも離れそうだ。


助けなきゃ!


僕は即座(そくざ)魔石(セレイストーン)のついた指輪を握り、女の子のもとに転移(てんい)し、女の子を抱えてもと居た庭にもう一度転移した。


「……え、え?」


女の子は柵を握っていた手と僕とを交互に見て、目を白黒(しろくろ)させている。


「大丈夫? えーと、お嬢様?」


多分公爵家のご令嬢だと思う! 案内人の侍女がお嬢様って言ってたし。


「今の何!? 私、一瞬で移動した!? 私にもとうとう神の力が!!」


何を言っているのだろう? 侍女の方をみると諦めた顔で首を横に振られた。


「今のは僕の能力です」


魔石(セレイストーン)を持って生まれてきた、魔石所持者(セレイストーナー)は、何らかの能力を使うことができるんだ。僕の能力は瞬間的に移動できる能力なんだよ。


役立つのはこんなときくらいなんだけどね……。


「す、凄い……、これが神か! 負けた……」


どんな勝負に負けたのかな? なんか落ち込んでる。


「仮に僕が神なら、お嬢様は何者なんですか?」


「わ、私は……ただのアナスタシアです……」


だんだん小さくなる声。凄く落ち込んでる。地面に絵まで描きはじめた。


なんだろう、口元がゆるむ。笑いが込み上げてきた。


よく分からない勝負に勝ってしまったみたいだし、公爵家のご令嬢に先に名乗らせてしまったから、正式に挨拶しないとかな。


父上に教わったばかりの騎士の礼をする。


「お初にお目にかかります。サリュシス・ロッソと申します。本日より、公爵家に雇われました。騎士見習いですが、どうぞよろしくお願いいたします!」


顔を上げるとアナスタシアお嬢様が、ポカンと口をあけていた。


「……サリュシス君って言うんだ……。え、かっこよすぎない? は、何その礼。世界が恋に落ちてもおかしくないよ?」


その後早口で、摩訶不思議(まかふしぎ)な言葉を羅列しはじめる。


異国の言葉かな。さすが公爵家のご令嬢、僕と同じくらいの歳なのに、もうそんな勉強をしてるんだ!?


「不勉強で申し訳ありません。異国の言葉には不慣れなので、何を仰ったのか分かりませんでした」


僕の困り顔にアナスタシアお嬢様は、はたと口を閉ざし、赤くなる。


「私も異国の言葉には不慣れだから、気にしないで! それよりサリュ君って呼んでもいいかな? 私のことはナーシャって呼んで?」


僕の手を握って、勢いよく迫ってきた。


反射でナイフを取り出しそうになって慌てる。


公爵家のご令嬢をナイフで脅したなんて噂が流れたら、僕の人生が終わってしまう!


「分かりました、ナーシャお嬢様! ぜひサリュとお呼びください!!」


「やったぁ! 専属騎士様を手に入れました!」


いや、呼び方を許しただけで、専属騎士にもなってないし、物でもないです!!


貴族街に来てからずっと気を張っていたのが、急にバカらしくなった。


こんな子もここにいるんだ……。僕でもここでやっていけるんじゃないかな?




その後、ナーシャお嬢様が家令に頼んだのか、僕はナーシャお嬢様の専属護衛に任命された。

お読みいただきありがとうございました( ..)"

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