第90話共闘する者
「我々は、セブンエンジェルが誇る戦力である、レフエルとライエルである!貴様はこの世界を混沌に陥れて壊す者王暴だな?ならば、今ここで教皇様の手を煩わせぬようにここで殺しておく。」
そう言って、二人のセブンエンジェルがアクフ達を前にして攻撃体勢をとり、後ろに控えさせている軍をいつでも動かせるように待機させる。
「ナル、あれは俺が王暴の力を全力で使って魂塊も使わないと行けないかもしれない相手だ。これを言えば分かってくれると思うが。」
アクフが自らの力を温存しない宣言をすると、ナルが分かったと言わんばかりに頷く。
「相手はここで全軍を投入してきてもおかしくはないです。できるだけ横槍を入れられない形にしましょう。ここではナルは援護に回ったほうがいいですね。ということで、『ガイネーク』を惜しみなく使って地上にいる軍を殲滅するのが最適解かと思います。」
「うん、そうだね。私とアクフの全力の接近戦の戦力差的に考えて、そうするのは合理的だと思う。」
『我も久々に暴れられるのか。さて、ここにいるものは皆我の生力としてくれよう!』
そう思念を送りつつ、ここまで地中に潜ってついてきていたガイネークが言う。しかし、その言葉はすぐにナルによって諌められた。
「取り敢えず、方針も決まったしセブンエンジェルは俺が全て担うから隙を見てこっちに突撃してくる軍の殲滅を頼むな。」
「うん。」
了承の言葉を合図として、ナルとアクフが分かれる。
そして、一人になったアクフは自らの勘を使って、この状況を最も良く出来る手について考えていた。
「エネアーゼ、ここではどういった手を使うのがいいと思う?」
「相手は世界屈指の個別能力をもった存在であるセブンエンジェルですが、正直な所アクフが本気を出して戦うのであれば、一切の問題もないような敵でしょうね。しかし、ここは温存をしておきたいということなら、王暴の力を使い、魂塊はハンクを使った状態でのバファイと私で具錬式魂塊術武器を作った上の戦闘が最適でしょう。」
「やっぱりそうなるよな。」
アクフは自らの作戦に自信を持って、バファイだけをエネアーゼに纏わせて、王暴の力を使って『暴剣』を使って踏み込む。
ここから仕掛けてくると考えたライエルは、「かの暴力しか知らぬ者に天誅を。」と言いながら天使魂塊の個別能力を使う。
しかし、その結果アクフには何も起こらなかった。
(うん?個別能力を使ったっていっていたよな?でも、何も起こっていない?もしかして俺の気を引こうとしたのか?そうだったら少し警戒しないといけないかも知れないが、ここは押し切ったほうがいいはず。)
アクフは何も行動を変えることもなく、個別能力を使ったライエルに向かって剣を振るう。だが、その結果としてまるで最初から剣なんて無かったかのようにすり抜ける。
攻撃が空振ったことによって想定外の動きを取らざる負えなくなり、隙が生じた。
生じた隙を逃さないと、レフエルが天使魂塊を纏わせた鈍器を使って殴る。
あまり速度の出ていない一撃だったが、アクフの腕の骨は間違いなく折れた。
折れた骨は王暴の回復力によってすぐに再生する為、さして問題ない。だが、ここまでの損害は負わないであろうと思っていたアクフにとっては意外以外の感情がなかった。
(この威力とそれに釣り合わないくらいの軽い一撃。これは間違いなく個別能力に関するものだな。それでも、王暴の力があったらそこまで脅威ではないが、今はどんな能力か分からないんだから一旦は慎重に行ったほうがいいよな。)
そう考えなが、アクフは『暴剣』を使って距離を取る。
一旦は通常攻撃が通用しなかった経験から、一旦生力を少し使ってしまうことになるが『超音剣』を先程は攻撃が聞かなかったライエルに飛ばしてみる。
『超音剣』はライエルのもとに確かに飛んでいったが、純粋に速度と強化された勘によって回避されてしまった。
(これは、もうちょっと近くから撃たないと当たらないな。ここまでは力の出すのを少し惜しんでいたけど、ここからは常に全力で動かないとな。)
そう考えて、アクフは足に力を目一杯力を入れて、吹っ飛ぶ。
速度としては前のアクフの1000倍以上。もはや並大抵の生物全てを凌駕する存在であると言えるほどの速度を纏う。
「速いな!これだから人外の化け物は困る!」
そう言って、防御姿勢をとるがアクフの狙いから外れているため意味はない。
アクフはライエル近づいて一切の距離を取らない『超音剣』を放つ。
『超音剣』は防御姿勢を取っていたライエルを貫通して、肩の肉をえぐる。
反撃を警戒したアクフはすぐさま、距離を取って安全な地帯に戻る。
(効いたな。取り敢えず、あいつの個別能力は分からないけど、ただの攻撃では効かなかった。それとは違って『超音剣』が効いたってことはもしかして、生力に寄らない攻撃を透かさせる。みたいな個別能力の可能性はあるな。いや、そもそもそれは具錬式魂塊術武器が効かなかった無かったな。そのことも考えたら武器を使った攻撃を無効化するのか?)
そう考えながら、相手の出方を見る。
どうやら、アクフの反撃を食らってしまうのは致命打になると考えているのか、じっとしていたので、アクフは『静虚双劇』を使う。
入ったものを決して逃さない結界のようなものが形成される。
それは武人にしか見えない結界の為、ライエルとレフエルには見えなかったが、纏っている雰囲気からただならない技を使っていることを察する。
そのため、ただで踏み込んでしまえば死んでしまうと考えてライエルは中々動かないが、レフエルはその限りではなかった。
先程、鈍器が握られていた手には代わりに弓の姿があったからだ。
レフエルはここであれば、攻撃は飛んできても回避できると考えて冷静に弓を射ってきたのだ。
『静虚双劇』の範囲内に入った弓矢は、減速してすぐに斬られた。しかし、アクフの心臓には確かに弓矢が突き刺さっていた。
アクフはすぐに刺さった弓矢を抜いて自己再生する。
(これで、だいたいではあるが、多くの武器を持っている方のセブンエンジェルの個別能力が分かったな。恐らく過程に関係なく、ある程度の望んだ結果をもたらす個別能力だ。そうじゃなければ説明がつかない。そうなってくると、ここは教皇と合流されるのが一番厄介だ。早くこの戦いを終わらせないと。)
王暴の力によって強化された再生の力ですぐに心臓にできた穴を修復するが、このまま攻撃されてはたまらないと思ったアクフはすぐに、『暴剣』によってレフエルの周りを回るように距離を詰める。
周りの地面を巻き込むように『象重量撃』を放つ。
それは勿論、間に割り込んできたライエルによって、レフエルに通じることは無かったが地面に大きな亀裂を生み出す。
更に、生力消費はしてしまうものの、練度を上げたことによって最初と比較して効率が良くなった『轟放奏剣』を放って更に亀裂を大きくする。
「ふん!こんなもの私達には効かないぞ!」
ライエルとレフエルは生力によって、強化した脚力使い亀裂に落ちるのを回避する。
アクフはそれを先に見越していた為に『暴進蛇剣』を使って、回避する時にどうしても生まれる隙をつく。
そこから『超音剣』を纏わせたエネアーゼを使って、『暴破龍剣』を叩き込む。
ライエルには攻撃が通じて、ふっ飛ばして腹部に大きな損傷をさせることが出来たが、レフエルは盾を犠牲にして個別能力を使われたため傷を与えることは出来なかった。
アクフはふっ飛ばしたライエルの元に近づいて、トドメを刺そうとした。
しかしその時、ライエルとレフエルの魂塊に異変が起こる。
具現化された体が融合を始めたのだ。
アクフはすぐに『鎮魂業』を使ってなんとかしようとしたが、もうそんなことをしても止められないと、瞬時に察して自爆などの可能性も考えて一旦距離をとることにする。
「アクフ、あれはかなり特異な存在です。ただの魂塊術などの小細工ではなく根本的なものです。下手に力を出すのをためらっていたら死んでしまうかもしれません。」
「そうか。でも、ここでは出来る限り生力消費を押さいたいんだ。どうすれば最低限にできると思う?」
アクフがそう問いかけると、背後から何やら特異な気配を纏ったものが声をかけてくる。
「それならば、某が微力ながら加勢致します。」
アクフが振り返ると、そこには鬼人化をした義刀がいた。
「義刀!どうしてこんな所にいるんだ?」
「お久しぶりです!ここにいる理由としてはアクフ殿に恩があるからに帰結します。それよりも前にいるものをなんとかせねば、ならないのではないでしょうか?」
義刀の言葉で、意識が敵に戻ったアクフは元の方向に向き直して義刀に問いかける。
「正直言って、今の義刀に聞きたいことは山程あるが、今はそんな場合では無かったな。協力してくれ、アレは直ちに倒さないといけない敵なんだ。」
「分かりました。それでは某は『天下絶断斬り』の準備をします。これを使えば、あの禍々しい気配を纏ったあれも打倒出来ると考えますが、如何でしょうか?」
「いや、どうだろうな。別に義刀の力を否定するわけではないが、それでもアレ相手には少しきついと言わざる終えない。それでも、加勢してくれるのは嬉しい。」
そう言って、アクフがやんわり断りの言葉を言う。
「アクフ殿の今の力は、某が過去に見たものとまるで別物です。しかし、某がそれに対応出来る程の力を手に入れているもの事実です。この鬼人の力を使えば、足止め程度なら可能でしょう。」
そう言って、自らの力が通用すると説得するために少し力こぶを作って言う。
その程を確かめる為に、クフが値踏みするような目で見た。
「…………確かに、これだったら長期戦闘は出来なさそうだが、戦えないってことはないか。分かった。義刀、師匠だった俺にはこんなことを言うのは間違っているのかもしれないが、力を貸してくれ。」
少し抵抗感があるが、鬼人によって強化されている義刀が生力を全開に使えばいけるかと思い、教頭を要請した。
「勿論ですとも!」
義刀は今にも反逆者を殺そうとしている魂塊を見て構えながら、快く返事をした。




