第89話教皇までの道
ラミが直ちにこの現状を教皇に伝えようと『罪を裁く羽根』を使って、とてつもない速度になって飛行していた。
そして、そこまで時間はかからず教皇が軍を引き連れてエジプトに向かっている姿が見える。
その瞬間、更に速度を上げてラミは教皇のもとに降り立った。
教皇の視界にラミの姿が映ると、驚いて、
「ラミ!今までどこに行っていたのですか?」
と質問してしまう。
「それは色々ありまして、今すぐに言うのは少し時間がかかるので、後にしていただいても宜しいですか?」
質問を躱されてしまった教皇は少し考えた後に「まあ、いいでしょう。」と言って一旦は聞く姿勢に入る。
「それで、王暴を排除するために一人で行かせて貰いましたが、その結果、教皇様の耳に入れておきたいことが2つもあります。1つ目を報告しても宜しいでしょうか?」
「ええ、問題ありません。話してください。」
「まず、天使魂塊は一万人の魂を使って作れられているということです。これはここに来る前に、襲ってきたセブンエンジェルのトキアヤが言っていたことです。」
「そうですか………………それは、これから調査して対処すべき事案ですね。それで2つ目というのは?」
教皇の反応はラミの思ったよりも軽いものだった。
少しの違和感を感じながらも、今は報告することが先と思いつつも、これから話すことは育ての親に反逆する様な行為なため、少し緊張しながら口を開く。
「王暴と接触して戦闘を経て分かったのですが、王暴自体はどうかわかりませんが、その本人自体には一切の悪性はなく。寧ろ、ただ護りたい人間の為に強くなる為に邁進するだけの善人だと判明しました。」
ラミの説得が終わると、教皇と辺りにいる人間が一斉にしんと、静まり返る。
それはまるで、大罪を犯してしまった者を蔑むような視線に変わって
これはなにか間違った言い方をしてしまったかと思ったと思った瞬間、教皇が悲しそうな顔に変わって言う。
「そう、ですか。信じたくありませんでしたが、やはり、ラミは王暴の手に落ちていましたか。」
そう言って、教皇はラミに興味がなくなったように目線を反らして、これはなんとかしなくてはなりませんね。といった顔で、今から進む方向に顔を向き直す。
「いえっ!私は全く持って騙されているということはありません。これは私の心から思っていることであり、決して絆されたり欺かれたからの行動ではありません!」
あまりの情熱に少し教皇が躊躇いを持とうとした時、側にいた神官が教皇に耳打ちする。
その内容に関しては、魂塊による偵察の結果こちらに向かって多量に兵を薙ぎ払って進んでくる人物がいるというものだった。
「そうですか。仮にそれが真実だっとしても、私は皆、いや、これからの時代を作る子供たちの安寧の為に戦わなければなりません。なにせ、私達の神が王暴を打倒すればこの世に安寧をもたらすと言っていましたから。」
「だからといって、罪のない人間を殺すのはどうなんですか!それに、これまでも、王暴を殺すために数多の無関係の命を数え切れないくらい犠牲にしてきています。もしかして、その犠牲になった人間に報おうとやっているんですか!?」
ラミの問いただす行動は一見意味がないように思えるが、教皇に少しの間を与えることが出来た。
しかし、その間を持ってしても、教皇をまともな思考回路に戻すことは叶わない。
「それでも、もうここまで来てしまったのです。大国のエジプト相手にも宣戦布告を行っていますし、止まることなど出来ません。それよりも、ラミ、こんなことは早々ないと思うのですが、もしかしたら、私が王暴の前に敗れてしまうかもしれません。その時は私の子供たちをよろしくお願いしますね。貴方はもうここにいてください、戦闘に参加しなくてもいいですよ。疲れている人間を無理に動かすわけには行きませんから。」
そう言って、ラミをおいて教皇はアクフのもとに向かった。
(教皇様を止められませんでした………………もうこうなってしまえば、私はアクフのもとに向かって加勢することしか出来ません。)
そう思いつつ、ラミは何も出来ない自らの無力さを悔しみを覚えながら『罪を裁く羽根』を使って、アクフのもとに飛び立った。
もう、最後の戦いまで残っている時間はそうない。
――
ナルが過去の因縁に一段落つけた後、アクフ達は当然教皇のもとに向かった。
どんどんと変わって行く景色と、それでも変わらず蛮勇とも言える程突撃してくる信徒をどんどん斬り伏せながら進む。
これまで斬り伏せていった人間の数は、もう一万の大台に乗ろうとしている。
一万の兵を分けもなく斬り伏せることの出来る王暴の力もとんでもないが、途方のないほどの信仰心が暴走しているとも言える信徒を送り込んできている教皇側もとんでもないと言えるだろう。
現在の時刻は昼を少し過ぎた程度、それでもアクフとナルは止まって食事を摂ると言ったことはセずに、『果実生成』によって生み出された果実で済ませている。
「アクフ、中々教皇と会わないけど、これって嵌められていたりしない?」
「いや、そんなはずはない。俺の勘も、エネアーゼも、先代の王暴も言っているから間違いなわけではないと思う。それに、教皇の目的は俺なんだから態々遠ざける理由がない。」
「そうですね。アクフの言う通り、ここでの抹殺を考えているのであれば、今遠ざけてしまえば逃走も図られてしまう可能性もありますし、それに私の調べでは絶賛教皇もこちらに向かって来ています。」
と言って、エネアーゼが返答する。
それに対してアクフから教皇の情報を教えてもらったナルは疑問に思ったを言う。
「でも確か、教皇の持っている魂塊の個別能力って運命を決める能力だったよね?それも決められる運命の制限もない。だったらさ、ここで私達が勘違いする運命、または騙されて暗殺みたいなことが出来る運命とかあるんじゃないの?」
ナルの言葉に回答するように王暴の魂塊が答える。
『それはないだろう。魂塊の能力は一部神のような力を持っているものもいるが、それでも人工物なの事には変わらず、神ではない故に隙、欠点が必ず生まれるものだ。ここでそんな生力をしてしまえば、これからの戦闘に支障が出ると踏んで最低限しか行ってこないだろう。』
「確かに、そんな運命を決めることが出来たら第一にここまで戦いは長期化していないですよね。」
『ああ、他にもバファイの個別能力の『偽装』なんかで騙すと、そもそも運命を上手く設定できなくなる為有効だ。』
「そうなんですか。ありがとうございます。そう言えば、先代の王暴ってことは当然アクフとも血縁関係はあるんですよね?どれくらい繋がっているんですか?」
『結論から言うと、20世代以上離れている。そして、王暴だからといって必ず血縁関係があるわけではない。これは俺がこうすればこうなるであろうと考えて、演算した結果に沿った行動をしたためにこうなっただけだ。本来は同じ生物になるかも分からない。』
「そうなんですね。ありがとうございます。」
ナルがそういうと、アクフも自分が気になっていたことをこの機に言ってみることにする。
「そういえば、伝承では後世の為に子孫を残せって言われていましたが、これって本当のことなんですか?」
『ああ、アクフには子孫を残してもらわないと、将来この地が空からやって来る侵略者によって進行されて、この地が焦土に変わってしまうが故絶対に残せ。具体的に言うと十人以上だ。ちなみに心配はしなくてもいい。俺が、個人的な拒否感情がなければ自動的に目的の人数以上出来るようにしている。』
王暴の魂塊の言葉を聞いてナルは少し思ったことがあるのか、ブツブツとなにかを言う。
だが、それはアクフの耳には入らず、それどころか誰も気づくことはなかった。
「成る程、この星にもこんな次元の高い魂塊がいるんですね。大分感心です。」
エネアーゼが綿密に考えられている王暴の魂塊の計画に興味を示す。
『俺としては、お前の方が気になるがな。俺の時代にも魂を持たないものに強制的に魂を移植して、魂塊を作る技能はかろうじてあったが、こんなものがあるなんてな。と言ってもお前は本来であれば、排除対象だが無害が故に何もしないでおこう。』
「はい。私はアクフからの生力供給があれば、なにも余計なことをしない生粋の善良魂塊ですよ。」
『ああ、俺もいつまでもそうあることを祈っておこう。』
「ええ、私も態々敵を作る様なことはしたくないですからね。そこまでのことはするつもりないです。少なくとも今のうちは必ずですね。」
「取り敢えず、エネアーゼと先代の王暴が仲良くしてくれたら嬉しいですね。」
そうアクフが言うと、エネアーゼと王暴の魂塊は顔を見合わせて、ないないと言わんばかりに動く。
そうして精神を回復するために他愛のない会話を皆がしていると、変化が訪れる。
眼の前に、二人のセブンエンジェルが現れたのだ。




