第88話背信者
ナルが過去との因縁を断ち切った頃。アクフが教皇のいる最前線に行くと考えたラミはひと足早く最前線にたどり着いて、もう残り少ないセブンエンジェルと交戦していた。
「なんで君は敬虔な信徒だったのに。王暴という世界の敵に接近して、あまつさえ王暴などのこの正解の敵を滅するためにあるその力を持って僕達に楯突くの?」
現在、ラミは地中に幾つもの『罪を裁く羽根』によって生み出した羽根を埋めて、時を操る力もっているセブンエンジェルであるトキアヤを牽制している。
トキアヤは男性用の司祭の服を着ており、聖職者とは思えないへらへらした笑みを浮かべている。
「貴方も少しは考えてみてください。そもそも、なぜ世界を侵略する悪の権現である王暴を倒すだけに飽き足らず、その他の人間を害しながらも国家に甚大な被害を与える略奪行為を行っているのですか。」
ラミの問いを聞いて、トキアヤはやれやれと言ったん感じに首をかしげて返答する。
「もしかして、教皇様から聞いていなかったのかな?そう言えば、教皇様もこの事実は知らなかったかな?」
「それはなんなんですか?教皇様も知らないのに貴方が知っている重要なこととは。」
それを聞いて、トキアヤは少し可笑しく感じたのか、笑い出す。
「そうだったね。もう護神教は一枚肌じゃなくなったんだよね!こんなに世界に知れ渡って沢山の人間が信徒となっているんだから、もう知らない人のほうが大多数かなとは思っていたけど、ラミまで知らないとは思ってもいなかったよ!」
そう言いながら、トキアヤは寿命が縮むことを覚悟して、自らの時間を加速させてラミの周囲にある羽根が起爆する前にラミの耳元まで来て、他の誰にも聞こえないように言う。
「君と僕、いやセブンエンジェルと教皇様が使っている天使魂塊は全て、大量?いや、100人?いや、1000人?いや、10000の人間の分解されていない死にたてほやほやの魂を使って作られているんだ!当然嫌がる人も多かったから、自らが望んで死に天使となるように仕向けたりもしたね?」
その言葉を聞いて、ラミは動揺する。
「そ、それは、教皇様も知らないんですよね?誰が作ったんですか、天使魂塊は。」
「勿論こんな代物、あんなに他者の幸福と安寧を馬鹿みたいに願っている教皇様が真相を知ってしまえば、すぐにでも解体して魂を解放しようなんて言い出すだろうから、言っているわけないじゃないか。」
「つまり、貴方はセブンエンジェルなんて業の塊のような存在を作った張本人なのですか?」
ラミの目が勘違いをしている仲間を見るものではなく、明らかな敵を見るものに変わる。
「そんな言い方ないじゃないか。君だってセブンエンジェルの力、いや、10000人の魂と生物にした自然のの力を使って立派に人間に害をなす存在を滅してきて、つい最近までは教皇様と一緒に王暴を追っていたって言うのに。」
「それは、そうですが。犯してしまった過ちは仕方がありません。これからに過去が交わるなんてことはないのです。だから我々は犠牲になっていった魂を開放して償わければならないのです!」
「そうか。やっぱり君は教皇様に似ていて僕達とは別の存在らしいね。まあ、その年にしては聡い君なら言わなくても理解していると思うけど、これを君に聞かせた時点で君を生きて返す気はないからね?」
「分かりました。私はなんとしてでも教皇様にこのことを伝えないといけません。そのためにはこの力を使う必要があります。」
そう言って、ラミが時間をいじろうとも、天にいれば問題ないと考えて、『罪を裁く羽根』で空中に浮かぶ。
「確かに、僕にとって飛ばれるのがいま一番嫌な行為だ。しかし、嫌なだけで突破できないってほどじゃないんだよね。時を戻してよ、オジョルエル!」
そう言うと、目を閉じた大型の純白の天使が具現化される。
持ち主の命令を聞いたオジョエルが個別能力を使ったことにより、ラミの体が固定されて勝手に『罪を裁く羽根』が勝手に解除されて地上に降ろされる。
一見すると、ただの武技である『水平行逆の理』と似たようなものに思えるが、根本的な所から見ると大分別の存在であることが分かる。
「確かに、君はセブンエンジェルの中でも指折りの実力者だ。それは認めざる終えない。でもね、世の中には相性って言うものがあるんだ。そもそも、体が大人になっている僕と子供の体の君ではどうしても身体能力強化後の値に開きがあるからね。」
そう言いながら、トキアヤは無防備になっているラミの時を少しだけ止めて殴る。
その衝撃は蓄積されて、時が再び動き出した時にふっとばす結果となった。
(やはり、元々あった私との相性差はそう簡単には覆るものではありませんね。しかし、私だってただで情報を垂れ流している訳ではありません。ここは反撃を。)
そう思って、ふっ飛ばされた先で立ち上がって、ここに他の味方の兵が来ていないことを確認してから辺り一帯に光線を放つ。
「僕の時間を遡させろ、オジョルエル!そんなことしたって、僕が時間を戻したら無意味ってわからないかなあ。」
そう言って、被弾覚悟で突っ込んで来ながらも自らの時間を戻したために無傷で経っているトキアヤが言う。
(トキアヤの天使魂塊、オジョエル。その個別能力は他者か自身なんて関係ない全範囲での時間を操るもの。一見するとどうやっても勝てないように思えます。しかし、明確な弱点があります。)
そう思いつつ、少しずつ後退しながらラミはあらゆる方向に光線を飛ばせるように準備を行う。
(それは、人の思考までは戻せないことと、天使魂塊に口を使って指示することが引き金となって発動する個別能力であるが故に、口が機能しなくなれば使えなくなる。当然、ときあっや自身もその事に気づいている為、口にはわかりやすいくらいの重装甲。ですが、私の光線なら貫くことが出来るはずです。ここは油断を誘って一気に片付けるのが最善でしょう。それに戻す時間も戻そとすれっばするほど大量の生力を消費することになってしまいますし。)
そう思いながら、眼の前にいるトキアヤが隙を見せる瞬間を狙っている。
しかし、相手も本気でラミを潰しに来ているため、中々隙なんてものを見せる気配はない。
「あれ?なんで『罪を裁く羽根』を使わないんだい?僕に致命傷を与えるのは大分厳しくても、少し傷を与えるくらいだったら他の魂塊よりもいいものを持っているんだから、ハノエルを使えばいいじゃないか。もしかして、さっきの威勢は僕を騙すための嘘だったのかな?」
そう言いながら、トキアヤは悪い笑顔を作ってニタニタとラミのことを見下す。
(反応してはいけません。あんなのに乗った所でろくなことにならないのは明白ですから。)
ラミはやすい挑発に乗らないように自らに言い聞かせながら、トキアヤをとある場所に誘導する。
それは、トキアヤがそう簡単に逃げられない場所。そう、湖の近くだった。
ラミは『罪を裁く羽根』を当てて、トキアヤが避けようと時を戻す時の隙を狙って、体を掴んで頭部を激しく損傷させてから深い底に沈める気であった。
「おいおい。こんなところに連れてきて、もしかしてラミは僕がここで急にはしゃぎだして服を脱ぎ、防御性能が下がってから叩こうってわけじゃないけど思うけど、こんなことしても無駄だよ。もう終わろうか。ここまで付き合って上げたしササッと片付けてもいいよね。」
トキアヤが続いて口を開いて何か言おうとした時、ラミがすかさず『罪を裁く羽根』を使って阻止しつつも、隙を作り出す。
その隙を見逃さずに、トキアヤの懐まで飛び込んで抱えて、すぐに頭部を地面に叩きつける。
それによって少し麻痺している間に、『罪を裁く羽根』を使って落ちれば多々では済まない高高度まで飛んで、その間にもできる限りトキアヤの意識を朧にするため殴り続ける。
そして、高高度でそこそこの時間が経った瞬間湖の上で落として、落下するトキアヤに向かって光線を放つ。
これで全てが終わると信じたラミは直ちにトキアヤが補足できない範囲に逃げようとした時、
「はは、いつから僕が一つの魂塊しか使わない人間だと思っていたの?こんなに邪悪な人間が複数の魂塊を使わないなんてあるわけないじゃないか。それにこの程度で死ぬほど僕はやわじゃないしね。オジョエル、僕の時をうんと戻してくれ!」
そう言って、他にも持っていたモデルマグロの魂塊の個別能力によって意識を取り戻した上に、自らの時間を戻して落下を阻止する。
「全く持って貴方は面倒な使い手ですね。敵に回したくありませんでした。」
そう言って、ラミはできるだけ遠くからトキアヤに言う。
現在の状況は極めて良くない。
大幅な時を戻させたことによって、生力を無駄に使わせることに成功しているものの、数年訓練をしてきたトキアヤの生力はそう簡単には尽きない。
そして、ラミには時を操る力を超越する程の瞬間的な力がない。元々、ラミの戦略はその個別能力による多彩な戦略を立てられることにある。
そのため、この様な相手と敵対してしまった場合器用貧乏とも言える程に、相性的な不利が生じてしまう。
もうここまで、そんな考えがラミの脳裏によぎってしまったその時。
遠くからラミの方に向かって甲高い声で咆哮するものが近づいてくる。
それも一人ではない。
軍を引き連れている。とんでもない勢いを持って進軍してくる。
それは戦場を走り回ることによって、様々なところに火力支援を行うソルバとは似たような役割を担っている部隊、そう、ローガの部隊であった。
「なんだい?この声は、もしかしてこの僕を倒そうっていう愚かな人間がこっちに向かっているのかな?」
そう言いながら、もはや何をやられた所で何も致命打になり得ないのでラミを無視してこれからやってくる軍隊を警戒している。
ローガは今向かっている先にいる存在がセブンエンジェルと気づいて、すぐにここから先に進む人間をローガ一人だけに変更する。
そして、二人のもとにやってきた。
「ヒィィ!!!!!!フイッッッッッ!!!!!!ここはエジプトが誇る遊撃隊の隊長のローガ様の主戦場だぜ!!!!!!!!!!!!!」
ローガの気分はかつて王暴と対峙したときよりも高いものになっており、ここにいる全ての生物に警告するように叫ぶ。
「あれ?その特徴的な態度。もしかして数年前に、エジプト軍にまんまと捕まえられて捕虜になってしまったローガ君かな?」
どうやら、トキアヤはローガが護神教の関係者だった頃を知っている様子。
だが、
「うるせぇぇぇえ!!!!!!!!!!!!!ここにいるのはエジプト軍遊撃隊隊長のローガつってんだろ!!!!!!!!!!!!!」
既に魔法の液体を摂取しているローガには、気分の高揚の限界値を更新し続けているため気にならない。
ローガはさっさと戦闘を終えるために人纏神術を使って自らに魂塊を問わせて、トキアヤに突撃する。
「ふん、こんななにも考えていないような攻撃を僕が受けるわけないよ。オジョエ」
トキアヤが命令して個別能力を使おうとするがローガに遮られて、ものすごい速度でふっ飛ばされる。
「何ゴタゴタ言っているんだ!!!!!!!!!!!!!俺はこんなもんじゃないぞ!!!!!!!!!!!!!『神降臨』!!!!!!!!!!!!!」
気分が高揚していることによって無限に湧き続けている腕を集合させて、ローガと同じくらいの生力の塊のような物を出す。
それは踊りながらも、そこら中に落ちている武器を拾ってトキアヤに攻撃を続ける。
そこに『跳越軌』を使って跳躍を利用した一撃で追い打ちをかける。
休む暇もない青天井に強くなっていく連撃、それがローガ特訓によって手にした戦術だった。
今も尚、増え続ける腕がトキアヤを拘束しながら、全身を殴っている。
完全にローガの独壇場だ。
トキアヤの魂塊は圧倒的に速度が足らない。それが故に気分が高揚する度に速くなるようになっている個別能力に対応できない。
(これは、圧倒的過ぎますね。相性と言うものでは片付けられない、覚悟の差のようなものを感じてしまいます。ローガは、あそこまで力をつけていたのですか。)
ラミは、トキアヤが何も出来ずに蹂躙されている様ただ見ていることだけしか出来なかった。
数分後、少し息を荒げているローガの前にはもう動かなくなったトキアヤがあった。
「これで、少しは解放されたかな。」
少し感傷に浸っていたローガにラミが近づく。
「ありがとうございました。加勢して貰ったおかげで助かりました。」
その声によって、感傷に浸って少し自分の世界に入っていたローガの意識が戻される。
「別にいいですよ。御仁として脅威であるセブンエンジェルの撃退は、成さなくてはならない任務ですし。」
そう言いつつ、ローガはオジョエルを回収集する。
その行動にラミが待ったをかけた。
「なんですか?もしかしてこの戦いの中で寝返ってこの魂塊を渡せって言うんですか?そうなのであれば、例えラミ様でも私は剣を向けますが。」
「いえ、そういうことではなく。先程倒していたセブンエンジェルが、天使魂塊は一万人の命を犠牲として作られていると言っていたので、念頭に置いてほしいだけです。」
ローガは少し考えて、
「そうですか、情報提供ありがとうございます。」
と言って、誰にも奪われて利用されないように回収して自らの軍隊が戦っている戦場に戻っていく。
ラミも、教皇の元へ向かうために『罪を裁く羽根』を使って飛翔した。




