第83話いざ尋常に
ファラオがセブンエンジェルの一人を倒した時、アクフは王暴の力と魂塊の身体能力強化の力による飛翔で戦場に到着していた。
そこでは、そこらかしこで戦いが行われており、仮に護神教側に通常ではとどめとなる攻撃を与えたとしても、厚い信仰力と言うなの狂気の気力によって神経に伝わる信号を完全に絶たない限り止まらず、それによって、油断したエジプト軍が雇った傭兵が少し返り討ちになっている様子だ。
その様子はまるで、数年前のアクフが初めての戦場であるローガ等が進行してきた戦いのようだった。しかも、その時よりも苛烈さを増しており、とても元の軍では対処しきれていない様子だ。
(この感じ、懐かしい。でも、この状態を懐かしいなんて言葉で片付けて良いものじゃない。取り敢えず、ここの兵の消費を抑えるためにも一刻も早く一掃しないと。)
アクフはそう思いながら、背中に乗っているナルを下ろし、戦闘に入ると伝える。
「分かったよ。それじゃ私は自分で身を守れるから、アクフは存分に力を振るってきて。」
そう言いつつナルは即座にガイネークを出して臨戦状態になる。
「ああ、それでも、気を抜いたら駄目だからな。」
アクフが言い終えると、待ってましたと言わんばかりにエネアーゼが話し始める。
「アクフ、この状態なのであれば、王暴の力を取り戻した今なのなら、『暴剣』を交えた『駄津撃剣』が有効と試算し、結果が出ていますがどうしますか。」
「ああ、俺の中の戦闘に関する勘もそう言っているし、それが最適解だろうな。じゃあ一気に行くぞ!」
アクフはエネアーゼを持って構えて、戦場を駆け始める。
走って戦場に存在する味方の軍ではない戦車に乗っている人間を、片っ端から『駄津撃剣』を使って、首を頭を泣き別れにしていく。
当然のことながら、護神教の人間は誰も彼もアクフの攻撃を受け流そうと、抵抗してくる。しかし、アクフにとってはその抵抗はほとんど存在していないに等しく、まるで子供の制止の手を跳ね除けるかのようにあっさりと、その場にいるほとんどの敵兵を薙ぎ払う。
その様子はまさしく、敵に向かってぶつかり、『駄津撃剣』によって斬り、まるで円を描くかのように『暴剣』で旋回し、敵に向かってぶつかり、『駄津撃剣』で斬り、『暴剣』で旋回する。といったローテーションであり、まるで水の流れのように敵を殲滅してそれを終え、一息ついていると、一つの魂塊が近づいてくる。
『うん。全く持って敵に同情してない。王暴としての基礎的な所もちゃんと出来ているな。それにまだ敵の本丸も登場していないようだ。ここが俺が合流する時として一番だな。』
「来てくれましたか。それでは今回の戦いとしましては、最強の敵である教皇討伐のために道中ではできる限り生力を温存しておきたいので、先代を使うのは、異変がなく想定通りにことが運べば最後だけになります。」
『ああ、それで問題ないだろうな。幸いなことに、ここにいるのは魂塊によって王暴の力を倍加しなくても倒せそうな雑兵しか見えなかった。と言ってもセブンエンジェルと言われる類はどうか分からないがな。』
「そうですよね。ここで気を抜くわけには行きません。なにしろここは戦場なんですから。」
戦況について話していると、戦いが終わったところを見計らってナルが近づいてくる。
「アクフ?もしかして、もうちょっと敵陣の奥に行くの?」
「ああ、恐らくもっと奥に教皇がいると思うからな。」
それを聞いて、ナルは少し不思議そうな顔をする。
「でも、今回の戦いってアクフを狙っているだけの戦争なんだよね?それだったら一番アクフを倒す可能性の高い教皇が一番早く到着する最前線にいるのが普通だと思うけど、これって間違いだったりするの?」
というナルの純粋な疑問を聞いたエネアーゼは仕方ない。ここは納得を優先したほうがいいですねと思いながらも得意げに話し出す。
「確かに、普通であればそうです。しかし、護神教というのは巨大宗教。当然、一枚岩ではなく教皇の下にいる人間が本当に膨大なのです。しかも、その中には間違えた信仰持った厄介な司教、つまり狂信者が多く、我こそは邪悪な王暴を跳ね除けてやる。と抜け駆けをする人間が非常に多かった為、教皇は準備をおこなって出遅れ今は最後尾で統制を図りつつも、こちらに向かっているという訳なんですよ。私が、収集した情報が正しければの話ですが。」
「そうなんだね。つまり、ここからはその抜け駆けしてきた人間を倒しつつ、教皇のもとに進むって言うわけなんだよね。」
「ええ、その認識で問題ありません。今回の戦場で現在こちらに敵意を向けているセブンエンジェルは合計5人。ちなみに他の者は1名がこの世から既に旅立っており、残りのラミがこちら側につく意思を見せているので、実質的には警戒すべき教皇以外の実力者は五人しかいないことになりますね。」
「ああ、ということで俺はどんどん奥の方に進んで行くが、ナルはどうする?別に後ろに下がって死にかけている人を救助しに向かっても俺は何も言わない。」
「勿論、私がここに来たのはアクフを助ける為なんだからここから進むよ!」
「分かった。ナルがそう言うなら、ついてきてくれ。」
(……………………それにしても、ラミ、加勢するって言っていたわりにはこっちに来るのが遅いな。もしかして、どこかで交戦しているのか?まあ、ラミがそうそうピンチになるとは思えないし、今は気にしないでおこう。)
そう思いつつアクフはスレトラルやシラモの軍の兵を下がらせて、敵陣の真っ只中に突っ込んでいく。
ところ変わって、義刀はソルバが援軍の要請を聞き届けた時から進軍の準備を行っており、現在は無事にエジプトの地に軍を引き連れて参上していた。
(ここが、アクフ殿がいたエジプト。話には聞いていたが大国であるな。)
そう思いつつ、遺跡から出たところにいた門番にソルバの側近からもらった通行書を見せて、通してもらおうとする。
アクフが初めて落ちた時はただの落とし穴であった。しかし、様々な場所に馬を走らすよりもより早い時間で辿り着くことが分かり、それと農民たちの閑散期も重なった為、ファラオが公共事業として整備を進めさせていたのである。
義刀は大国の力を感じながらも、こんな所で止まっている場合ではないと、思い直しこれから参加する戦いに向けて、懐にしまってある巻物を取り出して見つめる。
(さて、これの安全性はある程度確保したが、それでもどこまで通用するか。)
やはり、どうしても有用性を実証しても過去の事件を思い出す。
それでもこれが、自身ができる最大限なことであると気を引き締めようとする。しかし、それでも自らの力不足もあり鬼の力を利用したとて、果たして護神教という強大な敵に敵うか。また、力の保証は一日程度で、それ以上の持久戦になってしまえば保証がない。
だがしかし、自らが体験した鬼人化した状態で理性を保ち放った『天下絶断斬り』時の威力を見て自身を取り戻しながら、義刀は今回連れてきた精鋭たち引き連れて戦場に向かう。
義刀達は馬に乗っていたので、そこまでの速度は出ていなかったが、それでも遺跡の力によって比較的に近くの通路に出ていた為、数時間ほどでついた。
そこでは、ファラオがソフィーナトシャンシンに乗りながら、太陽の船の複数ある能力の一部の『九柱・太陽の神』を使って向かってくる敵すべてに全てを焦がす光を当て尽くを殲滅していた。
「エジプトの王よ!今貴殿の要請に応じ、元竹戸を統べ民を導く一族想護家の当主である義刀が参上仕った!これより、敵を見つけ次第攻撃を開始するが構わぬか!」
その声を聞いたファラオは振り向いて、敵が来るはずない方向からの申し出に味方の加勢であることを瞬時に見抜いて、『九柱・太陽の神』での攻撃をつつけながらもソフィーナトシャンシンから降りて義刀の下に向かう。
「おお、よくぞ加勢してくれた。遠いところからここまで面妖な遺跡があったとは言え、ここまで来て手を取ってくれるのは実に嬉しい限りだ。」
「いえ、この戦いは我が国でも恩があるアクフ殿に報いるためのものでもあるので、そこまでの感謝はいりませぬ。しかし、感謝の念があるのであればこの戦いが終わった後は手を取って仲良くしましょう。」
「ああ、こちらとしても、そうしたい限りだ。では、貴殿達はアクフ達がいる最前線よりも先の地点に進軍するが良い。そこには敵戦力の最高峰の存在であるものがいるが、貴殿達がそれに劣るとは思わぬ。一丸となってこの戦いを制そう。」
「そうですな。情報提供感謝します。では、某はここに長くはいらないので、急いで進軍します。所でファラオ殿もエジプトにおいては最高戦力と噂が知れ渡っていますが、こんなところの防衛をしていて良いのですか?」
「今この国において、最も戦力を持っているのは御仁という集団だ。確かに我の力を最大限使うことができればその限りではないと思うが、我はもう力を最大限使えるほど若くない。ならば、その余った力で民を守っているわけだ。」
義刀がその言葉を聞きつつも、眼の前で行われている『九柱・太陽の神』を使った虐殺を見ながら大国の威光を感じつつも、ファラオに不要なことを聞いたことに対する謝罪をしてアクフいる戦場に進軍していった。
ある程度のところまで行くと、念の為、想護家に代々使える家臣に全ての軍を引き連れよ言って、自分は単騎でアクフのところに向かう。
本来であれば、竹戸の最大戦力の刀家を連れてきていないとはいえ、今回連れてきたのはエジプト軍にも劣らない精鋭だらけである。しかし、万が一鬼人化した義刀が暴走して害を与えないため離したのだ。
迫りくる護神教の教徒を一刀両断し、これはいい実践型の鍛錬になるなとも考えつつ、義刀はアクフの下に向かっていると、一人の魂塊使いが義刀の刀を止める。
(何?まだまだ未熟とは言えども、ここにいるただの魂塊使いよりは優れているとは実感していたようだが、それも某の思い込みらしい。)
そう思いながらも馬から降り、〘竹宿り〙を構える。
「その見た目。間違いなくエジプトのものじゃないな!しかし、俺達を攻撃しているということはこちら側でもなさそうだな!であれば、クラトスを模した魂塊を持ち、手製の魂塊術をもつ我が蹂躙してやろう!」
そう言って、大柄の敵兵は自らの魂塊を具現化して握りつぶす。
握りつぶした魂塊は塵のような大きさになっていき、その状態で更に具現化させて、更に己に自身に纏わせ、それを体全体に吸収させるため口から、体内、そして、血流に流す。
完成した状態の大柄の敵兵は自慢げながらに、自らが作った魂塊術を見せびらかす。
「見よ!これが我が手製の魂塊術、体内威光だ!」
(これは、外見が全く持って変わっていないと見せかけて、よく見てみると体に漲っている生力が段違い。これは武器の不使用を代償に生力を漲らせ、魂塊の個別能力を強化する魂塊術?いずれにしても今の状態で相手をするのは危険な存在。少し早い気もするが、鬼人化を使用し応戦しよう。)
義刀はそう思って、懐から鬼人になるための書である鬼人覚醒法を改造を施した、鬼人強本を取り出して、おもむろに開く。
その行動を見た大柄の敵兵はなにかしてくるとしても、これは大きな隙だと判断し突撃する。
しかし、書から出てきた力によって、敵兵はふっとばされた。
そして、出てきた力が義刀へ吸収されるように入っていき、義刀の額に角を生やして体の筋肉が肥大化しては収縮されていく。
力が入ってきた反動で少し仰け反って、少し空いた口からは人間のものではない鋭い八重歯が見える。
仰け反ったものの、気合で元の体勢に戻って刀を持って構えて、ふっとばされている大柄の敵兵に『蜻蛉力走』を見舞って、斬ろうとする。
しかし、吹っ飛んでいてろくに防御態勢が取れていなかった大柄の敵兵に刀は届いたのだが、硬化していた体に弾かれてしまった。
弾かれて、少し驚いてしまっている義刀に、大柄の敵兵の攻撃が腹に直撃して、後方に大きくふっ飛ばされる。
(これは、あの魂塊術は防御力も上げるのか。これは生半可な攻撃を行ってもただ隙を見せる時間が増えるだけだ。ならば、時間を稼いで『天下絶断斬り』を叩き込まなければなりませんな。)
そう思いながら、義刀はかなり強い攻撃をもらったにもかかわらず、魂塊と鬼人の力もあって立ち上がる。
「俺の渾身の攻撃を食らっても立ち上がるなんて、王暴と上の一部の人間だけだと思っていたぜ。それに、攻撃も重い。それに、なんだか見た目も変わっている。俺と同じ新手の魂塊術か?」
「これは鬼人といって魂塊とは、全く持って関係ない力だ。それより、そんなことを言っていたら、防御がおろそかになるぞ。」
そう言いながら、義刀は兜太郎に生力を注いで、できる限りの力を出してから突進して『鳴蝉連斬』を放つ。
しかし、それは体が鋼よりも固くなっている大柄な敵兵にとって、薄皮を少し斬るだのものだったが、狙いはそこではない。
鬼人と魂塊の力によって、いくら威力が分散しがちな連続技と言えど、地面からしたらその一撃一撃が地を開くものだった。
大柄の敵兵は、『鳴蝉連斬』によって生み出された大地の割れ目に落ちる。
落ちても、ほどんど体に損傷しておらず、平然とした顔で足に力を入れて脱出しようとしたその時。
義刀は刀を構えて『天下絶断斬り』の準備を進めて、前回よりも練度が上がっていた。それ故に大柄の敵兵が上がってくる少しの間に、少しでも遅れていたら危なかったながらも、間に合わせた。
長きにわたって磨き上げてきた技は、鬼人の力も合わさってもはやそこらの魂塊使いであれば一切受け付けないほどの力を、放つ。
大柄の敵兵は、これまでの攻撃から推測できる力の出し方ではない、これは何かしらの罠。と判断して自らの魂塊の力を過信しながらも、わざと『天下絶断斬り』を全身に受ける。
当然、義刀の『天下絶断斬り』は義刀自身が一世代で作っただけのものではなく、義刀の前の世代の偉人たちが生み出して継承して高めていたものだ。
音を超える刀が、敵兵を襲う。
その攻撃を一身に受けた大柄の敵兵の敵兵は縦に真っ二つになった。
義刀は大柄の敵兵が絶命していることを確認すると、魂塊術が解けてその場を漂っている大柄の敵兵の魂塊を回収して更にアクフの元まで近づく。




