第82話開戦
アクフが鍛錬をしてラミと話してから数日した後、その朝は意外にも唐突に訪れる。
飛び交う怒号が進行して来た。もちろん、その怒号を発しているのは護神教の教徒たちだ。
教徒たちは、まだ朝から仕事をしないといけない人間がようやく起き始める頃に4つの部隊に別れて進行してきて、進行方向にある民家を襲って食料や金品を強奪しながらアクフがいる場所に向かって進行していく。
もちろん、対策していたエジプト軍部がそれを見過ごすことはなく。
侵攻してくる方向を突き止めて、迎撃のために控えさせていた軍を出し、護神教の侵攻を食い止めるべく武器を取って戦う。
そして、そこには御仁であるスレトラルとシラモがいた。しかし、他の軍はまだ知らせを聞いていないため、アクフや、ローガ等々の他の御仁達は到着していない。
「うん?目の前にいる武装している集団がいるぞー!王暴の使徒だ!異端者は直ちに始末せよ!!!」
一人の暴走している神官が声だかに御仁が引き連れいる兵たちを抹殺せよと指示を飛ばす。
「諸君!これからは世界に名を轟かせいる護神教と戦うことになる!しかし、我々にはファラオ様とセト様の加護がある。今回は私が先陣を切り敵将を討つ!兵よ、奮え!」
それに対して、交渉などできそうにない状態であることを察したスレトラルが宣言をして、控えさせていた軍を引き連れ、向かっていく。
ここからが、開戦である。
――
所変わって、護神教をはじめに迎撃する部隊ではないアクフが、エネアーゼの警告によって叩き起こされていた。
「来たんだな?エネアーゼ。」
「はい。私に情けなく起こされた割にはカッコつけますね。アクフ。」
エネアーゼの皮肉に半笑いで誤魔化していると、先代の王暴の魂塊が力を持つものの接近によって駆けつけていた。
『俺の予想より大分早かったが、相手は相当のやる気だな。しかし、恐れることはない確かに備えはそこまでないかもしれないが、確実に負けるほど今のお前は弱くはない。』
「ありがとうございます。では、これから準備をして先に戦っている人たちに王暴の力を使って速攻で合流しに行きます。行きましょう!」
そうアクフが言うと、部屋の奥からその話を聞きつけた者が急いで走ってくる。
そのものの正体は、ナルである。
「ちょっと、待って!私も行く!」
「え!ナルも行くのか?でも、ここから本物の戦場でどんなことが起こったて不思議じゃないし、相手は護神教は話したこともあるが、とても手ごわい連中だ。それに、相手は話の通じる相手じゃない。人を殺さないといけないんだぞ。」
アクフは明らかに戦場に居場所がない人間が戦場に参戦すると聞いて、びっくりしながらも、戦場に行かせるわけにはいかないと思い、説得しようとする。
しかし。
「確かに、私に戦場は向いてないかもしれない。でも、私にはアクフに対する恩もあるし、何よりこの戦いに行かなかったら後悔してしまう気がするの。」
そう言って、アクフの説得を跳ね除けてついていこうとする。
「大丈夫だ。ナル、この戦いは勝算がないわけではないから、そこまで心配する必要はない。安心して待ってていいんだ。」
(奴隷時代に、あんなに暗い顔をしていたんだ。せっかく短くない時間を使って前と同じ笑顔ができるくらいになったんだ、今戦場に連れて行ったら、前のような状態に戻ってしまうかもしれない。それだけは絶対に避けたい。)
そんなこと考えながら、どうにか説得しようとするアクフだが、ナルは少し心呼吸をして力強く反論をする。
「アクフ、私はもう弱くないよ。もう、私自身を隠したりしないし、私にはガイネークっていう神を模した魂塊みたいな強さを持つ魂塊がいるし、ちゃんと毎日強くなるために鍛錬もしていたんだ。それに私はアクフに大きな恩があるし、なにより私自身がアクフの役に立ちたいと思っている。これは私のわがままかも知れないけど、絶対に足手まといにはならない。」
そばに出てていたベリープルも、ナルなら問題ないと言わんばかりに体を動かしていた。
それを見たアクフは、今まで見てこなかった目でナルを見てみる。それは、本来少女であって戦闘するべきとはいえない年齢が故に一切つけてこなかった、敵の能力を測るような目だ。
以前のアクフであれば、精度は口が裂けても良いとはいえないものだったが、現在は王暴の力を解放しているため、殆違わない程の精度になっている。
その目で見てみると、確かにそこまで気にしていなかったが、この戦いについて行くことができるくらいの力がついていることが見て取れた。
「分かった…………俺には自分の軍を自分で決めることができる裁量権を与えられてる。そこまで来たいのだったら、一緒に行こう。」
「ありがとう!準備は出来ているから今からでも行けるよ。」
「分かった。この戦いではラミも加勢してくれることになっているから、まず戦場に行ってラミと合流する。この状況で呑気に馬車等で移動するわけには行かないから、俺が王暴の力を使って戦場まで飛んでいく。準備ができているんだったら今から行くぞ、俺の背中に魂塊を使ってしっかり落ちないように掴まってくれ。」
そう言うと、ナルは昔のことを思い出しながらアクフの背中に掴まった。
しっかり掴まっていることを確認して、アクフは家の外に出て、王暴の力を開放して足に力を入れる。
髪が赤みを増して、毛髪が真っ赤に燃えたぎるよう赤くなった。
(正直この力を使うのは初めてだから、上手く使えるかはあんまりわからないんだよな。それでも、体の感性はこれができるって言って肯定しているけど。でも、ここでしくじれない。今は愚直に進むんだ。)
そう思って、アクフは少しの不安を抱えながらも、飛び上がって戦場となっている場所まで飛んでいく。
――
ところ変わって、防衛線。
現在はファラオによって見渡しやすいように辺りを整地した影響で平地であり、ファラオの奥には城壁があってその奥には避難できない民が怯えている街がある。
ここでは、他の御仁が対処できなかった護神教の信徒が進行してくる。
本来では、軍がなんとかしても街に迫ってくる前に対処すべきなのだ。しかし、今回は相手が世界連合とも言える程度の戦力と兵の数を保有している護神教であるため、流石に全て対処するのには無理がある。なので、ここが、最終防衛ラインということになる。
そこでは、宣言通りファラオが他の兵を鼓舞するため、先頭に立って敵軍が来るのを待っていた。
(流石に、我が軍は優秀だ。相手が相手なだけにもう少し進軍してくるかと思っていたが、推測よりも少ない。効率よく対処できている証拠だ。これは今まで死力を尽くし集めたかいがあったというものだ。現在、我の寿命もまだ余裕がある。であるならば、できる限りここで他の兵が手こずるような敵を討ち滅ぼして、勝利に導かねば。)
そう思いながら、ノルトラを使って相当強化されている視力を使って戦況を見回していると、
「私は護神教が誇る、選ばれし強者に与えられる称号のセブンエンジェルが一人!マケエルだ!人類の敵である王暴に加担し、この世を破滅に追いやるこの世の反逆者共よ!大人しく我が天使魂塊によって浄化されよ!」
マケエルが大軍を引き連れて、今城門を突破して王暴に加担した逆賊としてエジプト国民を害をなさんとやってきた。
狂信者の叫びが、聴力を強化しているファラオの耳に強く突き刺す。
そして、マケエルが自らのノルトラであるシマダエルの個別能力、『空間干渉』を使って、ファラオのもとに剣を構え瞬間移動して、斬りかかる。
不意をつかれたこともあり、ファラオは避けようとしたものの、避けきることが出来ずに剣が腕を通って深い傷ができる。
「全軍!我を気にすることはない!攻めてきた兵を一人残らず殺せ!」
そう言って、ファラオはソフィーナトシャンシンの『九柱・大気の神』を使って、全軍を敵軍の元まで飛ばす。
(相手は相当の実力者のようだ。ここはソフィーナトシャンシンの真の力を見せる必要がありそうだ。)
そう思いなら、ファラオは即座に自分の寿命を代償にソフィーナトシャンシンを具現化する。
「これは!?」
その姿は、一つの船。ただし、そこには数々の優秀な魂塊使いの魂がいくつも詰められており、立たの魂塊とは一線を画す黄金で、見たものすべての視界を遮って、何もすることが出来なるくらいの輝かしいまさしく太陽の船といった様相をしていた。
本来、太陽の船はファラオが死後死の国に行くための、この世のものではない乗り物であるがソフィーナトシャンシンは現世に現界している。しかし、その能力を十分に行使するには寿命が必要だ。そのために使いすぎてしまえば、本来の太陽の船と同等の働きをしてしまうため、この名前がついている。
「さて、異国のセブンエンジェルという者。よくぞここまで来たな。一応聞いておくが、ここで降参すれば命までは取らないぞ。」
ファラオがマケエルの答えを予測がつきながらも、一応聞いておくべきだと思って聞く。
「何を言っている!この反逆者が!我々に粛清される対象であるというのに、降参しろ?冗談ではない。これだから、王暴などを庇うような奴らにはろくなものがいない。ふざけないでもらえいだろうか!」
と、憤怒しながら『空間干渉』を使ってファラオの真上に瞬間移動し剣を突き刺し攻撃するというなの否定のお返事をよこしてくる。
しかし、今度の攻撃はファラオも予測できていたため、『九柱・大地の神』を使い土の防御壁を作って身体全身を覆う。
それによって、衝突した剣の勢いはなくなり、 軌道がそれて地面に突き刺さる。
「あ、世界から一定の警戒をされている国の王がこの程度で死ぬとは思っていませんが、これはどうですか!」
そう言って、マケエルが『空間干渉』を使って無数の武器をどこからともなく移動させてきて、ファラオの真上の大気圏と限りなく近い高さに隙間無く敷き詰めて落とす。
(………………?先程とさほど変わらない攻撃。先程、この程度の攻撃では傷1つも与えられないということを認識しておいてこれか。なにかの罠か、警戒しておこう。それに、警戒すべき存在として言われていたセブンエンジェルが、この程度の木っ端兵士同様の力しか見せていないのは気になる。)
そう思い、敵がセブンエンジェルの中でも最弱な可能性を考えながらも、できる限り生力の消費を控えたいと考え具現化したソフィーナトシャンシンですべての武器を防ぎ、ついでに武器を船の中に格納する。
しかし、この時点でファラオがソフィーナトシャンシンを使って防御するのに気を使ってしまったために、マケエル本体の動きに関して見落としがあったのだ。
ファラオの嫌な予感が当たった。
ファラオの上半身には無数の武器が突き刺さっており、普通に刺されたにしては少ない量の血を流していたのだ。
傷ついた内臓から出た血が血反吐となって出る。
(あやつの能力。恐らくこの空間を干渉する能力に間違いない。それと、わざと弱いふりをさせて油断させてきたということは空間干渉にはある程度の制限があると見た。どちらに今の我を舐めている状態で最速で決着をつけるのが最善だ)
そう考えて、ファラオは生力の出力を上げ一気に仕留めるため瞬時に『九柱・再生の神』を使って、大きな羽を体に纏って体に刺さってしまっている数多の武器を摘出して、大きく空いている体の穴を回復させる。
そのまま、『九柱・守護の神』を使い体をいかなる攻撃も通らぬようにさせた。
最後に身体強化で強化された踏み込みで、マケエルの神経系を置き去りにするよう一瞬でマケエルの元へ向かってぶつかり、街に被害が出ない場所まで飛んで『九柱・戦争の神』を逃げられないようさせてから起動させ。
爆発させる。
爆発した瞬間、耳を割るほどのけたたましい音が空気を割り、爆心地は今の文明度では測れないほどの温度にまで上昇して、直径100程の爆煙が上がる。
これは巻き込まれたほとんどの生物が息絶えるほどの威力である。
当然、そんなものに巻き込まれたマケエルが無事なはずはなく。跡形もなく消し飛びもう塵も残っていない状態になった。
(ここで、この力を使ってしまうと、今後の継戦に悪影響が出かねないがそれでもあのセブンエンジェルが本気を出してきた時に考えられる被害に比べれば些細なことだ。)
そう思いつつ、ファラオは少しふらついている体を動かして、所持者であるマケエルが消滅したことによって、周辺に漂っていたシマダエルを敵のもとに渡らないように回収し、ソフィーナトシャンシンに乗って自らの軍を指揮するために元の場所に戻っていく。
恐らく後十数話くらいで完結します。




