第80話協力
王暴の魂塊に協力するという約束を取り付けたアクフは、早速御仁としての責務を終えて、これから来たるであろう戦いに備えて鍛えていた。
アクフは今の状態で一番早く強くなるのは魂塊を使って今ある技を強化することだと判断したので、『雲剣纏』を作ってただひたすらに強化するために少し形を変えつつ技を繰りだしていた。
(初めてから結構な時間が経っているが、まだまだ元気がある。いつもなら今ぐらいには息が上がりだすんだが、不思議と今はそんなものは一切感じない。これも王暴の力の影響というものなのか。)
アクフは今までに感じたことのない位の体から溢れ出してくる活力を感じながら励むが、それでも新しい技の手がかりは掴めそうにはない。
少しもどかしさを感じながら、アクフは愚直に技を出し続けていると、そこに今まで何処かに行っていたバファイが戻ってきた。
『キュュュ!』
バファイはアクフの父親ではない状態で、アクフに話しかける。
「あ!お父さん…………じゃなかった。今はバファイなんだよな。どうしたんだ、今日は外には出ないのか?珍しいな。」
『キュュュ!』
バファイは新技について検討もついていないアクフに対してなにか語りかけるように、鳴く。
アクフにはその鳴き声が、自分に対するアドバイスに近いものだとわかったが、その明確な内容が分からなかったために少し首をかしげながら考える。
(バファイがこんなことをするなんて珍しいな。普段は俺に普通に鳴いてくるだけ何だが。)
「なるほど、がむしゃらにやるだけでは駄目で、もっと正確なプランを立てて行ったほうがいい。と言っているようですね。といっても、アクフなら近い答えにたどり着いているとは思いますが。」
「いや、それでも精度は完璧じゃないからな。教えてくれてありがとうエネアーゼ。それにしても具錬式魂塊術を使っていても喋れるんだな。」
「もちろんですよ。なんたって私は普通の魂塊ではなく、特別なものですから当然ですよ。これまでは私が喋って戦闘支援をする必要性を感じなかったのでやらなかっただけです。」
「…………つまり、今はそんな特別な存在であるエネアーゼから見ても、喋る必要性を感じる良くない状態になるのか。護神教との戦いは。」
「ええ、彼らはただでさえ狂信者で普通の戦士は四肢が一本程度なくなったぐらいで死にますが死ぬまでは死なない厄介な存在だけではなく、今回は最終決戦だと目論んでいるために、圧倒的人数と質を揃えています。アクフが避けている殺人もやるしかありませんし、狂信者であるために交渉も通じないところも面倒極まりないですね。」
「そうだな。俺が前に戦った時も一筋縄では行かなかったし、結構な犠牲を払うことになっているから、彼奴等の危険度ならわかっているつもりだ。でも、王暴の力があれば意外となんとかなるんじゃないか?これまでも俺が死にそうな時にはなんとかしてくれていたみたいだし。」
「いえ、油断はどんな強者でも下剋上される原因になりますからね。ここは私から技の原型を提案してそれを溢れ出てしまっている王暴の力で習得してみてはどうですか?」
その言葉を聞いたアクフは疑問に思った。いつもは面倒くさがってこういったことは、少し聞いただけで、興味なさげに黙り込むのに、今回はやけに親切な対応をしているなと。
「エネアーゼ、もしかしてここにも前の集落でもあった不調があるのか?」
「若干言葉を選ぶようになって、ちょっとうざさが増してますね。くれぐれも、私以外にはそんな口を聞いてはいけませんよ。要するに私がアクフにこんなに積極的で、協力的な姿勢を見せているのかについて疑問に思っているんですね。」
「ああ、包み隠さず言ってしまえばそうなってしまうな。」
「そうですか。こうなるのも分かっていましたし、今であれば話しても一切の不都合は無さそうなので、言っておきましょう。私はバファイ、いえ貴方の父親から取引を持ちかけられてそれに同意した結果として貴方の命を保証する責務が発生した為です。ちなみに対価は貴方が王暴の素質を持つせいで無駄に成長して、隠れるには余分だったためバファイが溜め込んでいた生力です。ちなみにその取引の中には私が持っている、あまりに強すぎる力の隠匿も含まれていました。」
「そうだったのか!?つまり、これまでエネアーゼが出していた力ってどれくらいなんだ?」
「さて、どれくらいだったんでしょう。私も細かいことは気にしない系の完璧存在なので覚えていませんね。」
「まあ、いいか。どれくらいの力を秘めているかなんてこれから特訓すれば分かることだしな。」
「ですね。ではまず最初に提案するのは、技ではありませんがハンクを常時全ての実力を引き出した状態を継続して戦うことから出来るようにしていきましょう。本当の所であれば『空削』を使った技を一刻でも早く作り出したいところではあるのですが、今のアクフに必要なものから始めます。今日中には出来ると思います。」
そう言って、アクフはエネアーゼから提案される技を習得するために励むのだった。
――
アクフが新技習得の為に励んでいる時、ソルバは部下を数名引き連れファラオから命令されてアクフが様々な国を巡ることになった元凶の遺跡のもとにやってきていた。
その目的としては援軍の要請である。
護神教はスパルタで主に広まっている宗教ではあるのだが、その範囲はスパルタだけではなく、他の国まで届いているのだ。
そんなものにただの軍隊をぶつけても、いたずらに兵を減らしてしまうだけ。
しかし、近隣各国に協力を要請したとて、良いところで内通者が大量に送られてくるだと考えたファラオがアクフの話を聞き、持っていた地図を借り協力をしてくれそうなところである竹戸などを見繕って来ているのだ。
慎重にアクフ達の足跡を辿っていたソルバ達は無事に竹戸の地にたどり着いた。
そこは竹が生い茂っており、吹き抜ける風が少し心地よいと思える竹林であった。
もちろん、アクフと義刀が出会った場所である。
「諸君。我々はアクフがたどり着いたという竹戸にたどり着いたぞ!ここからはアクフが言っていた竹戸の王へ会いに行く。こちらからは何も連絡が取れていないが、アクフの知り合いだと言ったら話くらいは聞いてもらえるそうだ。ということで今から王のもとに向かう。諸君には言わなくてもいいかもしれないが、アクフの知り合いだと言っても無礼を許すかどうかは分からない。くれぐれも馬鹿な気を起こすなよ!」
そうソルバがその場にいる人間に声をかけると、一人の人間が近づいてくる。
ソルバは気配から、只者ではないと思って構えるが、その姿を見て武装を解除する。
「そなたらは、その格好から察するにエジプトから来た人間か?」
近づいてきた人間とは義刀だ。
「その高貴な見た目。ただの御人には見えません。もしかして、貴方がこの国の王、義刀様であらせられるのでしょうか?」
ソルバができる限り当たり障りのないように尋ねると、少し怪しむような顔をしつつ、ソルバが持っている魂塊を見て自身が怪しいんでいたことはないと察する。
「ああ。某が想護義刀だ。見た目だけで判断すればそなたらはエジプトから来たものか?」
「はい。私の名前はソルバといい、アクフから貴方様のことを聞き、頼みたいことがありここまで足を運ばせてもらうこととなりました。」
「分かった。アクフ殿のことを知っていることからも、そこら辺の族でないことは分かった。であれば、ここで話をするのは少し忍びないな。某の城にて頼み事とやらを聞くとする。今から控えているものを出す。時間がないのなら城に直行して構わないが、そうでないのなら観光していくがよい。某は先に帰っておく」
そう言って、義刀は外交向けの威厳のある態度を取って城に戻っていった。
ソルバ達は一刻も早く話をつけに行きたいと思っているので、観光などをせず城に直行した。
城の内部。そこはかつて義刀が父親から現状を告げられて苦言を呈されていた場所。しかし、今では無事に『天下絶断切り』を習得して王位を継承しており、前には父親が座っていた場所に座っている。
「早かったな。この時間で観光は不可能だ。つまり、それほど急ぎの用なのだな?」
「はい。できる限り早くお伝えしたことにあります。」
「宜しい。ならば言ってみるが良い。エジプトには世話になったアクフ殿がいる故、その恩義を返すためにできる限りのことをしよう。」
「ありがとうございます。それではいきなりにはなってしまいますが、言わせていただきます。これから来たる戦争の為に援軍を出してほしいのです。」
その言葉を聞いた義刀は怪しむように、顎の当たりを触ってソルバのことを見つめて、口を開く。
「援軍とな………………相手はそこまで強大な奴らなのか?かの大国であるエジプトがなんともならないくらいのものなのであるか?」
「正直に申し上げますと、エジプト軍でもなんとかなることはなる相手ではあります。」
「では、なにゆえ某のところへ来た。自国で対応可能なのであれば援軍なぞ一切必要ないように思えるのだが?」
「それに関しましては、こう聞いてからのほうがわかりやすいと思いますので、聞かせていただきます。義刀様は護神教というものをご存知でしょうか?」
「護神教か。確か国内の一部のもの中でも流行っている宗教かつ、アクフ殿から聞いていた宗教であるな。もしや…………相手はその護神教のものなのか?」
「お察しの通りです。ですので、脅威の士気を発揮してできる限りこちらの戦力を削ぎに来るでしょう。その時に削がれないように人員を増やして、一人でも多くの兵士や騎士の命を守る為には協力が必要となります。いきなりとなってしまい大変申し訳ないのですが、良い返事を期待しています。」
その言葉を聞いて義刀は一瞬考えるような素振りを見せた上で、こう答える。
「最後に問いをする。この問いの内容に仮にも偽りがあったとすれば、某の恩人を軽んじたと見なし、王家に代々継がれてきた『天下絶断斬り』を使い某自らが斬る。本当に今のエジプトにはアクフ殿がいるのであろうか?」
威厳を出してもはや威嚇でしかないような強い語気でソルバを問うが、ソルバは一切の間を置かずに、
「はい、います。現在は私と同等の役職である御仁として活躍しています。」
「………………成る程、即答に一切曇りや動揺もない。これはそなたの言葉は誠であるのだろうな。ならば話は早い。」
義刀は奥に控えさせていた家臣たちに刀家にしばらくの政治の実権を渡し、半分の軍を遠征に出すと伝えよと言った。
「報酬はこちらが言い値で、とこの国の王であれば言いたいところではあるが、この戦いは我が国の国民性を示すための戦いでもある。某が民の手本となるのだ、報酬としてはエジプトが竹戸まで来た道の共有と外交する際に少し融通してくれるだけで構わぬ。」
「ありがとうございます!では、道を共有するために同行している部下をここに残します。」
「さて、そなたはまだやることがあるのであろう?ここに長居していいようには見えぬ。世間体謎期にせずさっさと行くが良い。某が許可する。」
「お気遣いのほど感謝いたします!では失礼します。」
これで、協力相手が一人増えた。しかし、残念なことにこれだけではまだ足らない。ソルバの協力者集めはまだ時間を必要としそうだ。
――
ソルバが次の協力者と会う為に走っている頃。
義刀はある蔵に入っていた。蔵はあまり用のないものしか入っていないのか、あまり管理されている感じはなく、ほこりが少し舞っていている。
そこにはかつての反乱の後末のために差し押さえた物品が沢山転がってあり、その中の1つを拾う。
それは、首謀者が暴走する事になった元凶である鬼人覚醒法であった。
(某はアクフ殿に鍛えたもらったこともあって、無事に『天下絶断切り』を習得することと相成ったが、それでも尚、力が足らないと思っている本性が心の中に存在する。それも、民を守るために一時も早く欲しい。しかし、鍛錬で力をつけていたら時間が足りぬ。検証もしている。古くから伝わる鬼人についての書物も網羅して、安全に運用する方法も理論だけなら完成した。今の某であれば、あの頃から強くなっているアクフ殿に並ぶことなど不可能。ならば……………………!)
義刀は鬼人覚醒法を開いて内容を読み始める。




