第77話アクフの中に眠っていたもの
『…………今言ったことに一切の誤りが無いと自信を持って言えるか?確かに見た目は俺の子孫のような見た目をしているが、俺の姿を見た後からのものだからな、作り物かもしれない。もしお前が、今代の王暴でないとしたら、無礼にも俺の眠りを妨げた痴れ者に俺はどんなことをするかわからないが。』
王暴の魂塊は脅すように、かつバファイの本性を探るために問いかける。
『はい。この言葉に一切の偽りはありません。疑うのでありましたら、今代の王暴を連れてきましょうか?今は流石に無理ですが、近い内に連れてきます。力を貸してもらうのはその時からで問題ありません。それと、必要であれば、後日来る今代の王暴がどんな人生を歩んでいるのか伝えることも出来ます。』
『そうか、たしかに知っておけば会話は幾分円滑に進むだろうな。話せ。』
その言葉に従ってバファイはアクフのこれまでについて話をする。
話をすべて終えた後、王暴の魂塊の眼力がバファイを貫いて、「うむうむ。」と言った後、再び坐禅の様な体制になって、目を閉じる。
『分かったでは、俺の子孫の到来を楽しみに待っていよう。だが待つといっても、いつまでも、という訳ではない。俺にも気というものがある。いつまでも待たせるようだったら俺の方から向かって、手痛い手土産をくれてやろう。行くがよい。』
そう言って、王暴の魂塊はバファイを遺跡の外に出した。
(よし、これで先代様との交渉は出来た。後はどうやってアクフと会わすかだが、ここに連れてくるのに夢を使って場所を示す。といった方法もあるが、アクフだったら多分夢の内容はそこまで真に受けない。だったらここは、俺の姿を現して正体について言及した後に、アクフに全ての記憶と、力を返還して自分が王暴だと自覚させるのが一番か?いや、無駄に力を開放させてしまったら、護神教の進行が早まるだけだ。無辜の人間の被害はできるだけ抑えたい。と、なると…………。)
そう考えながら、バファイはアクフのもとに向かって飛んで行った。
――
アクフは、食事を終えた後にイザにお礼を言って家に帰って、自分の部屋に戻って少し休憩しようと部屋に向かって廊下を歩いていた。
いつも通り、と言ってもこの家に住んでからはそこまで長くはなく、あまり見慣れていない廊下を歩いている時、アクフは信じがたい者を見た。
それは、十年前以上に戦争によって亡くなっていたはずの、アクフの父親であった。
(え、なんで死んだ筈のお父さんがここにいるんだ?)
アクフは、そう思って再度見た瞬間に涙腺が崩壊して倒れ込んだ。
『アクフ、起きなさい。今現れているのはアクフに伝えないといけないことがあるからなんだ。俺の話を聞いてくれるか。』
アクフはその発声のされ方からして、間違いなくこの世にいる者ではないと察しながらも、その存在を本物だと認知して、立ち上がって返事をする。
「うん。でも、お父さんは本当にお父さんなの?」
『ああ、何なら、アクフの子供の頃に好きだったものだって言える。』
アクフはそう言っている父親の目を見て信用出来るかもしれないと思って、父親の話に耳を傾けることにした。
『アクフ、落ち着いて聞いてくれ。多分俺がこれから話す内容は、アクフにとってはとても重荷になってしまうことだ。でも、アクフはこれまで何度も死にそうになって、そして、その度に強くなっていった。だから、これから話すことを受け止められるようになっていると思う。』
アクフの父親はそう前置きをしてから話を切り出す。
『まず、さっきも言ったが、アクフはこの数年で何回か成長した自分でも死にそうになるような敵に接敵したはずだ。そこで意識を失っても、なんでアクフが生きていたと思う?』
「それは仲間のみんなが頑張ってくれて、俺を助けたからじゃないのか?」
『いや、その敵は仲間たちが頑張ったところで、どうしようもならなかったくらい強かった。それに相手は俺達を必ず殺すという気配に満ちていて、逃げおおせることすら、普通は出来ない。俺はアクフの身近で見ていたから分かる。』
「そうだったら俺はなんで生きていたんだ?運が良かったってことなのか?」
『いや、そういうことじゃない。アクフが習得している『暴剣』と『燕回連斬』はどうやって習得したんだ?』
「俺の奥から溢れ出した覚えのない記憶が教えてくれた。」
『そうだな。そのアクフに覚えのないようにしてしまったのは俺だ。今ここで謝ろう。』
「え!だったら、あの記憶って。」
『一切の偽りや、誇張もなく。アクフの幼い頃の記憶だ。そして、記憶にあったアクフの顔と今の顔が違って見えたのも俺のせいだ。そして、アクフがそんな凶悪な敵から生き残れたのは、アクフの中に眠っている力を、あのときに限って少しばかり解放したからだ。』
「俺の中に、力…………そんなもの、いや、確かにあったような気がする。」
『そして、この眠っている、いや眠らせた力が本題なんだ。その力というのが、王暴のものなんだ。』
「俺が王暴?そんな訳ないじゃないか。なんで俺がそんな強大な力を持った存在って言うんだ!そんなものを最初から持っていたら、もっと失わなくて良いものがあったのに!」
アクフの中で、今まで失ってきたものがフラッシュバックする。攫われて、長い事引きずることになったナルのトラウマを植え付け用なことになったこと。親友や師匠、後輩が戦場で死んでしまったこと。それだけではない戦場だけでも大量の知り合いをなくしている。
当時は自分に力がないから仕方ない。力をつけて、今度こそ誰も失わないようにしようと思って身を震わせたものだが、そんなことをしなくても、元から力があったから数ある失ったものを失わないように出来たのだ。
そして、アクフの心は罪悪感に囚われて、荒れる。
『それは………………どうしても、たとえ見殺しのようなことになっても、誰からもバレないように隠しておかなければいけなかった理由があったんだ。』
アクフの父親の目は一切のふざけや、邪な感情は入っておらず。ただまっすぐに、アクフに信頼されたいと思って向けている。
アクフは内心、信じられないような不快感に襲われているが、それでも久しぶりに再開をした父親の言葉にふざけた意思は一切なく事実としてそうだったと思いたいような気持ちに溢れる。
(確かに、俺に力があれば救えなかったものがあるけど、それを使ってしまったら行けない理由があったと言うなら、それを聞いてからのほうが良いんじゃないか。よし、よし。)
アクフは己の中で溢れるものを必死に抑えて、質問する。
「その、隠して置かなければいけなかった理由ってなに?」
『アクフも分かっていると思うが、護神教は王暴のことを目の敵にしている。そして、この世界の不何処でもその力を少しでも過剰に使用してしまうと、居場所がバレてしまうような能力を持っていて、その上にアクフが接敵してしまえば、仮に王暴の力を全力で使ったとしても勝てなくて、殺されてしまっていたんだ。そして、救えたはずの人間を見殺しのような真似をしたのは、王暴の本来の役目にあるんだ。』
「役目?」
『そうだ、役目だ。アクフはデオルという元を正せば遠い遠い親戚程度には相当する人間から、王暴は、村を守る存在だったと話を聞いたと思うが、王暴の役目はその数千年という寿命の中で次の王暴の誕生まで世界を害する敵と立ち向かって、打ち負かして駆逐することなんだ。そして、数千年後には圧倒的な力を持って、この世界を我が物にしようと人間を駆逐しながら進行してくるものがいると言う先代の王暴様がした予言があるんだ。このためにも子孫を残して次の世代に繋げないといけなかったから、見殺しのよう真似をしてでも死んではいけなかったんだ。』
「そう、なんだ。理由については分かったよ。」
アクフの中では今でも渦巻いているものがあるが、父親の真摯な態度によってどんどん整えられていく。
「確かに、もう今になって後悔しても何も変わらない。俺に力はあったけどそれを俺は知らなかったし、自由に使える状況じゃなかったら仕方ないって思うことにするよ。それで、最初に言っていてた伝えないといけないことって何?」
『それは、アクフに必ず行ってほしい所があると伝えに来た。正直に言って、今の状態ではどんな方法を使って強くなったのかはいまいちわからないが、本来の王暴より強くなった教皇と、大きくなりすぎている護神教を止めることはできない。だから、先代の王暴の魂塊がいる場所行ってほしいんだ。ああ、これは絶対に守ってほしいんだが、一人で行ってくれ。王暴であることを今の段階で周知させてしまうことはまずいんだ。』
そう言ってアクフの父親は地図を持ってきて、一つの場所を指した。
『ここにいけば、アクフが今の状況を好転できるものがある。少し、その好転できるものというものが気性難ではあるが、アクフなら大丈夫だろう。』
そう言って、バファイは最後に伝えないといけないことを伝えるために、元の姿に戻る。
『これまで、ずっとアクフの隣に居たのに黙っていて悪かったな。アクフが俺達が死んだと思って悲しんでいたも、本当は姿をだして励ましたかったが、残念なことに出来なかった。本当にこの姿になってからは、俺はアクフに嘘を言ってばかりだな。これじゃあ親として示しがつかない。…………けじめとして最後に本当のことを言っておく、俺は音を操る魚の女神ハトメヒトを模した魂塊ではなく、暴族に伝わっていた欺くことによって人間を守ったとされる神の魂塊だ。………………流石に本体の力を使いすぎた。これで俺の意思はしばらくバファイの中に埋まってしまうかもしれないが、今後も問題なくバファイとしての力が使える。それに、俺の人格はしばらくすればまた出てくる。そのときには一緒に大道芸のネタを考えて遊ぼうか。』
そう言ってバファイは目を閉じて、再び目を開けてアクフに対して、
『キュュュ!』
と鳴いた。




