第72話危機
『ついに感づかれてしまったか、今回は誤魔化しようがない。』
バファイはアクフがあまりにも色々ありすぎて疲れて眠った時に、独り言をしていた。
その声に今回も興味を持ったエネアーゼがやってくる。
「でも、あなたの能力でしたらなんとかなるのではないですか?まだ偽装に使う生力は残っているのでしょう?」
『いや、一回偽装が完全にばれてしまったらそれっきりなんだ。だから、今の状態は大分不味い。』
「そうですか、でしたら存在としての格が高い私がなんとかしてみましょうか?」
『多分だが、そうしたところで相性の問題ですぐにでも偽装はばれてしまうだろう。しかし、まいったアクフの成長度的にはまだ王暴の力を使っても、単純な教皇の力に及ばない。』
「そういえば、前にあいつの運命を決める力は理論的なものであり、操れないくらいに強くなれば問題ないと言っていましたがそれ関連ですか?」
『ああ、今の状態では上手く行けば善戦はできるかもしれないというだけだ。善戦できたとしても、最終的には教皇のちからによって死の運命が確定して詰む。まだ一歩手が足りない。』
「そうですか。なら早急にできる強化をしたいですが、どうしたものでしょうか。世の中すぐに強くなれるほど甘くはありませんからね、私を除いて。」
『それなんだが、手がないというわけではないんだ。』
「本当ですか、一体どんな手が?」
『王暴というのは代々違う生物に受け継がれていくものなんだ。だから、アクフの先代の魂も存在するわけで、王暴ほど強大な存在になれば単体で魂塊になることも可能だ。そして、先代はどうにかして魂塊になる方法を探していた。と記録に書かれている。だから、その魂塊を探す。』
「そうなんですか、そんな存在が。探し物なら私にもできますが?」
エネアーゼは生前から強大すぎる存在が一人で魂塊になった。という話に興味が湧いたのか前のめりに協力する姿勢を見せる。
『いや、結構だ。エネアーゼにはアクフを任せているしな。』
「…………仕方ありません。そう言われたら引き下がりましょう。それにしてもここまでしてアクフを助けるのはなぜなんですか?ただの使命にしては大分焦っていますが。」
『そのことか。アクフ……これは王暴全体に言えることなんだが、そもそもその存在はこの星を守るためにこの星の意思が生み出した存在なんだ。その存在は固定でなくさっきもいった通り代替わりがある。そして、その周期はちょうど二千年。これはどうやっても崩れない絶対的な法則だ。』
「なんだか、樹護り族と似ていますね。」
『ああ、それは樹護り族自体が王暴を模して作られたものだから、似ているもの当然だ。話を戻すが、星を守る存在でその生命の寿命は二千年。つまり、代替わりするその生物は生涯を定期的に現れるこの星に害する者の排除に費やすんだ。その代わりに特例を除いて世界でトップと言える圧倒的な力を得る。ではそんな存在がいない期間が存在したらどうなってしまうと思う?』
「まあ、そうなってしまったら害する者とやらに侵略されますね。現実的に考えたらですけど。」
『そうだ。だから俺はアクフを個人的な感情を排しても、絶対に守らないといけない。ということでアクフは任せたぞ。後、もうここまで来たらアクフの能力を縛っておく必要もない。むしろ徐々に開放して慣れてもらったほうがいい。と判断したから開放することにする。もし、アクフが戸惑っていたら上手く説明しておいてくれ。だが、本当のことは言わないでくれ。多分、色々なことが起こって困惑しているアクフの心には少し酷なものだからな。』
「しかし、今黙って本番になって初めて言うもの中々に酷だと思いますが、どうです?」
『それに関しては、多分俺から言わないとアクフは信じないから問題ない。俺はしばらく捜索で忙しくなっていまうからな。だから後は頼んだ。』
そう言って、バファイは忙しなくアクフの寝ている部屋から出ていった。
「全く持って忙しない。ああいう所はあんまり似ていないんですがね。」
そう言ってエネアーゼはアクフの側においてある鞄に入って、省エネモードに入った。
翌日。
アクフは信じられないような気分で朝を迎えていた。
(俺がエジプトの軍の中で最も階級が高い役職?もしかしてまだ夢の中なんじゃないのか?)
そう考えて、体中を殴ってみるが確かな痛みが体を巡る。
明らかに夢ではない。
(だったら、これからどうしよう。取り敢えず今は王宮の部屋でお世話になったけど、一度武器とかを整理する為にファラオ様が建てられたっていう家に行きたいけど、この様子だと無理そうだよな。)
そんなことを考えつつ、アクフはいつも通りの鍛錬をするため、朝早くだというのに目覚めて木刀を持って大きゅうで開けた場所に移動する。
最初は外に出て行おうとしたが、ここで無断に出てしまったら面倒事になりそうだと思ったため、アクフは王宮にある中庭に向かった。
(あっ。)
そこにはソルバ先にいて、大剣を振るっていた。
アクフは挨拶をして横に並ぶ形で感覚をとって素振りを開始した。
素振りを開始してから数分のときが経った頃だった。自らの鍛錬に励みつつも気になった為アクフの素振りを見ていたソルバが話しかけてきた。
「アクフ、数年見ない間にものすごく筋が良くなってるな。」
「はい、これでもあの戦争が終わって捕虜になった後も鍛錬はしていましたから。」
「そうなのか…………。それにしても、こうして話すのなんて何年ぶりだろうな。」
「確か、俺の記憶が間違っていなければ二年から三年くらいですかね。」
「そうか、そんなにときが経っているなら強くなるな。どうだ、魂塊の方は、神を模した魂塊を三体も持っているみたいだが。」
「新しく増えた神を模した魂塊は旅をしている最中に、困っている人がいたので助けた時のお礼で偶々金を貰って作ったもので、殆ど運みたいなものですけどね。」
「いや、そういうことじゃなくて能力だよ。」
「……?確か俺の魂塊の個別能力はファラオ様に見られているはずなので、記録でわかるはずでは。なんで俺に聞くんですか?」
「確かに、お前の魂塊がどんな能力を持っているのかはわかるが、そんなことよりアクフはどう思っているかってことだよ。その魂塊を使うのは紛れもないアクフ自身なんだからな。」
「そうですか、だったら強いですかね。個別能力は正直今でも把握しきれていないんですけど、それでも十分強いです。『雲剣纏』はこれまで課題だった遅れの少ない防御手段として優秀ですし、『生力向上』はかなり珍しいらしい個別能力で優秀ですしね。」
「強いのか、なら良かったな。そういえば、アクフは普通の魂塊術以外も使えるのか?使えなかった場合は俺から教えることにはなっているが。」
「やっぱりソルバ団長……いや今は隊長でしたっけ?も具錬式魂塊術を知っているんですね!」
そう笑顔で目を輝かせながら答えたアクフの魂塊術にソルバは少し戸惑った。
「呼び方は今は殆ど同じ立場だし、呼び捨てで良いぞ。それと具錬?式魂塊術?そんなものは知らないな。俺達が使っている魂塊術は人纏神術だ。これは魂塊を体に宿して同調を図って力を底上げするものだが、その具錬式魂塊術はどんなものなんだ?」
(えっ、もしかして具錬式魂塊術ってあんまり有名なものでもなかったのか?まあ、でもわからなかったら教えたら良いだけだしね。)
「具錬式魂塊術というものは、魂塊を扱うにあたって通常技能である纏わせると、実体化させて形を変えるをほとんど同時に行って半分は実体、もう半分は霊体で能力が効率良く使える状態の武器を作ることです。」
「そうなのか。それって防御力はどうなんだ?」
「武器を作るだけなのでそんなにはないんですが、魂塊の基本能力の身体強化が強くなって速くなるので、そこまで気にしたことはありませんね。攻撃が当たるときは基本的に能力とか武器で防いでいるので。」
「そうか、それじゃ具錬式魂塊術は基本攻撃特化なのか。基本的に全体をまんべんなく強化する人纏神術とは違っておるんだな。」
そう言いつつ、ソルバはなにか考えているかのような姿勢をとる。
少しの間考えた末に、ソルバは提案をする。
「アクフ、俺、具錬式魂塊術ってのに興味が湧いたから、久しぶりに模擬試合しないか?魂塊と真剣ありのやつ。」
「確かにソルバは回復能力長けていましたけど、流石に魂塊ありでやり合ったら、前に見た能力だったら取り返しがつかないことになってしまいそうですけど。」
「そこに関しては問題ない。今の俺は御仁に入って個別能力を磨いたから、大体の死傷に至らない程度の傷全般は元通りにできる。今なら殆ど命の取り合いはなしでの実戦に限りなく近い戦いができるぞ。」
(久しぶりにソルバとの戦いだな。ここを逃したらいつまた戦えるかもわからないし、やっておいた方が良いよな。それに新しい具錬式魂塊術武器もいくつか試したいし。)
「わかりました。ではどれくらいの数の武器を使って良いんですか?」
「あー、そういえばアクフは武器好きだったもんな。別にアクフがどうしてもって言うなら、複数個持ってきてもいいが。」
「では、最低限具錬式魂塊術武器を作れるだけの数にしますね。」
そう言って、アクフは武器を取りに自分の部屋に戻って、〘銃斬打旋棍〙とエネアーゼを持ってくる。
ソルバはアクフの持ってきた武器を持って来たのを見て、疑問に思ったことがあった為、質問する。
「長い刀みたいな方はわかるんだが、その独特な形状をしているそれは何だ?」
「これは〘銃斬打旋棍〙といって、剣撃と打撃とあと一つの攻撃を与えることができるものです。前に言ったと思いますが、昔から知り合いの鍛冶師のスドさんに作ってもらいました。」
「そうなのか、だったらこれからその武器2つがどんな武器になるのか楽しみにする。もう準備は大丈夫か?」
そう言いながら、ソルバは持っていた大剣を構える。
「はい、バファイは見当たりませんが、問題ありません。」
「できればバファイで戦いたかったが、そううまくいくものでもないな。じゃあ、始めるぞ!」
その合図に従って二人は己の高等魂塊術を使う。
(報酬として金を貰った時から新しい具錬式魂塊術武器を作ろうとしたが、あまり時間がなかったからこれくらいしかできなかったんだよな。)
そう思いながら、アクフは〘銃斬打旋棍〙とエネアーゼとディウルを合わせる。
そして、形を整え。
(これが新たな俺の具錬式魂塊術武器、『土鉄ノ浮刃』と使っているものがほとんど同じだから、『土雲ノ鉄』だ。)
その見た目はディウルの新たな個別能力である『雲剣纏』によって大量の剣が体を周回していし、『土刀竜』の土刀のを浮かせ、アクフの両手にはトンファーと言うよりも剣に寄ったものが握られている。
そして、アクフは『静虚双劇』もどきのような構えをとる。
人纏神術によってワヒドを纏ったソルバが、アクフの構えを警戒し突っ込んでその構えを崩そうとする。
しかし、その突進はアクフの周りを回っている剣達に弾かれる。そして、そのまま自立している剣達に切り刻まれそうになるが、大剣で大半の攻撃を弾いて後は体で受けることでダメージを負うことはなかった。
(この具錬式魂塊術武器は、今までの俺に足りていなかった防御力を重視したもの。この形態自体が戦闘において消極的なものでもある。この状態では『静虚双劇』は使えないが、大体の攻撃であれば防げる手数の多さを誇る。ソルバは団長補佐から御仁にまで上り詰めたんだ。きっと、なにか前よりも格段に成長している攻撃手段があるはず。だから、今やることは最大の攻撃を弾いて、この具錬式魂塊術武器の唯一の反撃を決めること。)
そう思いながら、アクフはソルバが大きく攻めてくるのを待つ。
ソルバは、自分が弾かれたのだから前と同じく、アクフがさらなる追撃を仕掛けてくると予測していた。なので弾かれていても大技を撃つ準備をしていた訳だが、実際には仕掛けてくることはなく、『罪人鰐食』をいつでも放つことができるようにして、アクフが考えていることを探るため考える。
(おかしい、前のアクフならもう今頃には飛び込んできて、俺と直接剣と剣でやり合っているはずだ。まあ、これだけの時間が経っているんだ。成長しているだけとも考えられるが、それにしてもなにかきな臭い。もしかしたら、俺が接近して大技を放ったときに、その隙をつこうとしているのか?なにか穴があるような予感がある。が、それ以外は、今は考えられない。)
結論を自分の頭の中で出したソルバは、アクフから十分離れて大剣を弓矢のように持って話しかける。
「何だ?アクフからは来ないのか。いかせてもらうと言いたいが、あの周りを回っている剣が邪魔であんまり攻撃しにくいな。だったら、『幾多の弓を統べる者』!」
巨大は弓が生成されて、弓矢のように持った大剣を弦とともに引っ張る。
そこには必ず、アクフが展開している防御結界とも言える剣の量を押し切る、というくらいの生力を注ぎ込んで放たれる。
その大剣はとんでもない速度でアクフのもとに飛来する。
(きた、ここは落ち着いてすごい速さだけど、これくらいなら。)
大剣はアクフを討とうと襲来するが、『雲剣纏』に阻まれる。だが、それでも大剣の勢いは崩しきれない。
次に、土刀で落とそうとするが、それでも半分もいかないくらいの勢いしか削ぐことは叶わなかった。
最後に『土雲ノ鉄』本体で、受け止めるように横に払ったことによってその大剣はやっと、勢いがなくなった。
そのことを確認したソルバは、アクフに反撃を許すまいとものすごい踏み込みで突進するが、
「『暴剣』。」
2つの剣による攻撃によって、逆に反撃を食らって体勢を崩し、アクフに詰められているような状態となった。
「アクフ、降参だ。これ以上やったら死傷が出るまでやり合うことになる。」
「わかりました。ありがとうございました。」
「いやー、まさかアクフがここまで強くなっているなんて、俺ももっと精進しないといけないな。」
と、ソルバが言っている横でアクフは内心驚いていた。
それは、そこまで大きな一撃として放ったわけではない『暴剣』が、急にまるで必殺技のような威力になったからだ。
理由は勿論、バファイがアクフから隠していたアクフの本来の力を解禁した事だが、アクフがそれを知る由もない。なので、アクフは考え始める。
(こんなこと…………そういえば結構前にあったな。あれはまだ師匠に教えを乞うていた時期に、的に向かって攻撃し続けるときで、間違って力を入れすぎて破壊してしまったときにも感じた。まるで自分の力ではないような。この感覚。でも、今回は少し違う気がする。なんだか、前はまるで当たり前のように自分のものではない力を感じていたけど、今回はそうじゃない。急に力が上がった。前々から感じていた違和感。俺が危機に陥ったときに訪れる謎の記憶の襲来…………少し考えたいな。)
この時のアクフは普段よりも冴えていた。それ故に、強い力が以前から体に流れ込んでいたことに強い疑念をいただいた。
アクフはソルバに一礼して自分の部屋に戻った。




