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王暴の魂塊譚〜家に隕石落ちたから旅に出る〜  作者: 大正水鷹
王暴編

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第71話転機

 アクフ達は試練を終えて帰ってきたナルを盛大に祝った。


 それから一週間ほど時が経ったある日のこと。

 

 アクフとナルの二人は久しぶりに二人っきりで釣りをしていた。


「この年になっても釣れないね」


 そうナルがぼやく。


「釣りにあんまり年齢は関係ないからな。それに前に比べたら全然ナルも姿勢が様になっているじゃないか。もしかして、俺と会う途中に結構食料調達で釣っていたんじゃないか?」


「いや、私はそんなにだよ。前にも言ったかもしれないけど、基本的にアクフを探す旅はスドさんにお世話になりっぱなしだったから、少しでも役に立とうかなって頑張って釣りでどうにか食料調達できないかなって、努力はしていたけど。」


「そうなんだな。やっぱりナルはいろんなことを頑張っているんだな。偉いな。」


「……ありがとう。」


 ナルがそう言ってから、しばらく二人には無言の時が訪れた。しかし、それは気まずさをはらんでおらず、ごく自然に安心できるものだった。


 だが、その無言の時を打ち破るものが現れる。


 その者の正体は集落に関することを終えたナルの父親だ。


「ナル、アクフ君。久しぶり。こんな早い時間から釣りなんて中々に通だね」


 そう言って、ナルの父親は背後からフレンドリーに話しかける。


「あっ!お父さん!」


 (えっ!ナルの父さん!?なんでこんなところにいるんだ?)


 アクフが予想外すぎる人物の登場に戸惑いながら驚いていると、その様子を察したナルの父親が説明した。


「……つまり、俺が通ったような通路をエジプトから使って、ここまで来たんですか。ここにもあんなものがあったんですね。」


「そうだね。それで早速なんだけど、お願いがあるんだ。私が使った道を使ってナルと一緒にエジプトに帰ってくれないか?その道を使えば一日くらいでエジプトに帰れると思う。私はここに少し用があってすぐには帰れないんだ。だから、同伴して帰ってほしんだけど、良いかな?」


 少し申し訳無さを感じるナルの父親からのお願いにアクフは、「はい、任せてください。」と一切の思考を介さずに即答する。


「良かったよ。それじゃ、これを渡すから。気をつけて帰ってね。あ、ナル。母さんには私は一ヶ月くらい帰ってこないって伝えておいて。頼んだよ。」


 そう言ってナルの父親は、アクフに集落からの遺跡を使った帰宅ルートを書いた地図を渡して、去っていった。


「行っちゃったね、お父さん。」


「そうだな。今までに見たことないくらいの速さで去っていったな。」


 二人はまるで台風のように過ぎ去っていったナルの父親に対して、唖然としてポカーンといった様子になってしまった。

 

 少しの間二人は、固まった状態になる。


 そして、数分の沈黙の後に、ナルが流石に気まずくなってしまった空気を何とかするために会話を切り出す。


「それで、どうする?これで殆どいつでも帰れる様になったけど、いつ帰る?」

 

「…………ああ、それは俺が言うべきことじゃないからナルがどうしたいか知りたい。」


「私としては…………今すぐにでも帰りたいかな。久しぶりにお母さんに会いたいし、色々とやらないといけないことがあるから。」


 ナルの言葉を聞いたアクフは決心したような顔をして、「よし、帰るか!」といって行動を開始した。


 そこからは早かった。集落の人間に泊めてもらったお礼をいった後、スドとラミについてくるかの確認をしてついて来ることになったので、すぐに全員分の荷物を片付けて鞄と人力車に詰めて片付けを終えて、一緒に帰還するメンバーを集め、


「よし、みんな揃ったな。それじゃ、ここからエジプトに直行するぞ!」


 といい、遺跡に向かって出発した。


 旅路はナルの父親が辿っていた道を通るだけなので、極めてスムーズに進んだ。


―― 

 

 ここはエジプトのアクフ達が通路に迷い込んだ場所。そこに探し人を求めて来たものが訪れていた。


 それは、ソルバとローガである。


「ソルバ隊長、色々探し回ってみましたけど、エジプト国内だったら探していないのはここだけになりましたね。」


「ああ、だが、ここには絶対なにかある。そんな気がする。」


 そう言いながら、ソルバはどう考えても怪しい遺跡を進んでいく。


 ソルバの言葉に遺跡全体を隈なく見渡していたローガが意見を述べつつついてくる。

 

「確かに、どう考えても怪しいところですし、アクフ捜索が関係なくても調査しないといけないような怪しい場所ですね。壁画とかに色々書かれていますし。それに、見た感じですけど結構奥まで続いています。ここまで広いと盗賊などが隠れていそうではあるので、戦闘準備は怠らないほうが良いと思います。」


 そう言いつつ、ローガは軍から配給された武器をもって戦闘態勢にいつでも入れるようにする。


「ああそれには同感だ。こんな狭いところだったら俺の大剣はあんまり使えない上に、ローガもどちらかといえば刀身が長い武器を使っている。たとえ神を模した魂塊を持っているからといって絶対的に有利だとは言えないからな。」


 と、ソルバがそういうと、奥の方から足音が響いてきた。


「ソルバ隊長。これって、もしかして。」


「ああ、そうかも知れない。しかも、足音のからして確かな実力を感じる。しかも向かってきているのは複数人だ。」


 そう言って、ソルバは戦闘態勢に移ってから足音の方に向かっていく。


 近づくたび、足音もこちらに向かってきていると気づいたソルバはローガにも戦闘態勢に入るように言って更に近づく。


 (しかし、この足音からしたら確実に3人以上はいる。俺達と同じくらいでなくとも、そこそこの実力で地理的優位をとられた場合はどうしたものか。そうなった場合は先手を取ったほうが勝つだろう。だったら。)


 ソルバは悪い未来を考え、ローガに「先手をとられたら俺達がだいぶん不利になる。先手をかけるぞ!」といって走り出した。


 近づく足音もさすがにソルバの存在に気づいたようで、ピタリと足音が止まる。


 それを好機と考えたソルバはどんどん迫って行き、最後には足音の正体のもとに至った。


「えっ、お前。」

 

 足音の正体にソルバは驚いた。


「体つきとかが若干変わっていたりするが、アクフじゃないか!」


 対して、迫るソルバに対して警戒していたアクフも、一度その姿を見たら驚きと嬉しさで、


「久しぶりですね!ソルバ団長補佐!あっでも、今は御仁に入っているから違うんでしたね。みんな、この人は知っている人だから武装を解いてもいいぞ。」


 と言った。その声を聞いたナルやラミ、スドは武装を解いた。


 アクフの反応があまりにも、強かったため一体何者なんだ?と思ったラミが口を出す。

 

「あの、この明らかに軍人のような見た目をした方はもしかしてアクフの知り合いなんですか?」


「ああ、俺が傭兵をしていた頃、俺に武術なんかを教えてくれていた人なんだ。そういえば、騎士団は無くなったって聞きましたが、今は何をしているんですか?」

 

「さっきの口ぶりから分かっていると思うが、今はファラオ様に力を認められて御仁って言う軍の最高地位に立たせてもらっている。で、あっ!それでファラオ様にお前の捜索を依頼されていたんだ!」


 その言葉に、アクフはまるでいたずらがバレた子どものように竦む。


「えっ?俺はファラオ様から探されるようなことはしていないと思いますよ?」


「いや、そういうことじゃなくて。アクフも神を模した魂塊を持っているだろう?今、エジプトでは戦力拡大のために神を模した魂塊をもっているにやつを探しているんだ。だから、アクフ、ファラオ様の前までついて来てくれないか?」


「え!」


 その驚きの声はソルバの話を聞いたその場にいたソルバ以外の全員から漏れたものだった。


――


 アクフはその後、ソルバに連れられてファラオの元に直行することになった。


 そして、様々な準備を経て謁見の間に至った。


 アクフは眼の前にいるファラオを見ている。


(久しぶりにファラオ様に会ったな。前に見た時は数年くらい前に見えるけど、だいぶん見た目が変わっているな。)

 

 当然、ファラオもアクフのことを見ていた。それはただ見ているだけではなく、ソフィーナト(太陽)シャンシン(の船)の個別能力によって魂塊の正しい能力を見られるようにしていた。


「お主が、アクフか。なるほど、確かに前にあったことがあるような見た目だ。早速で悪いが、お主が持っている神を模した魂塊を見せてくれ。」


 そう言われたアクフは、バファイ、ディウル、ハンクをファラオに見せる。


 アクフが見せた魂塊を見たファラオは目を大きく開いて驚く。


「もしかして、これら全てをお主が扱えるのか?」


「はい!左から、バファイで……」


 ファラオはアクフの説明を「もう能力は分かっている。説明しなくともよい。」といって止めた。


「そうですか、わかりました。ではファラオ様。今回はどういった要件で俺を呼び出したんですか?」


「その件に関してだが、本人をソフィーナト(太陽)シャンシン(の船)で見て確信した。お主は相当の実力者だ。今から、新たな御仁に任命する。」


 (え!?)


――

 

 ここは、世界一神々しい光さす教会。そこでは一人の教皇がほくそ笑んでいた。


 (やっと、やっとです。ここまで来るのに長い時と少なくない犠牲を払ってきましたが、ようやく確かな王暴の位置を特定できました。)


 教皇は個別能力によってさされた王暴の位置を見る。


 その位置はエジプトの王宮だった。


 教皇はその場所が本当に王暴の居場所なのかを調べる。


 調べていると、天から声が聞こえてきた。神託である。


『リアティ。王暴は目ざといことに私達が居場所を特定したと感知した時には、偽物の情報をそこに残してその場所から離れていました。なので今度こそは移動する前に速やかに仕留めてください。そうすればこの世には安寧が訪れます。』

 

 (やはり、ここでしたか。数年前にエジプトの別の場所にさされた為、部下たちが暴れて進行した時ありましたが、あの時のものが正しかったんですね!こうしてはおけません。ラミは連絡が取れず行方不明ですが、今すぐにエジプトに向かいましょう!)


『待ってください。確かに、私は早急に仕留めてくださいと言いました。しかし、あの卑劣な王暴なことです、また偽装を使って私達を惑わせてくるかもしれません。ここは『運命の予約(ラプラスバタフライ)』を使ってたとえ偽装されたとしても、見破れるような運命に変えておくのが定石です。』


 (確かにそうですね。では『運命の予約(ラプラスバタフライ)』を行ってから、エジプトに向かうことにします。ご忠告ありがとうございます。)

 

『はい。おそらく今回がこの一連の王暴抹殺計画の最終段階になるでしょう。くれぐれも、油断せず立ち向かってください。相手はどんな手でも使う者なのですから。それではこれで私から口を出すのは最後です。頑張ってくださいね。』


 そういって、天から聞こえてくる音は止んだ。

 

(わかりました、我らが神よ。これまで至らない私に王暴を滅することのできるような力を与えてくださり、誠にありがとうございました。)


 心の中で会話を終えた後、教皇は気持ちを切り替えるために、一回顔を上げてもう一度祈りの姿勢にはいって思考を開始する。


 (さて、これで最後だとお告げがあったのです。これまでのように少数人数で行くのは駄目でしょう。ならば、ここはラミだけ不在なのは残念ですが、捜索をしていて王暴を逃してしまっては本末転倒。ここは今いる者たちだけで強行しましょう。)


 教皇は思考を締めくくって、側に付いている神官に全勢力を動員しろ。との主の指示をして戦いの準備をする。


 (全ては世界の安寧の為。)

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