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王暴の魂塊譚〜家に隕石落ちたから旅に出る〜  作者: 大正水鷹
ウォーマリン編

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第69話果実に巣食う蛇

 アクフと話を終えて、寝ていた部屋からでてきたナルは持っている果物ナイフにベリープルを纏わせて聖樹の所へ向かっった。

 

 位置に関してはナルが寝かされていたところから十分聖樹が見えていたので問題ない。

 

 向かっている途中にナルのことを見るなり、コソコソと話す人間がいたが無視してた。


 そうして数十分後。


 聖樹に到着した。聖樹の見た目は上から見ると、超巨大な広葉樹と針葉樹の要素を足して2で割ったような特殊な葉っぱが主張し、辺りに雪が降っているせいか、枝などの所々に雪が積もっており、言葉よりも神聖な気配をまとっている。


 そして、根本を見ると、聖樹が言っていたように、人一人がギリギリ入れる程度の穴があったので入っていく。


 狭い穴は暫く続く。


(この穴ってどこまで続くのかな。これが一時間くらい続くってなったら息ができなくなっちゃいそうだけど。)


 ナルは深く潜ることによって起こる酸欠を危惧しながら、それでも試練だからと奥深くまで潜っていく。


 そして、数キロ移動した後、ナルは一つの大きな空間に出た。


(やっと出られたけど、ここにいるんだよね。今回の試練の達成条件である存在の蛇が。)


 ナルはそう思いながら蛇を探すように目を動かす。

 

 すると、意外に早く蛇の姿が目に入る。その蛇は事前情報通りに林檎りんごらしき巨大な果実をかじっていた。


 蛇は巨大で、全長三十メートルはあるではないのかと言ったくらいの巨体でその存在をこの世の全てに誇示しているようであった。しかし、その体は巨大林檎から得た生力で構成されており、ただの巨大生物でないことを示している。

 

 (あれが蛇か、思っていたよりも大きいね。でもあれを倒さないとアクフともう一緒に旅することができなくなる。それだけは絶対に嫌だ。だから、私は、全力であの蛇を倒して、自分がしたいことをする。)


 そう意気込んで、ナルはベリープルの個別能力である『果実生成』を使って『爆発西瓜(ばくはつすいか)』を生成する。


(これは試練で周りに人もいないから、これをやってもいいよね。)


 生成したとともに、その果実を樹護り族の力である『植物特性強化』を使って特性を強化する。


 そして、我関せずといった様子の蛇に、勢いよく飛ばして叩き込む。


 蛇と投げられた果実が接触した瞬間、普段では考えられないほどの勢いで爆発する。


 しかし、蛇にとってはこんなものは、蚊が刺してきたようなものと同程度と言わん限りに無抵抗、無関心、無干渉を貫く。

 

 だが、ナルもただ強化しただけの『爆発西瓜(ばくはつすいか)』でダメージを与えることはできないと思っており、次の手を使う。


 爆発させて、拡散させた残骸の中の種を『植物急成長』を使って身を立派に実らせるまで成長させる。


 そして、更に成長した『爆発西瓜(ばくはつすいか)』を『植物特性強化』で強化して大砲のように操作して射出する。


 百弾になった果実が蛇を襲う。


 それぞれが、その辺りの魂塊使いを殺せるくらいのエネルギーをもって突き進んでいく。


 四方八方に勢いの増した西瓜グレネードと形容できる様相をした果実が飛び散って、爆発した。


 その威力はこの空間を構成している天井、壁、床を破壊してしまうほど苛烈だった。


 しかし、この段階でも蛇に深手を負わすことは叶わない。


 だが、それでも傷を負わせたことによって、まるでサンドバックのような状態になっていた蛇が、ゆっくりナルの方を向いた。


 ナルは一体どんな攻撃が飛んでくるのかと、思いつつ大量に成長させて余ったつるで簡易的な盾を作って、構える。


 蛇はナルの方を凝視して、――――――思念を送った。


 その内容は、『我を求める試練で来たものか、もう何千年ぶりだろうか。久しぶりにあの木がよこしたってことだな。』と、戦いの緊張感のない淡々としたものであった。


「えっ、あなた、喋れるの?」


 とナルが反射的に、疑問に思ったことがポロッと漏れていまうと、『いや、これは思念のようなのものだ。私が人語を喋っているわけではなく、無理やり意図が伝わるようにしているだけだ。』と回答してくれた。


『さて、我が反応したということは、試練の第一段階である実力調査は突破したんだろうな。ならば挑戦者には自己紹介をしなくては行けないな。我が名はガイネーク、この木に生息するものの中で最も力を持ち、果実の力を吸うもの。貴様ら樹護り族に力を貸したこともある存在。さて、これから死ぬかもしれない存在に対する礼儀はこんなものでいいだろう。これから第二の試練に移行する、覚悟はいいか?』


「はい、よろしくお願いしま……す?」


 ナルはさっきまでただの獣としか思えなかった生物が、急に理知的な回答したことに対する驚きを引きずっていたために少し困惑した様子で答える。


『さて、第一の試練では我を扱うのに最低限の力があるか問うものだったが、ここからは我をちゃんと使える心かどうかを問うぞ。では行って参れ。』


 そう蛇が言うと、空間は歪みだした。


 ナルの眼の前にいたガイネークはいなくなり、そのかわりにベリープルがいた。


 (えっ、べリープル?今は私の果物ナイフに纏っているはず、なんで?)


 ナルがそう困惑していると、ベリープルが思念を飛ばしてきた。

 

『君はなんで僕を作ったの?』


 あまり触れてほしくない質問に、ナルはトラウマがフラッシュバックするのを恐れなが回答する。


「ベリープルなら分かっていると思うけど、私を奴隷にしていた人の命令してきて逆らえなかったからだよ。」


『だったら、なんで僕を使って人を殺したの?』

 

 瞬時に、自分の中に眠っていた記憶が溢れそうになる。でもナルはこんなところで止まったら、アクフに報いられないと思い、必死に記憶が溢れるのを止める。


 そして、しばらく深呼吸しながら落ち着いて考えてから答えを出す。


「私が未来を生きるのに必要だったから。」


『でも、僕を使ったら、アクフに助けてもらわなくても奴隷の証なんて壊して逃げ出すことも、容易だとは言わないけど可能だったと思うけど?』


 痛いところをつかれた。そう思ったナルは、必死にあの時の判断を正当化するような言葉を考えて口に出す。

 

「それは、あの頃の私はそもそも小さくて、稚拙で前が見えなくて、ちゃんとした思考もできていなくて、あんなところで一生を潰すんだと思っていたから。」


『そっか、確かに精神が弱っている上にまだ色々な所が未熟でまともな判断できなかったら、魂塊も持ってないような人間を一方的に殺しても仕方ないね。』


「そうは…………」


 ナルの言葉を遮るようにベリープルが言い切る。


『紛れもない真実じゃないの?』


 ナルの次の言葉を待たずにベリープルは問いを続ける。

 

『幼かったとはいえ人を殺したこともそうだけど、今のナルは多くのことに言い訳している。だから、こんな場所でこんな問答をしているじゃないの?』


 (確かに、私はこれまでも、今でも言い訳ばかりをしていた気がする。もしかしたら、この試練は私の言い訳している部分を、向き合うことによってなんとかしてはっきりさせることができれば突破できるかもしれない。)


 そう思ったナルは、決心して今まで抑え込んでいて一生向き合うことはないと思っていたトラウマから手を離して、そのトラウマを一身に受け入れる。


 流れ込んでくるものはどれも吐き気を催して、どうしようもないくらいの罪悪感が転じた涙が溢れ出す、今にでも逃げ出したいような気分にさせる。


 昔の実っておらず、まだまだ青かったナルには到底背負いきれないもの。


 それらは一瞬であるが、ナルにとても湿気っていて光など一切見えない洞窟を幻視させる。




 

 しかし、現在のナルはまだ青いながら、数々の旅や環境の変化によって成熟はしていないが、すこし良い色がついている。


 もう、自分の殻に閉じこもってグズグズしないくらいには良い色だった。


 そして、自らの手を広げて過去と今にしてしまった過ちを自らが本当に思っていたものと共に受け入れる。

 

 自分が殺めてしまった人間について、仕方なかったといって逃げたのは自らを正当化してこれからも生きていいと思う為に。

 

 ベリープルについて嫌悪とも言える感情をうちに秘めていたのは、自分が仕方なったと考えていても罪を突きつけて来る存在なのと、強制的な隷属の象徴となっていた為。


 奴隷時代に相当な糖度を誇る果実を食べていたのは、単なる生きる活力を手に入れるためではなく、純粋に殺人やトラウマによって重くのしかかるストレスから、少しでも、一瞬でも逃げる為。

 

 自分のために死んで行った人間を弔わないのは、仲間が死んでいったときを思い出して尚且つ命をかけて守ってもらったのにふさわしい生き方ができてないことで、まるで自分が存在しないみんなに非難され現実ではない何処かに連れ込まれてしまうという幻覚を見てしまう為。

 

 会いたいと乞い願った両親とアクフの手を借りて再開したのにもかかわらずに、程無くてアクフを探しに出ていったのは、アクフのことが気になっており尚且つ、逃げたとはいえそれでも人を殺めてしまった自分が両親と一緒に暮らしていいのかと思考の深層で考えてしまった為。


 アクフのことが気になっているのに、自分なんてと思うのは両親と距離をおいた理由と同じく人殺しをした私はアクフに全然ふさわしくないと思った為。そう思いつつも、それでも諦めきれずにいて、何としてでもアクフの旅についていこうとしているのは内なる恋心がどうしようもなくうずいている為。

 

 それらの本心(答え)はまるで水流のようにナルの中に流れ込んだ。

 

 流れ込んで来たものに向き合って、自分の中で消化して一つの答えを出す。


 (思い返してみれば、俄然私はこんなところで止まるわけにはいかなかった。)


 ナルはいつの間にか流れていた大量の涙を拭って、ベリープルに対して自信をもって告げる。

 

「もう言い訳は、しない。私はこれから自分に正直に生きていくことにするよ。それと、これまでそっけなく扱ってごめんね、ベリープル。」


『分かったよ、それがナルの答えなんだね。その言葉、表面的なものじゃなくて君の心そこから出できた言葉ってわかる。第二の試練は合格だね。』


 これまでナルの中でおもてにはでていなかったが渦巻いて、循環していた過去への恐怖という名の涙。


 拭った涙は地に落ちて土に還っていく。

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