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王暴の魂塊譚〜家に隕石落ちたから旅に出る〜  作者: 大正水鷹
ウォーマリン編

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第68話聖樹の元集落

 アクフ達は二時間歩き、ついに人間の近縁種がいる場所に到着した。


 到着した場所はさっきまでのジャングルのような風景から一変して、雪が積もっているところが散見される。


 周囲には生物の影はないが、生物の気は察知できるため生き物も住める環境だ。


 そんな今までいたところからは想像もつかない場所の開けた場所にアクフ達は立っていた。


 そして、アクフ達全員の視界の中には一つの大樹がある。


「おっきいな!あの木、一体どれくらい生きていたらあんな大きさになるんだろうな。ナル」


 大樹のあまりの大きさに驚きながら、ナルに向かってアクフが問いかけた。


 しかし、しばらくしても返答が来ないことになにか異変があったのかとアクフが振り返る。

 

「どうしたんだ!ナル!」

 

 振り返るとそこには足から崩れて、頭を抱えて何やら苦しそうにしているナルの姿があった。


「…………うぅぅ、大…………じょう……夫。なにか頭の中で引っかかることが…………!」


 耐え難い頭痛によってナルの自身の無事を伝える言葉は遮られた。


 その様子を見てラミが動揺しながら、


「どうしましょう。ナルさんが、とりあえず寝かして…………」


 などと言って慌ていると、ナルの意識がポッキリ切れたのか倒れてしまった。


――

 

 「ここはどこ?なんで私、こんなところにいるんだろう。」


 ナルはそう言いながらも、どこか懐かしさを感じるような感覚に戸惑っていると、彼女をこの空間に呼び込んだ本人が話しかけてくる。


『久しぶりですね、ナルフリック。いや、私達が一緒だったのは物心がついていない頃だけだったので、あなたにとっては私とは殆どははじめましてかもしれませんね。』


「そうなんですか、確かに私にはあなたに関する記憶がありませんね。だから質問させてもらいますが、あなたは何者なんですか?なにか大樹の様に見えますけど、もしかして魂塊の固有能力でそんな姿になっているんですか?」


『初めて合うので私をただの木扱いするのは不問にします。私はあなた達樹護り族に力を与える代わりに、私を護ってもらうことにしている聖樹ですよ。魂塊に関しては私自身がその存在に近いものがありますが、直接関係あるわけではありませんね。』


「えっ!?聖樹様なんですか?」


(確かに、お父さんから聞いていた通りの見た目をしているけど、なんで私なんかに今語りかけているの?もしかして、私が樹護り族の力を他人に見せて記憶をそのままにしていたからかな?)


『ここは精神世界、あなたの思っていることはなんとなくわかります。なので、単刀直入に要件だけを告げます。あなたは現在樹護り族最強と言えるほどの実力を保有しています。それと同時に仕方ない状況だったと言っても樹護り族の力を他人に見せ、あまつさえ見た者たちの命や記憶をそのままにしました。この2つのことから、あなたには罰を兼ねた試練を受けてもらいます。』


「私が樹護り族最強の実力の保持者、なにかの冗談じゃないんですか?私がそんな力を持っているなんて到底思えません。」


『確かに可能性を加味しているので、現時点では最強と言えないかもしれません、今の実力では上がいるかもしれません。しかし、いずれはあなたが名実とともに最強となり、私を護る存在になるでしょう。』


「そうなんですか、それで試練とはどのような内容なのですか?」


『内容としては、まず私の元に必ず一人で訪れ中に入ってここと似たような空間に来てください。そこには私になっている果実に巣食う厄介な蛇がいます。その蛇と戦って手懐けてあなたの持っている魂塊と合わせてください。それで試練は終了して、罰が下るのは後百年だけ見送ることにします。』


「えっ!?百年も待ってくれるんですか?」


『はい、これはあなたがそこまでの待遇を受けるべき存在であることの証左でもあります。試練、あなたの頑張りを心から祈っています。それと、百年程待つからと言って、それにかまけて無駄に時間を消費しないこと。できるだけ早く、あと一人残っている目撃者と記憶を消すか、結婚するかしてくださいね。あなたは後者を望んでいるかもしれませんが、今のあなたには足りないものがあります。この試練でそれが分かればいいですね。』


 と思念を飛ばして、聖樹はナルを現実に戻した。


――


 ナルが意識を飛ばしてから数時間経った頃、ナルが夢境から戻ってきた。


「うっぅぅ?ここはどこ?」


 ナルが寝かされていた場所は見覚えが一切ないが、それでいてどこか懐かしさを空気を内包していた。


 (なんだか、私がもと暮らしていた家に近い気がする……もしかして、ここってまだ夢の中なのかな?)


 そう思っていると、ドアからアクフが入って来てナルの姿を見て安堵したような顔になった。


「ナル、起きていたのか。ところで急に倒れたが体調が悪いのか、ごめんな、俺が早く次の場所に行きたいからって急いだから体調が悪くなったんだろうな。」

 

「いや、私は全く持って平気で、全く持って大丈夫だから!アクフの旅の足を引っ張るようなことはしないから!」


「別にナルが原因でこの旅が遅れても俺は一切責めるつもりはないが、とりあえずゆっくり休んだほうがいいな。」


「そういう訳にはいかないんだ。」


「うん?もしかしてなにか欲しいものがあるのか?何なら俺が取ってくるが。」


「いいや、これは私がしないといけないと行けないことなんだ。だから、私行くよ。」


 そう言ってナルは寝床から起きて、聖樹のもとに向かう為歩みを進めようとすると、アクフが止めてくる。


「どうしてそこまで無理して行こうとするんだ?多分俺じゃ止められないと思うから、理由だけでも聞かせてくれないか?」


 その言葉に、あっ、浅慮な行動をしてしまったとナルが思って、口を開く。


「そういえば、アクフは私の能力を見せているのに私が何者か言っていなかったね。」


 ナルは椅子を2つ持ってきてアクフにも座るように促して座る。


「この話は私の中でもとっておきの秘密だから、誰にも言わないでほしいんだけど。」


 前置きを話して続きの言葉を発する。

 

「私は聖樹様って言う私達に力を貸してくれるおっきな木を護るための種族、樹護り族って存在なんだ。

 それでね、樹護り族は同族か結婚したものにしか、能力を見せる又はその存在を記憶させてはいけない。っていう掟があるんだ。これは絶対的で破れば私は罰を受けることになるんだ。私の能力を記憶しているのは今はアクフだけだから、今回はその罰を軽くするために試練を受けるんだ。」


「…………そうなのか、あのワイバーンの時のあれはその樹護り族の力だったんだな。それなら、俺が止めることはできないな。でも、そう言うんだったら俺が忘ればいいんじゃないか?」


「そう簡単に簡単に忘れられるわけではないんだ。勿論、樹護り族の力を使ったら忘れさせることはできるんだけど、それは一旦私に関する記憶を完全に消し去るってものだから、私との記憶が多いアクフにはどんな影響が及ぶかわからない。だからそれはできないよ。」


 ナルのその言葉を聞いてアクフは一瞬仕方ないか。と、思いかけたが、少しばかり疑問が湧いた。


(それにしても同族はともかく、結婚したものにも見せてもいいのか、つまり俺が、ナルと結婚………………すれば、いいや、そんな理由で結婚するだなんてありえない。それに俺とナルだったら全然釣り合っていないしな。)


 その時、ナルも内心では、

 

(……アクフと、結婚すれば、アクフの記憶を消さなくても良くなる。でも、アクフの周りには私以外にもいい子がいっぱいいるから、そうできるかわからないし、いつまで生きるかわからないけど、百年後まで生きていたら試練を受けても、結局は。)


 と、若干ごちゃごちゃした思考をしていた。


「……分かった。ナルがそう言うんだったら、俺は止めない。すまないな、俺がさっぱり忘れられたら試練なんて受けなくてよかったのに。」


「別にそのことは全然気にしていないから、気にしないでいいよ!私に試練を受けろって言ってきた存在が言う限りだったら、私はアクフとのことがなくても受けていたと思うから。」


「分かった。もう試練に行く決心はついているんだな。だったら幸運を祈っておく。」


 アクフがそう返すと、ナルは「うん!」といって椅子から立ち上がり、聖樹の下まで進んだ。


――

 

 ナルとアクフが会話していた頃、ナルの父親は神語り族が残した遺跡を探索していた。


 (ここに来るのは久しぶりだが、ナルが聖樹様のところに来ているとしたら、ここから追いつける。やっとナルの居場所が分かったんだ。試練を終えたらアクフ君とともに早急にエジプトに戻ってもらおう。)


 そう思いながら、ナルの父親は神語り族の知り合いからもらった地図を頼りに、聖樹の近くにつながる通路を探す。


 因みにこの通路にはアクフ達と同じ穴を通って入ってきている。


 (それにしても、ナルはどうやって聖樹様のもとに移動したのか、魂塊があったとはいえ、一年と少し程度の短期間でアクフ君を捜索しながら聖樹様のところに行くのは不可能だ。つまり、ここを使ったという事以外考えられない。しかし、この通路を使ってアクフ君を探すのは、私のようにこの通路に多少精通していないと不可能だ。)


 そう考えていると、ナルの父親はナルと、その他の男性二人のものだと思われる足跡を見つけた。


(しかし、これを見る限り、ナルはここに来てどこかに行ったらしい。こんなことだったらナルにもここの使い方を教えておいたほうが良かったか。)


 ナルの父親はそんなことを思いながら遺跡を歩いていく。

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