第64話新たな村長
数日後、完全に村が病気に侵される前の状態に戻ったということで、復興を祝した祭りが開催された。
勿論、アクフ達も参加していた。
「ナル、あそこにある鮭っていう魚の干物美味しそうじゃないか?」
「それも美味しそうだけど、私はあそこで売っている鮭の卵に興味あるかな。凄くキラキラ輝いて宝石みたいじゃない?」
その言葉を聞いてアクフはいくらを売っている屋台を一見し、ナルと同じような感想を抱いたため、肯定する主の言葉を発する。
辺りは出店などが多く並んでおり、とても活気づいた感じである。
アクフなどは復興作業等々で働いた為、大体の屋台の料理を無償で食べられることになったため、アクフとナルはなんの気兼ねもなく食べ歩いていた。
そんなことをしていると、祭りは最終局面に差し掛かり、皆は一つの会場に集められた。
何が始まるのかわからないと、少しソワソワしている会場に一人の男性とショランとコアノが用意されていた壇上に登った。
「皆!村長の俺から知らせがある!聞いてくれ。」
その言葉に会場のソワソワとした空気が加速する。
「今日をもって、俺は村長を引退して、その責務を娘であるショランとコアノに継がせる。」
ショランとコアノはその言葉を知らされていなかったのか、一瞬困惑の表情を浮かべたが、これからこの村を管理していかないといけないのだから、こんなところで村民を不安がらせる愚行は侵さぬと元の顔に戻す。
元村長の発表に異を唱えるものもがいたが、それを「案ずることはない、我が娘たちは私でもどうしようもできなかったこのウォーマリンの崩壊の危機を解決し、代々受け継がれる魂塊も使えるようになったのだ。」という言葉で潰した。
「新たな村長とウォーマリンに幸あらんことを。」
そして、新たな村長が誕生した。
――
後日、アクフは鍛錬で少し忘れていたが、スドに武器を作ってもらっているということを思い出したので、スドの工房に来ていた。
そこには普段は顔を見せないショランとコアノがいた。
「おはよう。ショラン、コアノ。あっ、でも今は村長って呼んだほうが良いのか?」
「おはよう、アクフ。別に、そこまで畏まったことはしなくてもいいよ。」
「そうですよ。それに私達村長になったって言ってもまだ駆け出しで、そこまで偉いわけでもありませんし、今は昔世話をしてくれた人間に為政を学んでいる最中ですし、一人前なのは力と心意気くらいです。ほかは大体半人前以下で……。」
「そうなのか、二人がそう言うならものままで呼ぼうかな。それでスドさんに何を頼みに来ているんだ?こういったところで見かけるのは珍しいが。」
「それは、私達の武器の点検のため。そういえば、アクフが頑張ってくれたお礼を、用意するから明日広場に来てね。」
「分かった。二人の要件はもう済んだのか?」
「うん、もう点検は終わって研げば問題ないって、それにしてもスドさんは本当にいい鍛冶師だよ。ずっと村にいてほしいくらい。」
「スドさんは凄いからな。そう思うのも仕方ないとは思うが、あの人にはエジプトに立派な工房があるし、ここには留まれないと思う。」
「そうですか…………エジプトですか。話には聞いたことのあります。大国ですよね。たしかに、それを上回るくらいの利点はなかなかないですね。話しによれば、強国らしいですしスドさんみたいな鍛冶師がいるにはピッタリな場所ですね。」
「まあ、そうだな…………」
「あっ、コアノ。この後用事あるんだった。早く行かないとまずいよ。」
そう言って二人はそそくさとスドの工房から出ていった。
コアノとショランが帰ったことを察したのか、スドが工房の奥から戻ってきた。
「入る度に俺以外のお客がいるなんて、スドさん。好調そうですね!」
「……ああ、ここでは遠すぎて面倒な奴らの手回しが通用しないからな。それにしても、何用だ?つい先日武器は俺が見たばっかりだ、もしかして鍛錬で壊したのか?あと、前に言っていた武器は完成したぞ。」
「いえ!今日は前にお願いした武器の件で来ました。完成しているということは、もうもらえる感じですか?」
「……問題ない。この村に伝わるトンファーと言う武器に俺流の剣と銃のようにはいかなかった。が、生力を詰めた弾丸は一発に限って射出可能ものを変形機能付きで合わせたものだ。銃弾は俺が考えうる限りでは相当な威力だ、周りへの被害も押して図るべきだろう。それとさっきも言ったが一度に一発しか装填できない、考えて使ってくれ。変形は本来の銃で言うところの、トリガーの下部にある取っ手に仕込んでおいた。これで弾丸発射から剣の形態に切替えられる。それと、生力の効率がいいようにここの近く採掘が可能ということだったので俺が、掘った金が入っている。エネアーゼ以上の傑作だ。」
スドの声は普段では考えられないくらいに高揚しており、いかにアクフに向けて作った特別なトンファーが凄いものかわかるものだった。
「凄いかっこいいですね!それに改良しすぎてもはや、別の武器ってくらい凄いじゃないですか!名前はなんて言うんですか!?」
「名前は特につけていないが、アクフがつけていいぞ、これは、今は元通りにしておいているがアクフの武器を少し分解させてもらって作ったものだからな。」
「だったら、そうですね。銃、剣、槌が1つになった武器ですから、ここは〘銃斬打旋棍〙とかにしておきましょう!早速これとエネアーゼで具錬式魂塊武器を作りたいですね。」
「……好きに作ってくれ、それにしても具錬式魂塊武器か。俺も武器職人の端くれとしてあらゆる武器には精通しておきたいな。こんど、アクフの特訓に混ざって作ってみよう。」
「スドさんって確か、金属を溶かすのに便利だから魂塊を使っているって言っていましたけど、その魂塊ですか?」
「……そうだ。名前はアスプラ、モデル、エジプトコブラ。個別能力は未だに把握しきれていないが炎を鉄を溶かすよりも高い温度に変えられる。前に生力を取り戻す時、戦闘に使ったがそれからは全く持って戦闘では使っていないな。」
「えっ!自分の魂塊のことを俺なんかに全部言って良いんですか?」
「……問題ない。できる限り面倒はかけないつもりだが具錬式魂塊武器を作る時に、駄目だった場合教えてもらいたいと思っているからその時のためだ。」
「そうですか、分かりました。その時は、力不足ではあると思いますが教えさせてもらいます。」
「……有り難い。それにしてもアクフはいつここを発つんだ?いつまでもここにだけに留まるつもりもないんだろう?」
「そうですね。確かにここで欲しかった強力な斬撃と打撃を一つの武器で行えるトンファーは手に入りましたし、そろそろ、他の国に言っても良いかも知れませんね。そう聞いてくるってことはスドさんも何処かに旅立つんですか?」
「……俺はどちらかといえば、エジプトに戻るだけだな。アクフもそうなんだろう?」
「そうですね、ファラオ様に作ってもらった家も見てみたいですし、今の持っている武器のコレクションも増えてちょっと荷物が重いですし、一旦戻っても良いかも知れませんね。」
「……了解した。俺も同行する。」
「えっ!良いんですか!?」
「……ああ、元々俺はアクフを探す目的で来ていたが、ついでにナルフリックの保護者の立場みたいなことをしていたからな。親御さんのもとに無事に届ける義務がある。ナルフリックは間違いなくアクフについてくるだろう。ならば俺が個人的な理由を無視してついていく理由だ。」
「分かりました。俺が出発する時になった二人に伝えます。」
「……二人?もう一人いなかったか?まだまだ発展途上だが俺達中で一番強かった。聖職者のような人間が」
噂をすればなんとなら、と言わんばかりにちょうどいいタイミングでラミがスドの工房に入ってきた。
「聖職者のような、じゃなくてこれでも立派な聖職者です。私は目覚めさせてくれた恩があるので勿論アクフがエジプトに帰るまでは同行します。」
そう言って、年相応にぷんすこと可愛らしく怒ってスドに間違いを訂正させる。
「……そうか、その年でそんな立場か。窮屈そうだな。」
「別に憐れまれる程悲劇的な存在ではありませんよ、私は。それに私にはこの道しかありませんし。あの時助けてもらった時に芽生えた感情のまま、一般を害するものを討って他を慈しみ愛すだけです。」
「……本人がそう思っているなら良いが、それにしても引っかかるな。前々から気になっていたんだが、ラミはアクフを王暴だとか言って襲ったらしいが、なぜアクフを王暴なんて思ったんだ?それと、なぜそこまでして王暴を討とうとしている?」
「それは…………教皇様がアクフを王暴と判断なさったからです。これ以上は機密なので言えません。討つ理由としては王暴が神に反逆するものだと神から聞いたので。」
「……信じられん。アクフが仮にその王暴だったとしても、神に反逆するようなやつじゃない。むしろ、これまでの旅を考えてみれば止める側だ。その教皇ってのは…………」
スドが続きの言葉を紡ごうとしたが、それ以上の言葉は教皇を侮辱するものだと判断したラミによって止められた。
「やめてください。あの方は孤児院を各地に建設したり、身寄りのない子供を探して保護したり、難民の人を匿ったりしていて心の底から慈悲深い人です。もう一度いいます。それ以上は、やめてください。」
ラミの目はまるで泥が混ざってたように濁る。
その目を見たスドはこれ以上触れたら良くないことになると察して、即座に場の空気を帰るために工房の奥に戻った。
戻る途中で、
「……すまない。それじゃあ、俺は奥に戻る。店の髪飾りに興味があるなら、そこら中に試作品を置いてある見ておいてくれ。」
と言い残して。
(ラミ、もしかしてあの時のナルと同じ……いや、これ以上は本人が望んでいない詮索だ。控えたほうが良いか。)
アクフも、用事がなくなったので帰った。




