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王暴の魂塊譚〜家に隕石落ちたから旅に出る〜  作者: 大正水鷹
ウォーマリン編

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第61話平穏

 謎の空間から戻った二人をアクフが迎えた。


 流石に水中なので会話できない為、二人を水面に引き上げて、スドとラミとアクフが協力して手早く修復した避難用の家に寝かせて置いた病人たちのこところに案内した。


「ショラン、コアノ。俺にはどんな事があったのかは分からないし、顔を見れば疲れていることは分かる。申し訳ないが、材料は俺とラミで運んでおいたから、薬を作って村の皆を直してくれ。村の皆にはいち早い治療がいる状態だ。」


 そんなアクフの申し訳無さそうに状況を説明する姿を見て、二人は快活に笑う。


「大丈夫、アクフ。私達はこの村を、背負っていかないといけないから、こんなのそれに比べたらへっちゃら。」


「そうですよ!アクフさんは知らないかも知れませんが、私達、意外と強くなっいるんですよ!」


 そう言って二人は薬を作る作業に取り掛かった。


 そこからはこれまでの七難八苦の道のりとは違って、極めて順調に事が進んだ。


 薬は伝承通りに作ったものを飲ませたら、ほとんどの村人がすぐに良くなった。


 そして、人手が増えた村は瞬く間に復興して以前とそう変わらない様相に変わった。



 朝、アクフは連日の村の復興作業などに従事して、疲れていたので深い眠りについていた。


 しかし、その状況をよく思っていない者もいた。

 

 ナルである。


 彼女はアクフに会う為、魂塊使い二人とは普通の人間なら絶対にしない速度で数々の国や大陸を制覇したのだ。


 常人には無理な無茶をしてまで彼女がしたかったことを果たせていなかったのである。


 それはアクフとの会話であった。


 (最近結構、アクフは忙しそうにしているけど、全然私を頼ろうとしないで復興作業をしている。私だってもうあの頃みたいに弱くはないのに。それに最近復興作業以外だとめっきり見かけなくなったし、何やっているんだろう?せっかくここまで来たんだから、アクフと話したい。)


 そんなことを思いながら、ナルは樹護り族の能力を使って植物と感覚共有して、アクフを探し空中海の端っこの方に仮拠点を構えているのを発見して今に至る。


 アクフは深い眠りについているので、ちょっとしたことでは一切目覚めないだろう。


 それを知ってか知らないか。ナルは少し悪戯をしかけようとしていた。


 悪戯と言ってもそこまで複雑なものでもなく、ただ単にわっと大きな声を出して起こすというものであるが。


 ナルらしからぬ、幼稚な作戦だが、これは今までできなかったことの発露だろう。


 ということで早速、忍び足でアクフの耳元まで忍び寄っている最中、背後から気配を感じた。


 ナルが敵襲の可能性も考慮に入れて、交戦準備をしつつ振り向くと、そこにはスドがいた。


「……何にやってるんだ?ナル。」


 スドは若干の疑いの目をナルに向けていた。


 それに対してナルは、自分の思っていることを警戒していないと直感で察したので、毅然とした態度で言葉を返す。

 

「そういうスドさんも何しに来たんですか?」


「……俺は壊れていた〘天翔石剣(カノンスド)〙を直したから届けに来たんだが。」


 そう言いながら、銃万象(ガンバンゼン)に壊されたとは思えないくらいに元の姿に戻った〘天翔石剣(カノンスド)〙を見せる。

 

「そうなんですね。私はアクフとちょっと話したいことがあるのでここに来たのですが。今は寝ているみたいなんですよね。」


「……そうか、なら俺は一旦出直すか。疲れているアクフに迷惑かけられないからな。」


 そう言って、スドは出ようとしたが、一切動かないナルを見て少し不思議そうに「ナルフリックはでないのか?アクフはしばらく目覚めそうにないぞ。」と言った。


「いえ、私はアクフが起きるのを待っているで大丈夫です。」


 その言葉を聞いたスドは「……そうか。なら、起きたら〘天翔石剣(カノンスド)〙を直しておいたから取りに来てくれと伝えてくれ。」とだけ言い残してアクフの部屋から去っていった。


 これで邪魔するものもいなくなったが、ナルはスドに毒気を抜かれて、自分のいった言葉通りに大人しくアクフが起きるまで待つことにした。


――


 ナルがアクフの目覚めを待ち始めてから1時間後。アクフは目覚めた。


「うっ、朝か。」


 そう言って流石に村全体の修復はなれない水中での作業の連続となって疲労が溜まっていた。そのため、少し起きにくそうにしながらも、強い意志でベットから出ると、アクフの目覚めを待っていたナルが目に写った。


「おはよう。ナルは結構早起きなんだな。」


「おはよう、アクフ。けど今はそんなに早い時間じゃないよ。大丈夫?私とコトナラさんとエジプトとに戻って来ていた時より、遅起きになっているけど。」

 

「それはまずいな。」


(このままだったら毎日の鍛錬をする時間がどんどん減っていく。)


「だったら、今日くらいは休んだら?村の皆が復帰してくれてるから、最初から頑張ってるアクフ一人が休む余裕はあると思うけど。」


(だが、俺が休んだら…………でも、ここには俺よりいろんなことが出来るラミもいるし。師匠もあまり疲れを溜めるのはよくないって言っていたからな。ここは休ませてもらおうかな。)


「ありがとう。それじゃ、俺は修復工事をしている人達に今日休むって言ってくる。」


 と言って、アクフが素早く寝床から立ち上がり、部屋から出ようとするとナルが引き止めた。


「何だ?なにか重要なことでも思い出したのか?」


「いや、スドさんが〘天翔石剣(カノンスド)〙を直したから取りに来いって言ってたのを思い出して。」


 ナルの言葉を聞いたアクフのテンションは上昇の一途をたどり、胸が勝手に踊りだして傍から見てもワクワクして嬉しそうな様子を見せる。


 その顔を見たナルは、少しムスッとした。しかし、アクフは相棒の復活によって発生した喜びでいっぱいになって気づかない。


 アクフはナルの言葉を聞いた後、急いで部屋から飛び出してスドのもとに向かった。


 「行っちゃった。」


 残った部屋には一人の少女の声だけが響く。


――


 ここは村にもともとあった工房の1つを借りた家。


 そこにはこの村に伝わる伝統的な武器を学びつつ、アクフの放置していた武器達をメンテナンスしながら、新しい武器を作っている男。スドがいた。

 

(それにしても、この変な武器。たしかヤクバラが言うには銃というらしいが、なんともこれが出回ってしまったら多くの武器職人が職を失いそうな一品だな。)


 スドはそう思いつつ、試作した銃弾を装填して銃を的に向かって放つ。


 放たれた銃弾は熟練の騎士の剣や弓の速さをとうに超えて的をいとも簡単に破壊する。

 

「……全く持ってとんでもない代物だ。これを持てば一般人でも下の方ではあるが魂塊使いと同じ火力を持てる。こんなものが世界に普及してしまったら、戦争はもっと激化して多くの者を巻き込むようになりそうだ。」


 スドはヤクバラに銃を話すときに、「このことは出来る限り誰にも言わないでくれ、それと銃を赤の他人に譲渡すってこともやめてくれよ。」と言われていたのを思い出す。

 

(これは、確かに他言無用と言われるわけだ。まさに次元が違う。)


 そんなこんな考えていると、ワクワクした顔で〘天翔石剣(カノンスド)〙を取りに来たアクフがやって来た。


「スドさん!ナルからここに〘天翔石剣(カノンスド)〙があるって聞いたので取りに来ました。」


「……来たか、〘天翔石剣(カノンスド)〙ならそこの机においてあるぞ。それにしても綺麗なくらい真っ二つに折れていたが、あれはここに来る前、遭遇した強敵のせいか?」


「…………そうですね。不甲斐ないです。今では倒せたんですが、まだ具錬式魂塊術をそこまで身につけてない時、遭遇したのでほとんど何も出来ず敗退してしまってその時に折られました。」


「……そうか、ならそんなやつには絶対に、折られないようにしないとな。エネアーゼって〘天翔石剣(カノンスド)〙の補強に使用してもいいか?」


「エネアーゼですか?一旦聞いてみます。」


 そう言いながら、アクフは一旦距離をおいて、携帯していた小物入れに入れていたエネアーゼを取り出す。


「エネアーゼ、今から俺の剣の補強に使うが問題ないか?」

 

「凄く直球ですね。それが今から私を武器の補強の足しにしようとしている人間の態度ですか。まあ、そんな生物らしい機微はともかく、私は生物を超越した損得で判断する存在なので、了承しますが。」


「本当に大丈夫か?お前は次元が高い存在なんだろう?なのにただの剣になっても良いのか?」


「問題ありません。〘天翔石剣(カノンスド)〙には良質な隕鉄が余すことなく使用されています。それにあの技師の技量なら私をかつてのような最適化された形に変形させてくれるでしょう。」

 

「分かった。これ同意は取ったと見なすぞ。」


 そういって、アクフはエネアーゼを手で持ってスドのもとに運んだ。


「問題ないそうです。より良い剣にしてください、よろしくお願いします。」


「……そんな事言われなくても分かっている。少し、いや3日くらい時間をくれ、それくらいあれば完璧に仕上げられる。」


「分かりました!また来ますね!」


 そう言ってアクフはスドの工房を出た。


 そこから、復興作業をしている人たちに休養を取らせてもらう主の返事をしにいった。


 すると、ナルから聞いたとおりに快く了承してもらったので、暇を持て余したアクフは鍛錬をすることにした。


 剣を振る。この行為は何年前の鍛錬から比べてみたら、圧倒的に鋭さが増して速くなっている。まさに歴戦の戦士の剣になっていた。


 しかし、この領域に達していても、尚アクフは満足しない。それは自分より強い存在がいるから。その存在が大切なものを脅かした時何も出来ないからだ。

 

 そして、剣を振り続けること一時間。アクフの脳内に1つの考えが浮かんだ。


(〘天翔石剣(カノンスド)〙が使えるようになるんだったら、新たな具錬式魂塊武器を作るために新しい魂塊を準備しないとな。最近はあんまり魂塊を使っていなかったから生力もあるし、前から考えていたクジラの魂塊を作ろう。)


 そう考えたアクフはすぐ下にある空中海に潜った。


 海中を見てみると、以前に見た空中海と殆ど変わらずの状態に戻っていた。


 しかし、変わっていることがある。空中海が一時期下に落ちた影響で様々な生物の魂の欠片が大量に転がっていた。


 (あの災害がこんなことを引き起こしたんだんだな。と言っても、あんなに大規模にここで死んでいった魂の為にも祈りを捧げておこう。)


 祈りを捧げると感謝するかのごとく、魂の欠片がアクフの元に集まって魂塊の基盤となった。


 だが、実際のところは祈りには生力が混ぜ込まれており、その影響で集まったようだ。

 

 (よくわからないが、集まってくれたことに感謝しよう。それと、あのクジラの魂の欠片も集めないとな。)


 アクフはそう思って空中海散策を開始した。

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