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王暴の魂塊譚〜家に隕石落ちたから旅に出る〜  作者: 大正水鷹
ウォーマリン編

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第60話村長を継ぐ者の務め

 魔物を倒したアクフ達の班とスドの班は生力を回収した後、二人は少しの時間をかけて合流して、生力をいれる盃の前に来ていた。

 

 眼の前には半径一メートルの大きい盃があり、下を見れば特殊な力を失って自然現象のままに四方八方散っている海水が見える。


 そんな盃の前でショランとコアノの二人は緊張していた。


 これまでは父が厄介事をなんとかしていたのに、ここに来る前、探してみたが一向に父は見当たらず、自分たちでなんとかしないといけいないという状況に震えている。

 

(ここまで私達は全然貢献できていないのに、今私の眼の前には、この件をなんとか出来る盃があって、手元にはそれに注ぐだけの生力がある。)


(私達は戦力でも、解決方法を見つける面でも貢献できていない。このままこの件をなんと出来ても今後どうなるわからないですね。)


 二人の秘めた感情が露出する。


 周囲には潮風が吹き始めて二人の肌を劈く様にあたった。

 

 そのまま、魂塊から取り出した生力を盃に注ごうとする。


 ゆっくりと、まるでスライムが落ちていくように生力が液体化したものは盃に満たされていく。

 

 すると、その途中に突如二人の魂が体から吸い出されて、盃の中に吸い込まれた。


――

 

 盃の中にあったのはあの世とも言えるものだった。


 全面的に何かが存在すると言ったことはなく、まるで硝子の破片がまってるように所々にしか、ものは存在しない。


 そんな空間に二人は吸い込まれ、ウォーマリンの成り立ちを見ることとなった。


 始まりは一人の人には過ぎた力を持っていた人間から始まる。


 その人間は道楽で海を持ち上げ、川しかない地形の上に持ってきて盃によって固定した。


 それからはその人間を慕っている人間を集めてその子孫を海の上に住ませて村を形成する。


 完成した後は様々な運命に、巻きこまれることになった。


 その頃には魔物が跋扈しており、それらが生力を狙って来たので、効率の問題から地上に設置していた盃を海中に遺跡を作って保管したり、様々なことがあった。


 だが、その中で少しずつ、経験を蓄積して言い伝えを継承し、魂塊を使ってその言い伝えに歴代の村長の強さと精神性を乗せることによって、確実に強くなっていって少しのことではへこたれなくなっていた。

 

 その様々な歩みの中で本来失われてはいけないもが、失われてしまった。

 

 きっかけは、遺跡が神語り族という異端者に遺跡を魔改造されたことだった。


 そう、盃の存在、それに定期的に生力を注がないと今回のような大災害を引き起こすことになる、という伝承が。

 

 失ってしまったものは大きかった。


 それによって、村長ではない子孫まで波及していた強さと精神性がなくなってしまったために現状があることを知った。

 

『と、言うわけだ。子孫くん。』


 眼の前には父に似た面影を持った男が現れていた。


「その見た目、多分なんですけど、私の先祖、なんですか?」


『まあ、そういうことになるな。』


「でも、なんで今現れたんですか?」


『決まっているだろう。私がここに封印されていて伝えることが出来なかったが、今はできる。ということで、君たちにこの伝承と力、精神性を引き継がせるためだ。』

 

「でも、これを見たら私達にも精神性と力は継承されるんじゃないんですか?」


 ラミが不思議そうに尋ねる。


『世の中、失うのはいとも簡単だ。しかし、それを取り戻すには相応の時間がかかるんだ。君たちには辛いかも知れないが、君たちが持っている魂塊を本来の力まで使えるように試練をこの空間で受けてもらう。精神性はおいおいで良いだろう。』


「試練と言うのは一体どんなものなんですか?」


『それは行って確認すれば良い。では、早速試練を行う。』


 そう言って祖先が手を広げると、断片的な空間が二人に近づいて飲み込んだ。




 辺りは先程よりも光がなく真っ暗。しかし、そんな状況で1つだけ光源となる存在があった。


 それは自分の魂塊だった。


 魂塊は金などの様々な装飾品で飾られてるが、尊大さなどは一切感じさせられない厳かな空気に纏われている。


 モチーフはキメラ(混合獣)。混ざっている種類は三種類。トラ、ゴリラ、孔雀。


 今までは頑張っても一向に使えなかった。そして、魂塊を見るとコンプレックが刺激されてしまうのでちゃんと見てこなかったが、現在、向き合ってみたらその姿に見とれた。


 早速、魂塊に触れて纏わせようと手を伸ばしたが、その手は自分たちが避けていたように弾かれる。

 

 二人はその後も、何度も手を変えて挑戦したが、一向に動かない。


 そんなこんなしている間に辺りが明るくなっていた。


 二人は気配から誰かいると感づいて振り向く。


 そこには大量の魔物と、逃げ惑う人々がいた。

 

「あ、あのままじゃ全員逃げられない。なんとかしないと!」


 先にコアノが動いた。


 アレをなんとかしたらこの試練をクリア出来るかもと言った打算は関係なく動いたのだ。


 姿勢を低くして、ネコ科の動物の様に体をバネの様に収縮させて、解き放って前に進んだ。

 

 しかし、魔物たちに鉤爪を突き立てても、攻撃が通らないどころかすり抜けてしまった。


 そのまま、人々は何も出来ずに逃げ惑うことしか出来ない。


 次に、ショランが動いた。ショランは地面を砕いて魔物を足止めしようとしたが、それも、コアノの一撃と同様になんの意味も持たなかった。


 その後も二人は交互になにか出来ないかと、思考して行動したが、一切の効果はなかった。


 そして、残る手段は魂塊を使って解決するだけになったその時。


『協力せよ。我を目覚めさせよ。』


 と聞こえる謎の音が二人の脳内に流れた。


「コアノ、もう手段は魂塊しかない。さっきの言葉通りにするよ。」


「分かった。お姉ちゃん。」


 二人は歩みを進めて、魂塊の下に向かっていく。


 過去には敗北があった。しかし、それでもと足掻いても出来ないことがあった。


 だから、目を背けて見ないふりをしてやり過ごした。


 しかし、それでは駄目だと今の二人は思っている。


 過去に囚われるだけでは駄目。そんなものに囚われてたら何も守れないし、何者にもなれない。そう分かっている二人には負の感情は必要ない。


 いるはどんな困難でも臆することなく、負けることなく立ち向かっていくだけの覚悟と勇気。

 

 (ここにいる人を救って、村の皆も助ける!)

 

「「力になってください。ビュルシュウ!」」

 

 そして、着いたところで、しっかり二人で魂塊を見つめて同時に手をかざして、自分たちの装備に纏わせようとした。


『我に力を求めることは、この力とともに死ぬこと。覚悟は良いか?』


 とビュルシュウが問いかけてきたが、「そんなものはとっくについてる!」と二人は了承した。

 

 二人の覚悟と勇気に共鳴したのか、魂塊は生力に反応して増大し2人分の魂塊のとして機能する。


 魂塊の力が漲った二人を魔物が見つめて標的にする。


「忌々しき力が再び、目覚めてしまったか。ならば、ここで滅ぼすまで。」

 

 そう言って、魔物は血走って目をしながら何が何でも殺してやると言った眼光で突撃してくる。


 だが、ビュルシュウの個別能力の1つである『反射』によって跳ね返された。


 ビュルシュウは義刀の魂塊、兜太郎と同じく何世代も受け継いできた魂塊だ。


 兜太郎は神を模した魂塊ではない為、リソース不足からただひたすらに1つの能力である『剛力頑丈』をさらなる高みへ登らせるのに使ったが、ビュルシュウはその限りではない。


 神を模した魂塊であるが故に、長い時間は要するものの、複数の能力を1つの個体に詰め込むことも可能であった。


 長い時間によって生み出された個別能力は3つ。それと本来の能力が1つである。


 模した神は武神であったがため、1回の仕様で1つの攻撃を敵程度反射する『反射』。


 虎の様に勇ましく敵に向かっていき、基本能力に上乗せして基礎能力が向上する『虎化』。


 思考を加速させ、腕力も強化する『賢者の一端』。

 

 最後に、模した神の逸話からの能力、いかなる場所でも自分の良いように、勝手に動く波を生成してそれに乗って動ける『勇ましきは波乗りし戦士ウォールカムナ』。


 これらの能力が備わった二人は縦横無尽に戦う。

 

 魔物は無限とも思える量の腕を体中から生やして攻撃するが、そんなものは効かないと、『反射』を使って防ぐ。


 それでも避けられない攻撃は『虎化』と『賢者の一端』を使って避けながらも攻撃を与えて、腕を落とす。


 しかし、無限にも思える数で攻撃されているため、スドの様にすべて避けることは出来ず、若干傷を負う。


 (痛い。集中力が削がれそうになる………………。でも今はそんなことを言ってい場合じゃない!)


 魔物は絶対に攻撃を受けまいと、どんどん後退しながら攻撃を加えているが、二人はそれに負けないような速さで追っていく。


 このままではいずれ追いつかれると確信した魔物は体からどんどん四肢を出して巨大化した。


「お姉ちゃん!あいつ大きくなっているよ!」


「好都合。あの形態になったらそこまでは早く動けないはず。アクフがやっていたように、具錬式魂塊術を使う。」


「でも、そんなこと出来るの?」


「分からないけど、今なら、出来る気がする!」


「分かった!」


 二人は手を繋いでお互いの纏っているビュルシュウを片方は武器の作成に使って、もう片方をそれに纏わせて馴染ませる事によって1つの大槍を生み出した。

 

 本来であれば二人は具錬式魂塊武器を作れるくらいの熟練度は持ち合わせていない。しかし、本来一人で行うために高等技術だったのを二人に分割して作ることによって、一切の鍛錬を行ってない二人でも可能にしたのだ。

 

 二人の身長なんて目じゃないくらいの大槍が生成されて、二人で支えて、最後の一撃を放つ。


「「『勇ましきは波乗りし戦士ウォールカムナ』!!!」」


 空間が歪曲して、波のようにうねり始める。


 二人は一切の抵抗をしないでその波に身を任せる。


 そして、残っている生力を出来る限る注ぐ。


 最後に波を動かして魔物に一撃を決める。


 大槍はうねって一切の規則性も見せずに飛んでいく。

 

 魔物は巨大な腕を使って止めようとしたが、腕の上を通ってすり抜け、裏側に回って刺した。


 刺さった槍はそのまま勢いを強めて、魔物を貫通した。


 貫通した瞬間。魔物が爆発して大槍が落ちる。


 落ちた槍は元のトンファーと鉤爪に戻った。


 そして、ビュルシュウがでてきて二人のいた空間は元の姿に戻る。


 その瞬間、辺りの景色が元に戻って先祖が再び前に現れた。


『おめでとう。君たちは試練に乗り越え、無事私の魂塊を継ぐことが出来た。これからは胸を張って村を率いると良い。』


「あの、それよりも今、外ってどうなっているんですか?今、空中海が決壊して大変なことになっているんですけど…………。」


「そうです!私達決壊した空中海を何とかするために、ここに来たんです!」


『案ずるな。それくらいなら、ここに注ぎ込まれている生力でしばらくはなんとかなる。数年後に生力を注ぐ必要はあるが、君たちはさっさとここを離れて我が子孫を統治せよ。』


 そういった次の瞬間、二人の魂は元の体に戻る。


 「はっ!」と気づいたときには、辺りには水が満ちていて元の空中海の水中に戻っていた。

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