第51話別れ
アクフは試験官のところをあとにした後、ミティス、ヨヨリがよくいるという酒場まで来ていた。
辺りを見渡してミティスとヨヨリがどこにいるかと確認していると、後ろから声がかかる。
「あっ、アクフ!何しにここに来たの?」
「ちょっと、探したいものがあってな、ここから離れようと思ったから別れの挨拶を下回っているだけだ。」
「そうなんだ…………確かに銃万象の件にはもうかたをつけちゃたからここにとどまる理由もないわよね。」
「さみしくなるね。確かに私もそろそろ犠牲者に銃万象を根絶したことを伝えに行こうかな。」
「ヨヨリも行くのか?」
「うん。元々私は旅人だからね基本は定住しないよ。」
「…………ヨヨリも行くのね。確かに私もやりたいことができたし、ずっとここにいるわけもいかないわね。」
「ミティスはどっちの方角に行くんだ?」
「取り敢えず、星を見たいと思っているから北かな。方角はなんとなくで、特に理由はないんだけど。」
「そうなんだね、ミティスちゃんは北の方に行くんだ、私と同じだね。」
「みんなここから離れるんだな。そうか、そうなるとなんだか寂しいものがあるな。」
「そう言うんだったら5年後くらいに四人で集まろうよ。場所は…………ここで。」
「それはいいかもね。」
「じゃ、5年後くらいに!ヤクバラにも伝えとくよ。」
「そういえば、ヤクバラがどこにいるか知らないか?」
「ヤクバラはついこの前に銃万象にケジメをつけさせたからって言って、ギャングの本部の方に一回帰っていったから最近はあんまり見かけないね。」
「わかった。一回本腰を入れて『探知』で探してみるか。」
「頑張ってね。」
というミティスの声を聞いてアクフは酒場を後にしようとしたがそういえば何頼んでいなかったな、と思い直しミティスとヨヨリが座っているテーブルの余っている椅子に腰掛けた。
「うん?本腰入れてヤクバラを探しに行くんじゃないの?」
少々困惑したような顔でヨヨリはアクフを見る。
「酒場に入ったのに何も頼まず帰るっていうのもなんだかな、と思って。」
「そうなんだ。それじゃこれ。」
ヨヨリはアクフに自分の近くにおいてあったメニューをスライドさせるような形で渡した。
アクフは渡されたメニューをさらっと見て考える。
(酒はなー、あんまりいい思い出無いからなー。でも酒場で飲まないっていうのもなんだかな。できればかるそうなやつですませたい。…………それじゃ、エジプトでも聞いたことあるこのヘネケト《ビール》とつまみで。)
そう思い、アクフは店員を呼んで手短に注文を済ませる。
それから数分後、店があまり混んでいなかったのかアクフが思ったより早く来た。
「おまたせしました。ヘネケトとつまみです。」
店員が盆にジョッキにタプタプとこぼれそうなほど注がれたヘネケトと豆類のつまみを持ってきた。
アクフは「ありがとうございます」と言いつつ受け取って、ヘネケトを容器が空になるまで一気に飲む。
ヘネケトのアルコール度数は10%である。
「えっ!?何やってんのアクフ、そんな飲み方しちゃ!」
「えっ、これくらいならなんとも無いが。」
竹戸での一件以来、アクフはある程度の度数のアルコールに強くなっていたのだ。
「でも、ヨヨリ。アクフの顔を見てみて、全然赤くなってない。深層心理を見てもお酒に関する変化はなかった。」
「え?酔ってないの?イメージでは全然酒に強くなさそうだったアクフがまさか、酒豪だったとわね。」
「俺なんかまだまだで、ここの隣の国で出会った奴はこれの何倍も酔いやすいものをのんでもケロッとしていたからな。」
(アクフの周りの人は本当に異常な人が多いね…………。一回見てみたいものだよ。)
「それじゃ俺は早く行かないといけないから、ここにお代は置いておくから会計はよろしく頼む。」
アクフは二人の了承の言葉を得てからすぐさま酒場を出た。
――
1日後、午前5時。
ギャングスガンではなく、ガンストンの荒野。空は快晴とまでは行かないまでも晴れており、旅の門出を歓迎しているようだ。
アクフは途中に出会ったミティスとヨヨリに別れの挨拶をして次の目的地の方向に向いたその時、
遠くから物音がする。
物音はこちらにだんだんと近づいてくる。しかし、ある程度の距離になるとアクフは物音を出している存在は誰かを悟った。
「おいおい!俺を忘れないでくれよ!」
「ヤクバラ!何でこんなところにいるだ!?」
ヤクバラが何やら大きい荷物を運んでアクフの下に現れた。
「いやいや、そういえば俺から銃発掘と銃万象にケジメをつけるのを手伝ってくれたお礼をしようと思ってな。」
「えぇ!いいですよ、別にそんな。」
アクフの声を制止する形でヤクバラが持ってきた荷物にかかっていた布を取る。
「まあまあ、これは俺からの気持ちみたいなものだ。ありがたーく受け取ってくれや。」
アクフはヤクバラの持ってきたものを見て驚いた。
それはアクフでも見たことがないほど大きな手押し車だった。
「アクフって、かなりの武器好きで鞄がパンパンを超えるくらい武器入れているだろ?だからこいつにあんま使わねぇやつを入れたらまだマシになるかと思ってな。」
「…………ありがとう。ありがたく受け取るよ。」
「ああ、ああ、それじゃ、色々な話はヨヨリから聞いているからよ。長い話はまた今度ということで、またな!」
「ああ、またな!」
手押し車に荷物をあらかた乗せたアクフはバファイを纏わせて走り出した。
――
ここは、世界一神々しい光さす教会…………では無く竹戸とガンストンに挟まれている地域、そこで教皇はラミと一緒に少年少女の保護と聞き込みを行っていた。
そして、教皇の目には一人の少女が目にとまった。
少女はとても可愛らしい見た目をしており、金髪の髪を持ち時の流れの為少々体が成長した少女、ナルである。
殆ど真反対の理由で同じ者を追う者達の接触だ。
教皇はできるだけ警戒されないようなのか優しい声色で話しかける。
「あの、ここの近辺で赤髪で目つきが鋭く血の気の立った怖い男性を見かけたりしませんでしたか?」
「赤髪で目つきが鋭く血の気の立った怖い男性……そんな派手な人は見かけてないですね。すみません、他をあたって下さい。」
「そうですか、すみません何やらお忙しそうな所に声をかけてしまって。何かお詫びでも。」
「だったら私から一つ似たような質問を、黒髪金眼でとっても頼りになりそうなかっこいい男性を見ていたりしませんでしたか?」
「すみませんが、私も貴方の探している人を存じ上げません。私が出来るのは貴方が探している人を見つけることを神に祈ることしかできませんね。」
「ありがとうございます、なら私も貴方が探している人が見つかるように祈っておきます。」
教皇はナルの言葉を聞いた後、感謝とお礼の返事をしてナルの元を去る。
(おかしいですね。私の魂塊天使ディスティニエルではここの辺りに王暴がいるとされていたんですが………………私の『運命の予約』が不完全だったり的外れだったんでしょうか?いや、そんな筈は、元々魂塊天使は偉大なる神からいただいたもの私ごときが多少の手違いをしても大丈夫なはずです…………もしかして、王暴がこちらを警戒して何らかの対策をこうじているのでしょうか。それなら一旦ディスティニエルを使わずにやってみましょうか。)
教皇は考え事をし、ナルは、
(あの人綺麗だったしどこかで見たような気がするんだよね、どこだったけ?)
とアクフを狙っている存在にも関わらず、そのことを一切気づけずかなり呑気にそう思っていた。
そこら辺を歩きながら教皇が考えていると、奥から何やら大量の果物を持ったラミが歩いてきた。
教皇はあまりの量なので少々驚いたような態度でラミに声をかける。
「ラミ、そんなたくさんの果実はどうしたのですか?」
「教皇様、少々聞き込みをしていたら、可愛ねぇとか偉いねぇと近所にいる女中の方々頭を撫でられた末に沢山いただきました。」
「それは良かったですね。でも、その量は一人で食べるのは無理な量ですね。ここでの捜索は私一人でやるので孤児院の子達に分けていってください。」
「分かりました。」
ラミは魂塊天使の『罪を裁く羽根』で飛んでいった。
(さて、世界の安寧の為に気を取り直してやっていきましょう。)
教皇はアクフについてよく知っているナルについてもっと深掘りをしなかった為、アクフに関する情報を得損ねた。
二人の歩む道は真反対になるだろう。
――
所変わってアクフの方、ヤクバラとの別れを済ませガンストンからは既に出ており、密林の中を手押し車を押しながら走っていた。
因みにこの時の速度は普通の馬車の二倍は軽くある。
(それにしてもここの辺りは少し熱い気がするな。それになにか臭うような…………!っていうことは火事か?)
アクフは空を見上げて、煙がないかと確認すると案の定、黒い煙がたっていた。
そして、耳を澄ませてみると何やら人の声がする。
アクフはすぐさま向かった。
森をかき分け全速力で煙のもとにかける、途中でライオンらしい動物を見かけた気がしたが蹴飛ばして進んだ。




