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9 狂戦士、殺気を放つ。

 足取り軽く私は関所へと駆けた。

 中に入ると先ほどと同じカウンターに向かう。受付の女性も一緒だった。

 もちろん彼女も私のことを覚えていた。


「リムマイアさん、どうなさいました?」

「さっきの魔石買い取り一覧を見せてほしいのだが」


 私が知りたかったのは各魔獣の単体価格だ。

 ふむ、大型のモノドラギスとウルガルダはどちらも三十万から四十万ほどになっているな。

 では、大型を一頭と、あと小型(といっても結構大きいが)の群れを一つ狩ればいいか。それで五十万に届くだろう。


「ありがとう。じゃ、行ってくる」

「行くって……、どちらへ?」

「狩りだ。今から魔獣を狩りにいく」

「ついさっき町に到着したばかりなのにもうですか!」


 受付の女性が叫ぶと、また一斉に周囲の視線が私に集まった。

 この娘はまったく……、名前を確認しておくか。

 カウンターに置かれたネームプレートに目をやると、彼女の名はコレットというらしい。


「……コレット、いちいちリアクションで私に注目を集めるな」

「ごめんなさい、癖なんです……」

「……困った奴だな」

「ごめんなさい……」


 何となく、この娘とは長い付き合いになりそうな気がする。


「まあ心配するな、コレット。デッドゾーンを経験した甲斐あって、この辺りの魔獣の力は大体把握できた。今の魔力でも問題ない。新しい魔法も手に入れたしな」


 と私は笑みを浮かべながら手をかざす。そこからバチバチと小さな稲妻が走った。


「な、なんて邪悪な笑顔……。やはり、リムマイアさん、普通の十歳児じゃありませんね……」


 いかん、これ以上喋っていると正体がバレそうだ。

 私は早々に関所を出ると、そのまま再びサフィドナの森に入った。

 空を見上げると、日が傾き始めている。

 そろそろ魔獣も活発に動き出す頃だろう。獲物を見つけるのもそれほど苦労しないはず。

 耳をすまし、同時に魔力感知の範囲を広げた。


 …………、いた、大型だ。

 しかし、これは……、とりあえず向かうか。


 標的のいる場所を目指して森の中を駆ける。

 程なく、魔獣の荒々しい雄叫びが聞こえてきた。それと、複数の人間の声。

 そう、私が見つけた魔獣は今まさに交戦中だった。

 気配を消して茂みから様子を窺う。


 大型魔獣は、狼頭にドラゴンの体をしたウルガルダだ。その体長は約十メートル。

 対する人間は六人の男女で、その内の何人かはすでに負傷している。

 鍛えてる感じはするが、こいつらは間違いなく初心者だな。私達と同じ、今日転送されてきた奴らだ。どうやらレオみたいな熟練の同行者はいないらしい。

 転送者の事情は国によって全く異なる。目の前の光景を見れば、ドルソニア王国の私達は恵まれているというのが分かった。


 さて、この状況、どうするかな。

 通常、他のチームが戦闘中の魔獣に手を出すのはルール違反になる。戦士同士の争いを避けるために、世界戦線協会がはっきりとそう明示していた。

 いや、そうは言ってもだ……。

 放っておいたらこいつら、全滅するぞ?

 だから私もつい様子を見にきてしまったわけだが……。

 どうする……、前世の私なら完全に知ったことじゃない。勝手に死んでおけ、と吐き捨ててこの場を去っていただろう。

 く、最低な自分を思い出したら余計に引けなくなってきた。

 ……よし、ふらっと散歩にでもきた感じで出ていこう。奴らの方から助けを求めてくるはずだ。それで交戦権は私に移る。


 私はふらっと茂みから出た。

 さあ! 助けを求めてこい!


 チームのリーダーらしき男性が、私を見つけて慌てて走り寄ってくる。


「どうしてこんな所に子供が! キミ! 俺達が戦っている間に早く逃げるんだ!」


 ……あれ?

 予想外の展開に呆然と立っていると、彼はさらに言葉を続ける。


「きっとすぐ近くに町がある! そこまで振り返らずに走るんだ!」


 ……ああ、私はその町から来たので知ってる。

 すると、リーダーだけじゃなくチームの残り五人も集まってきて、私の周りに壁を作った。


「この子だけは絶対に助けないと!」

「ああ! 俺達の命に代えても!」

「ふっ、いい死に場所を見つけたわ」

「そうだな、悪い最期じゃない」

「さ! あなた! 今の内に早く行って!」


 ……いかん、私の愛らしい容姿がこいつらの何かに火をつけてしまったらしい。歴戦の勇士みたいな口振りの奴もいるが、お前ら転送されてきたばかりの新人だろ……。

 …………、……もういい。


「違う! 私の方がお前らを助けに来たんだ!」


 私が叫ぶと全員きょとんとした顔に。


「ただの子供が一人でこんな地獄の森を歩いてるわけないだろ! 見ろ! 鎧を着てるし剣も持ってる!」


 どうして私がここまで説明しないといけないんだ……。


 なお、私達がこうしている間、魔獣が親切に待ってくれるはずない。

 ウルガルダはグッと体を沈ませて、今まさに飛びかかってこようとしていた。

 私はそちらを睨みつけながら殺気を放った。


「すぐに相手してやるから、少し待っていろ……!」


 パチ、パチ……、パチ……、パチパチ……。


 狼頭の魔獣は、予定とは反対の背後へと飛び退いた。

 まったく、敵の方がよっぽど物分かりがいい。いや、こいつらにも伝わったか。

 周囲を見回すと、六人全員、腰が砕けたように座りこんでいる。

 まあ、殺気に反応して空気中の魔力がパチパチ弾けてたしな。

 にしても私、体も魔力も弱くなったが、殺気だけは以前のまま健在じゃないか。これならいちいちボコボコにしなくても実力を分からせることができた。

 うーん、今まで意識して殺気を放ったこと……、なかったな、そういえば。とりあえず今はおいておこう。


 私は座りこんだままのリーダーの男性に視線をやった。


「で、助けてほしいのかほしくないのか、どっちなんだ?」

「……た、助けて、ください……、お願いします……」


 うむ、最初からそう言えばいい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 子供に威圧されて…この6人組…トラウマ出来ないといいけど(笑)
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