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2 狂戦士、訓練を開始する。

 自らの進むべき道について私は結論を出した。

 十歳になっていた私は、長らく世話になった不良集団のリーダーに別れを告げる。


「そうか、これからって時にリムマイアに抜けられるのは痛いんだがな。お前は雑なところはあるが、面倒見もいいし。けど、そう決めたなら応援する。リムマイアならきっと生き残れるさ」

「今までありがとうな。立派な犯罪組織になれよ」


 仲間達にも礼と別れを言い、その足で国の訓練所に入った。

 私が選んだのは戦士になる道だった。


 以前生きた時代から、間に空白の歴史があるので定かではない。しかし、少なくとも五百年以上は経過している。かつては国同士で激しく争っていたが、その空白の期間中に事態は一変していた。

 現在、人類は魔獣という共通の敵と戦争状態にあった。


 各国から派遣され、その前線で力を振るうのが戦士だ。

 国を代表するほどの腕前になれば、貴族以上の地位が与えられるので私の目的とも合致する。

 そう、あくまでも目的は金。人類のために、とか、前世での罪ほろぼしに、などでは断じてない。ただ己の欲を満たしたいがゆえに選んだ道だ。うむ。


 なお、訓練所というのは国の各地にあり、そこで推薦を得た者が戦場への転送者に選ばれた。

 転送魔法の構築には時間が掛かり、このドルソニア王国の場合、転送できるのは一か月に一度きり、たった六人。

 その狭き枠に入る必要があるわけだが、要はとにかく強くなればいい。


 訓練の前に、私はクラスを授かることになった。

 わざわざこんなものを授かるのには理由がある。レベルに応じて能力が補強され、また、必ず固有魔法が一つ発現するからだ。

 通常、クラスは自由に選べるのだが……。

 目の前では私を担当した役人が困惑の表情を浮かべていた。


「……あなたに付与できるクラスは、一つだけ、のようです」

「何となくそんな気はしていた……。【ベルセルク】だろ?」

「……いえ、違います」

「む? じゃあ何だ?」

「【ベルセレス】です」


 …………、ほほう。

 前世でも私はなぜか【ベルセルク】という狂戦士のクラスしか選択できなかった。まあ、【ベルセレス】でも似たようなものだろう。

 そして、発現した固有魔法を確認する。

 私の固有魔法は〈戦闘狂〉だった。

 その効果は、一定時間膨大な魔力と身体能力を得る代わりに思考が戦闘本能に支配される、というもの。


 ……やはり、こちらは前世と同じか。

 伝わってくる禍々しい感じも全く一緒だ。今の惰弱な体でこの魔法を制御できるか? いや、確実に持っていかれる。

 当分の間、〈戦闘狂〉は封印した方がよさそうだな。


「間違いない、それはやばい魔法だ」


 そう言ったのは、この訓練所で師範をしているレオだった。

 年齢は四十何歳とかだったか。まあ、師範のおっさんだ。

 ここの入所試験で他の参加者達をボコボコにしたら、私はこのレオが付きっきりで指導する運びになった。早く鍛えられそうだし悪くない。


 きちんとした戦闘訓練をみっちり受けることができ、私の体は戦いに向けたものに変わっていった。


 ――――。



 訓練を始めてから二か月が経過した。

 今日もいつも通り、レオと木剣で打ち合いだ。


「おい、師匠。日に日に纏う魔力が増えていってないか?」

「うるさい、お前のせいで俺のプライドはズタズタなんだぞ」

「プライドが何だって? おい、油断するなよ」


 レオが振り下ろした剣を自分のそれでいなしながら、回し蹴りをみぞおちに叩きこんだ。

 おっさん、堪らず地面に膝をつく。


「……これだ。だから、体を覆う魔力を増やしてるんだよ……」


 いくら効率よく魔力を増やせるといっても、私はまだ十歳でレベルも4だ。魔力量はレオの方が断然多いし、レベルも遥かに上(26らしい)。だてにおっさんになってない。

 だが、戦いの技術や経験(踏んだ場数)は私が上だろう。この惰弱な体もそれなりにはなってきた。レオには悪いが、まあ一対一なら負ける気はしない。


 一通り愚痴をこぼした後にレオは立ち直った。わざとらしく咳払いをして胸を張る。

 うむ、師匠としての威厳が少し戻ったな。


「リムマイア、決まったぞ。お前は次の転送で戦場に行く」

「おお、急だな。だが、望むところだ」

「欠員が出てな。ちょうど俺が同行する番だったから、職権でお前をねじこんだ」

「でかした師匠」

「お前、本当に俺を師匠だと思ってるか……? まあいい、装備を選んでこい」


 言われるままに、私は訓練所の倉庫へ向かった。


 ここでは戦闘訓練の他、魔獣についても勉強する。魔獣は普通の獣より相当大きい。その牙や爪がこんな鉄素材の武具で防げるか?

 ……ないよりはマシか。

 しかし、武器は大事だな。確か大型魔獣は体長十メートルを超える。それを仕留められるものとなると……。


 私の身長より遥かに長い、刃渡り百五十センチほどの大剣を手に取った。

 魔力で補えば何とか扱えるだろう。

 剣を鞘から抜いてその場で軽く素振りをした。

 前世で使っていたものより大分小振りだが……。


「まあ、今の体ならこれくらいだな」

「どこがだ。どう見てもでかすぎだろ」


 倉庫の入口でレオが呆れ果てていた。


「そんなもの振り回している十歳児、見たことないぞ」


 今、おっさんの目の前にいるだろうが。

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