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最終話 狂戦士、全てを駆逐する。

 睨みつけてくる黒竜を、私も負けじと睨み返す。

 この急いでいる時にこんな奴の相手なんてしてられるか! あっちに行ってろ!

 背中の剣を抜いて魔力の刃を作ると、すぐにそこに雷を纏わせる。

 今の半〈戦闘狂〉の状態なら、スラッシュの上位範囲魔法が使えるはずだ。吹き飛べ!

 〈サンダーウェーブ〉!


 発生した雷の大波が体長二十五メートルの飛竜を直撃。

 吹き飛ばすとまではいかないが、その巨体を後方へ押し流した。

 さすがに今回は効いているらしく、黒竜は顔を歪ませて小さく呻く。

 すかさず私は精一杯の覇気と共に一喝。


「戦いたいならついて来い! お前もまとめて相手してやる!」


 言い放つと〈ステップ〉の足場を蹴って離脱した。

 ちらりと振り返ると、ディアボルーゼは追ってくることなくその場で留まっていた。やがてけだるそうな雰囲気を漂わせて雲の中へ。


 …………、本当について来られたらやばかった! あんなもん連れていったら私がハロルド達を殺すも同然だ……。

 ともかく最小限の時間で追い払えたのはよかった。

 このまま一気にあいつらの所へ!

 もう一度足場を経由して加速した。


 ハロルド達の状況は魔力感知で常に把握していた。

 四方八方から襲いくる魔獣に対し、九人で円陣を組んで互いを補い合っている。まったく、誰も死なずによく耐えたものだ。やっぱりこいつらはいいチームだな。

 後は任せろ。


 高速で飛来した私は、流星のように九人の前の地面に衝突した。

 めりこんだ足を引き抜くと、まず周囲の魔獣達に向けて殺気を放つ。


「散れっ!」


 パチ……! パチ……! ……パチパチッ!


 大型も小型も、魔獣達は一斉に飛び退いた。

 ハロルド達は信じられないものでも見るような目で私を見つめている。

 ナタリーが一歩二歩と近寄ってきた。


「リ、リムマイア様……」

「ナタリー、助けられるかどうかは私が判断する。あんな別れの言葉を送ってくる暇があるなら居場所を知らせろ」

「……すみません、まさか、間に合うとは……」


 うむ、私も助けられるかは全く分からなかった。が、ここは黙っていよう。とりあえず敵を片付けるか。

 二か月前とは違い、今の私なら普段の状態でも、もうこの森のデッドゾーンは脅威じゃない。むしろボーナスステージだ。普通に一頭ずつ狩っていってもいいのだが……。

 今日はせっかく魔力が底上げされているし、まとめて始末するかな。


 前世の私には得意にしていた大技があった。

 そういえば、これで軍隊一つを丸々壊滅させたのが、最凶の狂戦士と呼ばれるようになったきっかけだった気がする。さすがに今回は相手が魔獣だからそうは呼ばれんだろう。

 よし、やるぞ。

 おっと、言っておいてやらないとこいつらも危ないな。


「おい、今から魔獣をまとめて駆逐するから、お前らはもっと固まってしゃがめ」

「あの、いったい何をするつもりですか……?」


 ハロルドが戸惑った表情で聞き返してきていた。


「いいからいいから。早くしないとお前らも吹き飛ぶぞ」

「皆! 急いで集まるんだ!」


 ようやく察してくれたらしく、全員が一箇所に固まって屈みこむ。

 私は彼らの真上に〈ステップ〉の足場を作って飛び乗った。そして、魔力の大剣を構える。

 今から放つこれは、現代では上位魔法の一つに数えられている。

 かつての私は段階的な技の積み重ねで自力でそこに到達した。なので、少々腕力が必要になる。


 私は足場の上で横回転を始めた。

 〈サンダーウェーブ〉を発動させると、そのまま魔力の放出を続ける。

 雷の大波は私達の周囲を駆け巡り、やがて巨大な渦を形成していた。

 吹き飛べ! 〈サンダーストーム〉!


 ギュゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!


 雷の竜巻は周辺に展開する全ての魔獣を呑みこんだ。

 レギドランなどの小型魔獣は空中に吸い上げられ、モノドラギスなどの大型魔獣は必死に地面にしがみつく。いずれもほとばしる稲妻に撃たれて、次々に塵へと変わった。


 ああ……、すごく、前世を思い出す……。

 この大技を使っている時、まるで神にでもなったみたいで、私はとても気分がよかったんだ……。

 ……ふは、ふはははは。


「ふはははははははははは!」


 回転しながら高笑いしていると、下でナタリーとハロルドの喋る声が聞こえてきた。


「リムマイア様、まさかここまでとは……」

「そうだな、歴史上最も凶悪と名高い、あの狂戦士を見ているようだ……」


 いかん、ついに前世がバレた。

 ……私は生まれ変わったんだ。こんなことで高揚するのは人道に反する、気がする。抑えろ抑えろ。


 雷の竜巻が止むと、周辺には魔獣も樹木も何一つ残っていなかった。

 綺麗に更地になった大地に、上空から煌く魔石が降り注ぐ。

 空を眺めていた私は、再度の来訪者を感知した。

 その姿を見たハロルド達九人が凍りつく。


「心配ない、戦う気はないようだ」


 あの黒竜、ディアボルーゼがまっすぐ私を見つめていた。

 強力な魔力の波動に、気になって様子を窺いにきたといったところか。しかし、こいつはおかしな魔獣だな。

 私のことが好きなのか?

 と思っていると黒竜はクイッと顔を動かして上を指し示した。そして、そのまま飛び去っていく。

 早く台地の上まで来い、ということか。


「……待っていろ、すぐに行ってやる」


 だが、それにはやはり仲間がほしいところだ。

 力半分の〈戦闘狂〉でも、発動が終わった今は結構な疲労を感じる。

 あんな黒竜との戦闘を考えれば、私が本当に信頼できる奴が……。


 ハロルド達に視線をやると、皆で散らばった魔石を拾い集めてくれていた。絶体絶命の危機を乗り越えた安堵感から、互いに笑い合って和やかな雰囲気だ。


 ……いつの日か、私にもあんな仲間ができるのだろうか。

お読みいただき、有難うございました。


このベルセレス・リライフは、メイデスという小説に出てくるリムマイアのエピソードを膨らませて書いた物語になります。

これを書いている間に、メイデスに書籍化のお話をいただきました。

担当さんと相談した結果、このベルセレス・リライフの大部分(おそらくほぼ全て)をそちらに組みこむことになりました。

こちらから読んでいくと、メイデスは十五歳になったリムマイアが真の仲間に出会う第二章のような形になっていると思います。

五年経っているので生活は結構変わっています。あと、すでに英雄に。

ストーリー的には、リムマイアは過去からの転生者(傑物)達を代表するサブヒロインのようになっていく気がします。


MAIDes/メイデス ~メイド、地獄の戦場に転送される。固有のゴミ収集魔法で最弱クラスのまま人類最強に。~


この下(広告下)にリンクをご用意しましたので、よろしければ一度いらしてください。

ミッシェルからもらった剣と鎧のその後や、あの黒竜との関係はどうなったのか、など、あちらで分かるようになっています。


最後に、このベルセレス・リライフへの評価を付けていただけると有難いです。

よろしくお願いします。


長々とあとがきを失礼しました。

改めまして、こんな所までお読みいただき、本当に有難うございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しく読んでます! あ!あの時の人がこうなるのねと、どこかで見た名前と思い出してたし、下にもリンクあるので読んでないの時間見て見てみますね〜
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